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「まさか自分が編み物ができるなんて思ってなかったな……本当にびっくり……」
あやちゃんは何度もそう言っていたけれど、あやちゃんの手にはいくつもお花の形をしたコースターができていて、それがとても綺麗にできている。僕も自分が編み物できるなんて思わなかったけど、未知子ママに教えてもらって楽しくて手を動かしていたらできちゃった感じだったし。あやちゃんも同じような感じなのかもね。
「これならすぐにマフラーも編めるわ。ねぇ、史紀さん」
「はい。すぐに上手に編めますよ。でも、少し休憩しましょうか。僕、美味しいケーキを買ってきたんですよ。玄関で牧田さんにお渡ししてきました」
「あら、ありがとう。気を遣わせてしまったわね。すぐに用意させるわ」
未知子ママはさっと編み物を片付けて、部屋を出ていきすぐに戻ってきた。
「そろそろ休憩だと思って準備してくれていたみたい。すぐに持ってきてくれるわ」
「わぁ、さすが牧田さんですね」
「あっ! そういえば直くん、一花ちゃんたちにお土産渡すの忘れてるよ」
あやちゃんが突然思い出したように声を上げた。
「あっ! そうでした!」
「一花ちゃんの家に行くってウキウキしてたから、私も声かけるの忘れちゃってたよ」
「今、渡してもいですか?」
「うん。渡そう!」
あやちゃんのその声に、直くんは持ってきていたリュックを開けた。
これにお土産が入ってるなんて思わなかったな。てっきり、毛糸を持ってきていると思ってた。
「あの、一花さんと貴船さんの結婚式の次の日に、水族館に連れて行ってもらったんです。それでこれ、その時のお土産です。これは一花さん」
「わぁ、ありがとう!」
「これは未知子さん。あと、これは史紀さんのです。どうぞ」
「えっ? 僕も? いいの?」
史紀さんは直くんからお土産をもらってびっくりしているけれど、その表情はとても嬉しそうだ。
「はい。僕……水族館にいくのもお土産を選ぶのも初めてで、みんなに合うのを選んだつもりなんですけど……気に入ってもらえたら嬉しいです」
「直くんからのお土産、なんだろう?」
僕の手のひらより少し大きな袋に入っている膨らみが気になりながら、ドキドキしてリボンを外して中を見た。
「わぁーっ!! 可愛いっ!!」
出てきたのは手のひらサイズの可愛いペンギンのぬいぐるみ。その頭にはどこかにぶら下げられるような輪っかがついている。
「あらあら、私のはアザラシかしら? 可愛いわ」
「僕のはカワウソかな。可愛いね! ありがとう!」
「良かったぁー、喜んでもらえて……」
「直くん、ずっと心配してたんだよね。本当はもっと大きいのにしようかって悩んでたんだけど、三つも持って帰るのは大変だからって」
「確かにそうだね。僕もここの水族館に行ったことあるけど、海の生き物のぬいぐるみがいっぱいで、大きさもいっぱいあって悩んじゃうよね」
「あ、一花さんもあの水族館行ったんですね。僕……同じものを買っちゃったりしてませんか?」
「大丈夫、僕が買ってもらったのは、ほら。あそこのラッコちゃんだから」
僕がベッドを指差すと、直くんはすぐに視線を向けた。
「わぁー、可愛い! ラッコちゃんがマフラーしてる。これって、もしかして……?」
「そう。僕が編んだんだよ」
パパへのマフラーを作る前に、どんな柄にしようかと悩んでラッコちゃん用の小さなマフラーで練習がてら編んだんだ。意外と可愛くできて僕も気に入っているマフラーだ。
「可愛い!! 僕もあれくらいの大きさのペンギンさんのぬいぐるみ買ってもらったので、真似してもいいですか?」
「もちろん! お揃い、嬉しいよ」
「お揃い……っ」
直くんは僕の言葉にとっても嬉しそうに笑っていた。
「さぁ、史紀さんからのケーキ、いただきましょうか」
牧田さんが運んできてくれたのは小さなケーキがたくさん並んだ大きなお皿。
直くんと初めて会った時に、志摩さんが用意してくれたのと同じくらいの小さなケーキだ。
「あっ、これ……イリゼホテルのケーキじゃない? 見たことないサイズだけど見た目はそっくり」
「さすが絢斗さん。よくご存知ですね。敬介さんとあれからすごく仲良くさせてもらっていて、今日貴船邸で集まるって話をしたら特別なケーキを用意してくださったんですよ。この方がたくさん召し上がってもらえるからって」
「えーっ、すごい! さすが敬介くん!」
「今度、ぜひイリゼホテルでお茶会しましょうと伝言を頼まれました。次回はイリゼホテルで集まるのもいいですね。敬介さんも編み物をぜひやってみたいって仰ってましたよ」
「まぁ! 浅香さんまで仲間に加わってくれたら楽しくなりそうね」
「それなら、佳史くんにも声かけなきゃ! でも、みんなが時間を合わせるのはなかなか難しいかな?」
「でも計画立てるのは楽しいですよ。また一花くんの結婚式の時みたいにみんなで集まれたらいいですね」
あの時は本当に楽しかった。あの時間がまたできたら……うん、絶対に楽しいだろうな。
