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番外編
おまけ話 幸せのお裾分け 周平side
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「ふふっ。周平さん、浅香さんに見惚れてるんですか? ラブラブですね」
「――っ! 朝陽くん、何言って――」
「ああ。もう私は遥か昔から敬介に心を囚われてしまっているからね」
朝陽くんに揶揄われて照れている敬介はさっきよりも顔を赤らめて実に可愛らしい。
朝陽くんたちにも見せたくないくらいだ。
私は急いで敬介の隣に腰を下ろし、ピッタリと寄り添って座った。
「わぁーっ、本当にお付き合いされてるんですね。お似合いです」
盛山くんの言葉に恥ずかしそうに私の身体で顔を隠そうとする敬介に、
「そんなに恥ずかしいか? 私の恋人だと言われるのは……」
とわざと沈んだ声で告げると、
「そ、そんなことないですっ!」
と焦った様子で私の顔を見上げた。
ふふっ。
そんな目で見つめられたらこの場で押し倒したくなってしまうな。
敬介があらかじめ頼んでくれていた料理が次々に運び込まれ、朝陽くんたちは『美味しそう~!』と目を輝かせている。
それぞれ飲み物を頼み、今日の作戦の成功を祝してとりあえず乾杯をして、食事を始めた。
「涼平さんは大丈夫でしょうか?」
「ああ、涼平なら大丈夫だよ。心配することもない。すぐにこっちに合流するはずだ」
「蓮見が来たらまた乾杯しよう、朝陽くん」
「はい」
朝陽くんはようやくホッとした顔で料理に手をつけ始めた。
我が弟ながら、本当にいい子を見つけたようだな。
少し前ならそれを羨ましいと思う私がいたんだろうが、今は私にもこうやって愛しい敬介が傍にいる。
ああ、この上ない幸せだな。
小さな口で料理を口に運ぶ敬介を見つめていると、
「しゅ、周平さん。そんなに見られたら食べにくいんですけど……」
と訴えてくる。
「ああ、可愛いからつい見てしまったよ。代わりに私が食べるところも見てくれていいよ」
「代わりにって、ふふっ」
「本当にお二人はラブラブですね。あ~あ、早く涼平さん来てくれないかなぁ」
私たちが笑い合っているのを見て、朝陽くんがそんなことを言い出した。
私たちが見せつけすぎてしまったのか、少し寂しくなってしまったようだ。
ずっと付き合っていたとはいえ、新婚だからな。
そんな朝陽くんの気持ちを慮ってか、新川くんが違う話題を出してきた。
「そういえば、浅香さんと周平さんは倉橋さんの大切な子にあったことはあるんですか?」
「いや、私たちはまだだな。この件が片付いたら紹介してもらうことになっているんだが……」
「そうなんですか。ふふっ。びっくりしますよ」
「んっ? それはどういう意味だい? 彼が何か?」
「違います、倉橋さんの方ですよ。今までの倉橋さんとは全然違うんで、きっと驚くと思いますよ。ねぇ、南條さん」
「ふふっ。そうだね。僕と握手するのも耐えきれないみたいで、すぐに引き離されちゃったんですよ」
「えっ? 握手も?」
「嘘だろっ」
私と敬介はあまりにも信じられない話に2人して驚きの声をあげてしまった。
「ふふっ。本当なんですよ。怪我しているからとか言ってずっと彼のこと抱き抱えてたんですけど、ただ単純に倉橋さんが彼を離したくないだけなんですよね、あれは」
「そうそう。かなり愛おしそうな表情で姫抱っこしてましたよ、公衆の面前で」
新川くんたちから出てくる話がどれもこれも信じ難いことばかりで私と敬介は言葉も出せなかった。
あんなにも節操なしに一夜の付き合いだけを楽しんでいた彼がこうまで変わるとは……。
まぁ、そうでもなければ恋人のために報復など考えるようなことはしないか。
だが、彼をそこまで変えたその倉橋くんの大事な子……かなり気になるな。
「倉橋の大事な子ってどんな子なんだ?」
敬介もまたかなり興味を持ったらしく、朝陽くんたちに尋ねると
「うーん、そうですね。すごく可愛い子ですよ。ちっちゃくて本当に守ってあげたくなるような……浅香さんのところにいるウサギみたいなホワホワした可愛い子です。ねぇ?」
と彼を頭に思い浮かべているのか、にこやかな笑顔を浮かべている。
新川くんたちもそれに賛同するように
「うん、そうですね。でも、すごくしっかりした子ですよ。俺にちゃんとお礼も言ってくれたし」
「すごくお似合いでしたよ、周平さんたちみたいに。ふふっ」
と言っていた。
敬介は自分達の話題が出て一瞬顔を赤らめていたが、それでもまだ倉橋くんのことにびっくりしているようだった。
「今度紹介してもらうの楽しみですね」
「ああ、そうだな」
私と敬介がこうやって親密な関係になれたのも、倉橋くんが最愛の人と巡り会えたのも、同じ時期なのは偶然じゃないのかもしれない。
きっと涼平と朝陽くんの結婚式で2人が幸せのお裾分けをしてくれたんだろうな。
そう考えれば、涼平と朝陽くんは我々4人のキューピッドか。
ふふっ。
それもまた嬉しいことだな。
そういえば、もう1組のキューピッドにも敬介を紹介しないとな。
ずっと私の焦れったい敬介への恋を心配してくれていた伊織と悠真くんはきっと喜んでくれるだろう。
「私も敬介を紹介したい人がいるんだ。会ってくれるかい?」
