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番外編
学生時代の思い出 <前編>
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昨日、敬介視点で大学時代の話を書いたので、今度は祐悟視点で大学時代の話……敬介との出会いを書いてみました。
短く終わらせるはずが今回も長くなってしまったので前後編でお届けします。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side祐悟>
「おっ、倉橋。早いな」
「ああ、蓮見か。スーツ似合ってるな」
「揶揄うなよ。お前のほうが似合ってるくせに。お前の姿に見惚れてるやつがいっぱいいるぞ」
「そんなのはどうでもいいよ」
「まぁな」
俺と蓮見は高校の同級生。
その時からイケメンで長身で頭脳明晰な俺たちの周りにはいつも人だかりができていたせいで、羨望の眼差しを向けられることには正直慣れすぎていた。
「話しかけられても面倒だし、さっさと体育館に行くか?」
「ああ、そうだな」
親同伴で入学式に参加する者もいたが、俺たちは身軽だ。
もう大学生になったのに、親について来られるのも面倒だからな。
気楽に話をしながら向かっていると、
「すみません、経済学部の入学式が行われる体育館はこっちで合ってますか?」
と後ろから声をかけられた。
何も知らないふりして話しかけてくるのは、もはやいつもの手口。
入学式早々面倒だなと思いながら、振り返ると、そこには俺たち以上にオーラを放つ奴が立っていた。
細身だが程よく筋肉のついた手足の長い体型で、グレーストライプのスリーピースにブラウンのネクタイを優雅に着こなした彼。
いったい誰だ?
同じ高校にはいなかったはず。
だって、彼がいたら気づかないわけがない。
「あの……?」
「ああ、ごめん。ここで合っているよ。俺たちも行くところだから一緒に行こう」
「いいんですか?」
「もちろんだよ」
「よかった。同じ高校から誰も一緒の人がいなくて、ちょっと心細かったんです」
「「――っ!!」」
ほんのり頬を染めながら、笑顔を見せる彼をみた時に今まで感じたことのない庇護欲のようなものを感じたが、蓮見もまた同じような思いを感じたに違いない。
「俺、倉橋祐悟だ。こっちは……」
「蓮見涼平だよ。俺たち、高校の同級生なんだ」
「だから、仲がいいんですね。俺は浅香敬介です」
「同じ歳なんだから敬語はいらないよ。気楽に話して」
「――っ、ああ。ありがとう。なんか、こういうのいいな」
「なんで?」
「桜守と全然違うなって」
「「――っ!!!!!」」
桜守だったのか、やっぱりな。
立ち居振る舞いも、雰囲気もそうかなと思っていた。
これは本気で守ってやらないといけないなと蓮見に視線を送ると、蓮見もわかってるよと言いたげに俺をみていた。
浅香を間に挟んで座り、入学式は滞りなく終了した。
「倉橋が新入生代表挨拶なんて驚いたよ」
苗字でお互いに呼び合おうと決めてから、浅香は嬉しそうに俺の名前を呼ぶ。
桜守では下の名前にくん付けが主流だったと言うから新鮮で嬉しいらしい。
俺たちにはわからない感覚だが、もし俺と蓮見が桜守だったら、祐悟くん、涼平くんと呼び合っていたのかと思うと正直気持ちが悪い。
その点、敬介くんなら似合うのだから、そういうことなのだろう。
「それにしても今日はありがとう。倉橋と蓮見のおかげで入学式はぼっちにならずに済んだよ」
「いや、よかったらこれからも一緒に行動しないか?」
「えっ?」
「いや、授業とかでも三人一組でレポートとかあるしさ。気心知れた相手との方がやりやすいだろ?」
「それは……俺は願ったり叶ったりだけど、いいのか?」
「ああ。もちろん」
「じゃあ、よろしく!」
そう言って、笑顔で差し出してくれた手を握ると、俺とは違う柔らかく小さな手に驚いた。
きっと蓮見も同じことを思っているのだろう。
浅香は絶対に守らなくてはいけない。
なぜかそんな気にさせられた。
「浅香、帰るなら送っていくぞ」
「ああ、大丈夫。迎えが来ることになってるから」
「迎え?」
「あ、来た!」
駐車場に向かっていた俺たちの前に現れたのは、誰もが知っている高級車。
浅香が近づくと運転手がさっと降りてきて後部座席の扉を開けた。
当然のように乗り込む浅香を見送って、俺たちはその場に立ち尽くした。
「さすが、桜守。大学でも送迎か」
「ああ、すげえな」
「登下校は大丈夫としても問題は学内だな」
「そうだな、明日の履修登録は一緒にやった方がいいな。基本は俺たち三人で受けるようにしておこう。ダメな時は俺たちのどっちかが必ず一緒に受けるようにしようか」
「ああ、ちょっと打ち合わせしとくか。そこのカフェ行こうぜ」
そう言って、蓮見としっかりと話し合って万全の対策を整えて、翌日の履修登録に備えた。
「まさか体育があるとは思ってなかったな」
「桜守はそんなに体育が大変だったのか?」
「うーん、みんなで楽しくって感じだったから、特に大変でもなかったけど、真剣にやるって感じでもなかったからもういいかなって思ってた」
「ははっ。なら本気でやろうぜ。みんなでテニスしよう」
「テニス? 俺、初めてだけどできるかな?」
「大丈夫、俺が教えるよ。倉橋もテニスでいいだろう?」
「まぁ、そうだな。この中なら一番楽しそうだ」
「水泳は? 泳ぐだけなら楽しそう!」
「髪乾かしたり着替えとかそれこそ面倒だぞ」
「ああ、確かにそれはあるかも……。じゃあ、テニスでいいか」
納得してくれてよかった。
浅香が水着姿になったら、とんでもない騒ぎになるところだったな。
短く終わらせるはずが今回も長くなってしまったので前後編でお届けします。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side祐悟>
「おっ、倉橋。早いな」
「ああ、蓮見か。スーツ似合ってるな」
「揶揄うなよ。お前のほうが似合ってるくせに。お前の姿に見惚れてるやつがいっぱいいるぞ」
「そんなのはどうでもいいよ」
「まぁな」
俺と蓮見は高校の同級生。
その時からイケメンで長身で頭脳明晰な俺たちの周りにはいつも人だかりができていたせいで、羨望の眼差しを向けられることには正直慣れすぎていた。
「話しかけられても面倒だし、さっさと体育館に行くか?」
「ああ、そうだな」
親同伴で入学式に参加する者もいたが、俺たちは身軽だ。
もう大学生になったのに、親について来られるのも面倒だからな。
気楽に話をしながら向かっていると、
「すみません、経済学部の入学式が行われる体育館はこっちで合ってますか?」
と後ろから声をかけられた。
何も知らないふりして話しかけてくるのは、もはやいつもの手口。
入学式早々面倒だなと思いながら、振り返ると、そこには俺たち以上にオーラを放つ奴が立っていた。
細身だが程よく筋肉のついた手足の長い体型で、グレーストライプのスリーピースにブラウンのネクタイを優雅に着こなした彼。
いったい誰だ?