あやちゃんは何度もそう言っていたけれど、あやちゃんの手にはいくつもお花の形をしたコースターができていて、それがとても綺麗にできている。僕も自分が編み物できるなんて思わなかったけど、未知子ママに教えてもらって楽しくて手を動かしていたらできちゃった感じだったし。あやちゃんも同じような感じなのかもね。
「これならすぐにマフラーも編めるわ。ねぇ、史紀さん」
「はい。すぐに上手に編めますよ。でも、少し休憩しましょうか。僕、美味しいケーキを買ってきたんですよ。玄関で牧田さんにお渡ししてきました」
「あら、ありがとう。気を遣わせてしまったわね。すぐに用意させるわ」
未知子ママはさっと編み物を片付けて、部屋を出ていきすぐに戻ってきた。
「そろそろ休憩だと思って準備してくれていたみたい。すぐに持ってきてくれるわ」
「わぁ、さすが牧田さんですね」
「あっ! そういえば直くん、一花ちゃんたちにお土産渡すの忘れてるよ」
あやちゃんが突然思い出したように声を上げた。
「あっ! そうでした!」
「一花ちゃんの家に行くってウキウキしてたから、私も声かけるの忘れちゃってたよ」
「今、渡してもいですか?」
「うん。渡そう!」
あやちゃんのその声に、直くんは持ってきていたリュックを開けた。
これにお土産が入ってるなんて思わなかったな。てっきり、毛糸を持ってきていると思ってた。
「あの、一花さんと貴船さんの結婚式の次の日に、水族館に連れて行ってもらったんです。それでこれ、その時のお土産です。これは一花さん」
「わぁ、ありがとう!」
「これは未知子さん。あと、これは史紀さんのです。どうぞ」
「えっ? 僕も? いいの?」
史紀さんは直くんからお土産をもらってびっくりしているけれど、その表情はとても嬉しそうだ。
「はい。僕……水族館にいくのもお土産を選ぶのも初めてで、みんなに合うのを選んだつもりなんですけど……気に入ってもらえたら嬉しいです」
「直くんからのお土産、なんだろう?」
僕の手のひらより少し大きな袋に入っている膨らみが気になりながら、ドキドキしてリボンを外して中を見た。
「わぁーっ!! 可愛いっ!!」
出てきたのは手のひらサイズの可愛いペンギンのぬいぐるみ。その頭にはどこかにぶら下げられるような輪っかがついている。
「あらあら、私のはアザラシかしら? 可愛いわ」
「僕のはカワウソかな。可愛いね! ありがとう!」
「良かったぁー、喜んでもらえて……」
「直くん、ずっと心配してたんだよね。本当はもっと大きいのにしようかって悩んでたんだけど、三つも持って帰るのは大変だからって」
「確かにそうだね。僕もここの水族館に行ったことあるけど、海の生き物のぬいぐるみがいっぱいで、大きさもいっぱいあって悩んじゃうよね」
「あ、一花さんもあの水族館行ったんですね。僕……同じものを買っちゃったりしてませんか?」
「大丈夫、僕が買ってもらったのは、ほら。あそこのラッコちゃんだから」
僕がベッドを指差すと、直くんはすぐに視線を向けた。
「わぁー、可愛い! ラッコちゃんがマフラーしてる。これって、もしかして……?」
「そう。僕が編んだんだよ」
パパへのマフラーを作る前に、どんな柄にしようかと悩んでラッコちゃん用の小さなマフラーで練習がてら編んだんだ。意外と可愛くできて僕も気に入っているマフラーだ。
「可愛い!! 僕もあれくらいの大きさのペンギンさんのぬいぐるみ買ってもらったので、真似してもいいですか?」
「もちろん! お揃い、嬉しいよ」
「お揃い……っ」
直くんは僕の言葉にとっても嬉しそうに笑っていた。
「さぁ、史紀さんからのケーキ、いただきましょうか」
牧田さんが運んできてくれたのは小さなケーキがたくさん並んだ大きなお皿。
直くんと初めて会った時に、志摩さんが用意してくれたのと同じくらいの小さなケーキだ。
「あっ、これ……イリゼホテルのケーキじゃない? 見たことないサイズだけど見た目はそっくり」
「さすが絢斗さん。よくご存知ですね。敬介さんとあれからすごく仲良くさせてもらっていて、今日貴船邸で集まるって話をしたら特別なケーキを用意してくださったんですよ。この方がたくさん召し上がってもらえるからって」
「えーっ、すごい! さすが敬介くん!」
「今度、ぜひイリゼホテルでお茶会しましょうと伝言を頼まれました。次回はイリゼホテルで集まるのもいいですね。敬介さんも編み物をぜひやってみたいって仰ってましたよ」
「まぁ! 浅香さんまで仲間に加わってくれたら楽しくなりそうね」
「それなら、佳史くんにも声かけなきゃ! でも、みんなが時間を合わせるのはなかなか難しいかな?」
「でも計画立てるのは楽しいですよ。また一花くんの結婚式の時みたいにみんなで集まれたらいいですね」
あの時は本当に楽しかった。あの時間がまたできたら……うん、絶対に楽しいだろうな。
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