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すきにしてください※

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びっくりするくらい美味しい食事を終え、エレベーター前で待っている間に

「ねえ、空良くんと理央君だったよね。今度大学に遊びにおいでよ。私たちが案内してあげるわ。大学に来てみたら実感もわくでしょ?」

と綾城さんの妹さんの七海ちゃんが声をかけてくれた。

僕と空良くんは大喜びで

「はい。よろしくお願いします! 先輩!」

というと、七海ちゃんとその彼氏さんの翔太さんは、なぜか一気に顔を赤らめて、

「先輩って……先輩って響きいいよな」
「うん。こんな可愛い子達に先輩なんて言われると萌えるわぁ~!」
「佳都とはまた違った可愛さがあるな、この子達」
「そうね、大学に来たときはガッツリ守ってあげなくちゃ佳都くんより危ないわ」

ひそひそと2人で話していたけれど、僕と空良くんには何を言っているのかまでは聞き取れなかった。

「七海、翔太くん。先に下に降りよう」

綾城さんのお父さんに声をかけられて2人は先にエレベーターに乗り込んで、僕たちに手を振りながら降りていった。

「ふふっ。いい先輩だったね」

「うん。大学って楽しそう」

空良くんと笑い合っていると、

「空良くん、理央くん」

と後ろから声が聞こえた。

「あ、佳都さん。今日は本当におめでとうございます」

「ふふっ。ありがとう。ご飯、苦手なものはなかった?」

「はい。どれもすっごく美味しくてびっくりしました。ねっ、空良くん」

「うん。お箸だったから食べやすくって……佳都さん、ありがとうございます」

空良くんの言葉に佳都さんがにっこりと微笑んだ。
確かにお箸で食べやすかったけど、普通は違うのかな?
後で凌也さんに聞いてみよう。

「それなら良かった。今日、ここにお泊まりしてくれるんだよね?」

「はい。僕、どこかにお泊まりなんか修学旅行以来だから、嬉しくって……」

「僕もお泊まり自体が初めてなので嬉しいです」

僕の言葉に佳都さんは一瞬驚いていたけれど、すぐに笑顔になって

「部屋に着替えも用意しておいたから良かったら使って。僕と直己さんとで選んだんだ」

と教えてくれた。

「ねぇねぇ、空良くん、理央くん」

凌也さんと直己さん、そして寛人さんが話しているのを気にしながら、小声で呼びかけられて、僕と空領くんは佳都さんにグッと近づいた。

「どうしたんですか?」

「今日のお泊まり、きっと初めてだらけのことだと思うけど、悠木先生と観月さんに任せておいたら大丈夫だからね」

「えっ? 任せて? あの、どう言う意味ですか?」

「ふふっ。どんな夜を過ごしたか今度ゆっくり聞かせてね」

佳都さんが女神さまのような笑顔でにっこりと微笑むと同時に、僕たちの後ろから凌也さん達の笑い声が聞こえてきた。

僕と空良くんが結局わけがわからないまま、

「理央、そろそろ行こうか」

「空良も部屋でゆっくりしよう」

と声をかけられ、別々のエレベーターへと乗せられエレベーターの中でさっと抱きかかえられた。

「佳都くんたちと何を話してたんだ? 楽しそうだったな」

「えっと、お部屋に着替え用意してるから使ってって言われました。あと……」

「あと?」

「凌也さんに任せておけば大丈夫って。どういう意味ですか?」

「――っ、佳都くんがそんなことを?」

「僕、ホテルとか泊まるの初めてだから、何か難しい作法? みたいなのがあるんでしょうか?」

こんなすごいホテルにお泊まりだし、なんだか心配になってきちゃった。

「そんな心配しないでいいよ。理央は楽しんでくれたらいい」

「でも……」

「んっ? 理央はどうしたい?」

「僕……凌也さんとずっとくっついてたいです。そしたら安心できそう……」

「くっ――! じゃあ、ここにいる間はずっとくっついていよう。約束だ」

「わぁ、嬉しいですっ!」

嬉しくて凌也さんの首に抱きついた瞬間、エレベーターの扉が開いた。

その正面に大きな扉がある。

「理央、ここが今日泊まる部屋だよ」

そう言って凌也さんがカードキーをかざすと、ピッと音がして扉を開けてくれた。
片手で抱っこされても全然落ちそうにならないんだから凄すぎる。

「――っ、すごい、なにこれ……っ」

中に入ると、僕が10人、いや20人は寝転がれそうな広い玄関がある。
ここだけで十分すごいんだけど……と思っている間にも靴を脱がされ、凌也さんはスタスタと中へ入っていく。

扉を開けると、そこからはすっかり日が落ちて夜になった綺麗な街が見えていた。

「わぁーっ!!」

宝石のようにキラキラと輝く夜景に僕は目が離せない。

「見てっ! 凌也さん、すっごく綺麗っ!! ――っんんっ!」

あまりにも綺麗な景色に驚きながら凌也さんの方に顔を向けると、突然凌也さんの唇が重なってきた。
優しく唇を喰まれ、スッと凌也さんの舌が入り込んでくる。
あっという間に僕の舌に絡みついてきてものすごく気持ちがいい。

クチュクチュと舌が絡み合う音が聞こえて、もう僕は窓の外の綺麗な景色のことなんかすっかり頭の中から消え失せて、凌也さんとの甘いキスでいっぱいになっていた。

甘いキスに力が抜けてしまっていた僕は、唇がゆっくり離されるとそのまま凌也さんに寄りかかった。

「理央……悪い。今日は景色を見る余裕がないみたいだ」

「りょう、やさん……」

「理央の全てが欲しくてたまらない。いい?」

凌也さんがどういうことを言っているのかよくわからなかったけれど、

――今日のお泊まり、観月さんに任せておいたら大丈夫だからね

佳都さんが言ってくれた言葉を思い出して、僕は首を縦に振った。

「りょうや、さんのすきに、してください……」

「くっ――!!」

凌也さんは苦しげな表情で僕を抱きしめると、そのままスタスタとリビングから出て進んでいった先にある扉を開けた。
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