「はい。もちろん!」
敬介の嬉しそうな顔を見て私は敬介の肩を抱き、『愛してるよ』と呟いた。
「――っ! 朝陽くん、何言って――」
「ああ。もう私は遥か昔から敬介に心を囚われてしまっているからね」
朝陽くんに揶揄われて照れている敬介はさっきよりも顔を赤らめて実に可愛らしい。
朝陽くんたちにも見せたくないくらいだ。
私は急いで敬介の隣に腰を下ろし、ピッタリと寄り添って座った。
「わぁーっ、本当にお付き合いされてるんですね。お似合いです」
盛山くんの言葉に恥ずかしそうに私の身体で顔を隠そうとする敬介に、
「そんなに恥ずかしいか? 私の恋人だと言われるのは……」
とわざと沈んだ声で告げると、
「そ、そんなことないですっ!」
と焦った様子で私の顔を見上げた。
ふふっ。
そんな目で見つめられたらこの場で押し倒したくなってしまうな。
敬介があらかじめ頼んでくれていた料理が次々に運び込まれ、朝陽くんたちは『美味しそう~!』と目を輝かせている。
それぞれ飲み物を頼み、今日の作戦の成功を祝してとりあえず乾杯をして、食事を始めた。
「涼平さんは大丈夫でしょうか?」
「ああ、涼平なら大丈夫だよ。心配することもない。すぐにこっちに合流するはずだ」
「蓮見が来たらまた乾杯しよう、朝陽くん」
「はい」
朝陽くんはようやくホッとした顔で料理に手をつけ始めた。
我が弟ながら、本当にいい子を見つけたようだな。
少し前ならそれを羨ましいと思う私がいたんだろうが、今は私にもこうやって愛しい敬介が傍にいる。
ああ、この上ない幸せだな。
小さな口で料理を口に運ぶ敬介を見つめていると、
「しゅ、周平さん。そんなに見られたら食べにくいんですけど……」
と訴えてくる。
「ああ、可愛いからつい見てしまったよ。代わりに私が食べるところも見てくれていいよ」
「代わりにって、ふふっ」
「本当にお二人はラブラブですね。あ~あ、早く涼平さん来てくれないかなぁ」
私たちが笑い合っているのを見て、朝陽くんがそんなことを言い出した。
私たちが見せつけすぎてしまったのか、少し寂しくなってしまったようだ。
ずっと付き合っていたとはいえ、新婚だからな。
そんな朝陽くんの気持ちを慮ってか、新川くんが違う話題を出してきた。
「そういえば、浅香さんと周平さんは倉橋さんの大切な子にあったことはあるんですか?」
「いや、私たちはまだだな。この件が片付いたら紹介してもらうことになっているんだが……」
「そうなんですか。ふふっ。びっくりしますよ」
「んっ? それはどういう意味だい? 彼が何か?」
「違います、倉橋さんの方ですよ。今までの倉橋さんとは全然違うんで、きっと驚くと思いますよ。ねぇ、南條さん」
「ふふっ。そうだね。僕と握手するのも耐えきれないみたいで、すぐに引き離されちゃったんですよ」
「えっ? 握手も?」
「嘘だろっ」
私と敬介はあまりにも信じられない話に2人して驚きの声をあげてしまった。
「ふふっ。本当なんですよ。怪我しているからとか言ってずっと彼のこと抱き抱えてたんですけど、ただ単純に倉橋さんが彼を離したくないだけなんですよね、あれは」
「そうそう。かなり愛おしそうな表情で姫抱っこしてましたよ、公衆の面前で」
新川くんたちから出てくる話がどれもこれも信じ難いことばかりで私と敬介は言葉も出せなかった。
あんなにも節操なしに一夜の付き合いだけを楽しんでいた彼がこうまで変わるとは……。
まぁ、そうでもなければ恋人のために報復など考えるようなことはしないか。
だが、彼をそこまで変えたその倉橋くんの大事な子……かなり気になるな。
「倉橋の大事な子ってどんな子なんだ?」
敬介もまたかなり興味を持ったらしく、朝陽くんたちに尋ねると
「うーん、そうですね。すごく可愛い子ですよ。ちっちゃくて本当に守ってあげたくなるような……浅香さんのところにいるウサギみたいなホワホワした可愛い子です。ねぇ?」
と彼を頭に思い浮かべているのか、にこやかな笑顔を浮かべている。
新川くんたちもそれに賛同するように
「うん、そうですね。でも、すごくしっかりした子ですよ。俺にちゃんとお礼も言ってくれたし」
「すごくお似合いでしたよ、周平さんたちみたいに。ふふっ」
と言っていた。
敬介は自分達の話題が出て一瞬顔を赤らめていたが、それでもまだ倉橋くんのことにびっくりしているようだった。
「今度紹介してもらうの楽しみですね」
「ああ、そうだな」
私と敬介がこうやって親密な関係になれたのも、倉橋くんが最愛の人と巡り会えたのも、同じ時期なのは偶然じゃないのかもしれない。
きっと涼平と朝陽くんの結婚式で2人が幸せのお裾分けをしてくれたんだろうな。
そう考えれば、涼平と朝陽くんは我々4人のキューピッドか。
ふふっ。
それもまた嬉しいことだな。
そういえば、もう1組のキューピッドにも敬介を紹介しないとな。
ずっと私の焦れったい敬介への恋を心配してくれていた伊織と悠真くんはきっと喜んでくれるだろう。
「私も敬介を紹介したい人がいるんだ。会ってくれるかい?」
「はい。もちろん!」
敬介の嬉しそうな顔を見て私は敬介の肩を抱き、『愛してるよ』と呟いた。
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