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番外編

楽しいお茶会  5

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<side敬介>

周平さんたちの手によって、綺麗に並べられたスイーツの数々を前におしゃべりに花を咲かせていると、

「お待たせいたしました。姫さま」

低く凛々しい声が俺の耳に飛び込んできた。

「――っ!! しゅう、へいさん……っ」

テラスの入り口にタキシード姿の男性が四人並んでいるけれど、俺の目には周平さんしか映らなかった。

あまりにもかっこいい姿に駆け寄ろうとしたけれど、慣れないドレスに立ち上がるだけでも精一杯。
すると、スッと俺のそばに近づいてきて、

「姫、どうぞそのままで」

手をとって、俺の前に片膝をついてくれる。

それだけで胸の高鳴りが止まらない。

さっきは自分の姿に反応してくれないなんて拗ねたりしてしまったけれど、見惚れてしまって反応できなかったって言ってくれた言葉の意味がよくわかる。

だって、周平さんがあまりにも格好良すぎて俺も反応できなかったのだから。

ハッと周りに意識を向けると、鳴宮教授もお義母さんもかっこいい旦那さまを賞賛している声が聞こえる。
けれど、隣の悠真さんは何も言えずに安慶名さんを見つめたまま。
きっと俺と同じで見惚れてしまっているんだ。

やっぱり俺たちも、まだまだ修行が足りないのかもしれない。

「姫? どうかしましたか?」

「周平さんが、素敵すぎておかしくなりそうです」

「――っ、敬介っ!!」

正直に思いを告げると、姫呼びからいつもの呼び方に変わり、抱きしめられた。

ああ、幸せすぎる。

「ふふっ。敬介くんも、悠真くんも自分の旦那さまに見惚れちゃったのね」

「だって、こんなに素敵なんですよ」

「悠真にそう言ってもらえるだけで私は幸せですよ」

安慶名さんも悠真さんも幸せそう。

「ほらほら、抱きしめ合うのはその辺にしてお茶会を始めましょう。私、お腹が空いてきたわ。まずは洸平さんのアップルパイと伊織くんのプリンを頂こうかしら」

「すぐにご用意します」

「ふふっ。みんなも専属執事にお願いするといいわ」

お義母さんがお義父さんに頼むと綺麗なお皿にアップルパイにバニラアイスが付け加えられて盛り付けられる。
プリンも可愛らしい器に盛られて食べるのが勿体無いくらいだ。

「お飲み物は紅茶でよろしいですか?」

「ええ。お願いね」

お義母さんの言葉に素直に従うお義父さん。
その姿はすごく慣れている様子でとても楽しそう。
もしかしたら、たまに二人でこんなことをしているのかもしれないななんて思ってしまう。

「姫は何をお召し上がりになりますか?」

「周平さんに姫なんて言われたらドキドキしちゃうな。でも嬉しいですよ」

そんな返しをしながら、

「スイートポテトパイとガトーショコラ、お願いします」

というと、周平さんもまた手慣れた様子で盛り付けてくれた。
料理は苦手だと言っているけれど、こういうセンスは素晴らしいんだよね。
やっぱりデザイナーだかこういうことには長けているのかもしれない。

「さぁ、どうぞ」

コトリと置かれたお皿にはスイートポテトパイとガトーショコラが綺麗に盛られ、生クリームも乗せられていた。

「わぁ、美味しそうっ!!」

「お飲み物は何にしますか?」

「じゃあ、コーヒーにしようかな」

ミルクだけって言わなくてもきっとわかってくれるだろうと思って、何も言わなかったけれど、周平さんが持ってきてくれたコーヒーには当然のようにミルクだけが入っていた。

「砂糖は抜きにしておきましたよ」

耳元でそっと囁かれる。
普段は砂糖もミルクも入っているのが好きだけど、スイーツと一緒の時はミルクだけが好きなんだ。
ふふっ。やっぱり俺の好みを知ってくれているのはさすがだな。

教授はもちろん志良堂教授特製のスイートポテトパイと、安慶名さん特製のいくつかのクッキー。
そしてミルクティーを用意してもらっていた。

ゼミでの休憩の時もよくミルクティーを飲んでいたっけ。
相変わらずミルクティーが好きなんだなと少し懐かしく思ってしまう。

そして悠真さんは安慶名さんのプリンとクッキー、そしてお義父さんのアップルパイを選んだ。
悠真さんもまたミルクだけの入ったコーヒー。
俺と悠真さんは好みもよく似ている気がする。

みんなの前にスイーツと飲み物が揃ったところでようやくお茶会の始まり。

それぞれ旦那さまの淹れてくれた飲み物を堪能してから、スイーツをいただく。

やっぱりお芋好きとしてはスイートポテトパイは外せない。
ナイフで一口サイズに切り分けて、口に運ぶと驚くほど美味しいっ!!

これ、お店の味みたい!!

「志良堂教授!! このスイートポテトパイ、びっくりするくらい美味しいですっ!!」

あまりの美味しさに少し離れた場所で並んで座っている教授に感想を伝えると

「ふふっ。可愛い姫に喜んでもらえて嬉しいよ」

にこやかな笑顔を向けられて、俺も嬉しくなる。
すると周平さんがさっと教授のそばに近づき何やら話をしているのが見える。

何を話しているんだろう?

「ふふっ。周平くん、あれ絶対に宗一郎さんに作り方習う気だよ」

「えっ? 教授に、習う?」

「うん、だって敬介くんが美味しいって褒めるから」

「そうね、今日だって自分だけ何も作れなかったことを悔しがってそうだもの。きっと次のお茶会には周平の手作りが食べられるわね」

「ふふっ。敬介さん、愛されてますね」

「――っ!!!」

みんなからそう言われて顔が赤くなる。
でも、それ以上に俺は嬉しくてたまらなかった。
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