同じ高校にはいなかったはず。
だって、彼がいたら気づかないわけがない。
「あの……?」
「ああ、ごめん。ここで合っているよ。俺たちも行くところだから一緒に行こう」
「いいんですか?」
「もちろんだよ」
「よかった。同じ高校から誰も一緒の人がいなくて、ちょっと心細かったんです」
「「――っ!!」」
ほんのり頬を染めながら、笑顔を見せる彼をみた時に今まで感じたことのない庇護欲のようなものを感じたが、蓮見もまた同じような思いを感じたに違いない。
「俺、倉橋祐悟だ。こっちは……」
「蓮見涼平だよ。俺たち、高校の同級生なんだ」
「だから、仲がいいんですね。俺は浅香敬介です」
「同じ歳なんだから敬語はいらないよ。気楽に話して」
「――っ、ああ。ありがとう。なんか、こういうのいいな」
「なんで?」
「桜守と全然違うなって」
「「――っ!!!!!」」
桜守だったのか、やっぱりな。
立ち居振る舞いも、雰囲気もそうかなと思っていた。
これは本気で守ってやらないといけないなと蓮見に視線を送ると、蓮見もわかってるよと言いたげに俺をみていた。
浅香を間に挟んで座り、入学式は滞りなく終了した。
「倉橋が新入生代表挨拶なんて驚いたよ」
苗字でお互いに呼び合おうと決めてから、浅香は嬉しそうに俺の名前を呼ぶ。
桜守では下の名前にくん付けが主流だったと言うから新鮮で嬉しいらしい。
俺たちにはわからない感覚だが、もし俺と蓮見が桜守だったら、祐悟くん、涼平くんと呼び合っていたのかと思うと正直気持ちが悪い。
その点、敬介くんなら似合うのだから、そういうことなのだろう。
「それにしても今日はありがとう。倉橋と蓮見のおかげで入学式はぼっちにならずに済んだよ」
「いや、よかったらこれからも一緒に行動しないか?」
「えっ?」
「いや、授業とかでも三人一組でレポートとかあるしさ。気心知れた相手との方がやりやすいだろ?」
「それは……俺は願ったり叶ったりだけど、いいのか?」
「ああ。もちろん」
「じゃあ、よろしく!」
そう言って、笑顔で差し出してくれた手を握ると、俺とは違う柔らかく小さな手に驚いた。
きっと蓮見も同じことを思っているのだろう。
浅香は絶対に守らなくてはいけない。
なぜかそんな気にさせられた。
「浅香、帰るなら送っていくぞ」
「ああ、大丈夫。迎えが来ることになってるから」
「迎え?」
「あ、来た!」
駐車場に向かっていた俺たちの前に現れたのは、誰もが知っている高級車。
浅香が近づくと運転手がさっと降りてきて後部座席の扉を開けた。
当然のように乗り込む浅香を見送って、俺たちはその場に立ち尽くした。
「さすが、桜守。大学でも送迎か」
「ああ、すげえな」
「登下校は大丈夫としても問題は学内だな」
「そうだな、明日の履修登録は一緒にやった方がいいな。基本は俺たち三人で受けるようにしておこう。ダメな時は俺たちのどっちかが必ず一緒に受けるようにしようか」
「ああ、ちょっと打ち合わせしとくか。そこのカフェ行こうぜ」
そう言って、蓮見としっかりと話し合って万全の対策を整えて、翌日の履修登録に備えた。
「まさか体育があるとは思ってなかったな」
「桜守はそんなに体育が大変だったのか?」
「うーん、みんなで楽しくって感じだったから、特に大変でもなかったけど、真剣にやるって感じでもなかったからもういいかなって思ってた」
「ははっ。なら本気でやろうぜ。みんなでテニスしよう」
「テニス? 俺、初めてだけどできるかな?」
「大丈夫、俺が教えるよ。倉橋もテニスでいいだろう?」
「まぁ、そうだな。この中なら一番楽しそうだ」
「水泳は? 泳ぐだけなら楽しそう!」
「髪乾かしたり着替えとかそれこそ面倒だぞ」
「ああ、確かにそれはあるかも……。じゃあ、テニスでいいか」
納得してくれてよかった。
浅香が水着姿になったら、とんでもない騒ぎになるところだったな。
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