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若いが故の悩み
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<side征哉>
お義父さんや二階堂さんと交代で写真を撮り終え、一花に食事を取らせるべく抱きかかえて席についた。
「お疲れさん」
その言葉と共に天沢がさっと私たちの目の前に料理が置いた。
大きなトレイには十割蕎麦のせいろと今が旬の山菜と海老の天ぷら。
蕎麦がきや蕎麦豆腐、鴨肉のローストなどの小鉢が五品。
そして、黒蜜ときな粉がかかった美味しそうな蕨餅もあって、かなり豪勢な食事が並んでいる。
「わぁ、美味しそう!」
一花の屈託のない笑顔に天沢も嬉しそうだ。
「さっき、今回のブライダルパンフレットの責任者と話したんだが」
「ああ、どうだった? 正直言って結婚式に夢中だったから、撮影のことは一切頭になかったよ。上手くできたか心配だな」
「いや、それがその責任者がもう大泣きで」
「えっ? 泣いてた?」
「ああ、最初から最後までずっと感動しっぱなしだったらしい。お前と一花さんのおかげだよ」
「そうか。だがそもそもお前がいい提案をしてくれたおかげだからな。お前の役に立てたならよかったよ」
「ありがとう。ゆっくり食事していってくれ」
天沢は私の肩をポンと叩いて、その場を立ち去った。
「上手くいったんですか?」
「ああ、そうみたいだ。一花が可愛いから当然だな。さぁ、私が食べさせよう。一花、何から食べたい?」
「僕、これ食べてみたいです」
一花が指差したのは小鉢に入った蕎麦がき。
天沢がちゃんと分かってくれているようで一花の蕎麦がきには山葵が乗っていない。
まだ辛子や山葵のような刺激物は食べさせていないからな。
箸で一口サイズに切り分けて口に運んでやると、
「んっ! お団子みたいでおいしいです!!」
と食感を楽しんでいるようだ。
こうやって少しずつ知らないものを知っていく。
その場面に立ち会えるのが何よりも楽しい。
たくさんの小鉢や料理が並んでいたが、全てが一花仕様になっているため、完食できて満足そうだ。
磯山先生から直純くんの分も一花と同じものにして欲しいという要望があったため、全く同じものを用意したが、あちらも無事に完食できたようだ。
全ての皿が空っぽになったトレイを見て、直純くんが喜んでいるのがここからでも確認できる。
一花も残すことを極端に嫌がるが、きっと直純くんも同じなのだろうな。
「あの、貴船さん。今日の宿泊場所なんですけど……」
そっと隣に寄ってきて小声で尋ねてきたのは、磯山先生の甥っ子である昇くんだ。
小声で話しかけてくるということはあまり聴かれたくない話なのだろう。
隣の席に座っていた母と話をしている一花に少し背を向けて話をすることにした。
「ここからそこまで距離は離れていないから安心してくれ」
「いや、その温泉がついてるって聞いたんですけどそれって大浴場ですか?」
「ああ、その心配か。もちろん大浴場も完備しているしそこも利用可能だが、今回君たち参列者のために用意している部屋が特別棟だから、部屋に一つずつ露天風呂を完備しているよ」
「部屋に、露天風呂……」
「一応磯山先生からは夕食は君たちと一緒で、寝る部屋は別々でと言われているから隣同士の部屋を用意しているよ。磯山先生の話では直純くん、温泉に行きたいと話をしていたみたいだから喜ぶんじゃないか?」
「え、ええ。それはそうなんですけど……せっかくの露天風呂一人で入らせるのは可哀想ですよね?」
「それはそうだろうな。君が一緒に入ってやるんじゃないのか?」
「えっ、でもそれは流石に……」
「じゃあ大浴場に連れていくか? 不特定多数に彼の裸が見られる方が我慢できるか?」
「――っ、いやそれは……」
「だったら、露天風呂に一緒に入った方がいいんじゃないか?」
「でも、俺……我慢できるかどうか……」
まぁ、心配するのも無理はない。
昇くんは性欲旺盛な高校生。
だが、相手が一花よりも無知な中学生相手となれば、ためらってしまうだろう。
私だって、一花と一緒に温泉に入ったときは興奮してしまったが、一花の年齢もあって無事に先に進むことはできた。
昇くんの場合はそれができないから難しいだろうな。
「じゃあ、磯山先生と絢斗さんと一緒に入ってもらうように頼むか?」
「それは……」
絢斗さんは喜びそうだが、磯山先生がな……。
グリにさえ、嫉妬するような人だ。
直純くんが絢斗さんの裸を見てしまうのは流石に許せないだろうし、磯山先生自身も直純くんの裸を昇くんよりも先に見てしまうことに躊躇いそうだ。
さて、どうするのが一番いいか……。
困ったものだな。
お義父さんや二階堂さんと交代で写真を撮り終え、一花に食事を取らせるべく抱きかかえて席についた。
「お疲れさん」
その言葉と共に天沢がさっと私たちの目の前に料理が置いた。
大きなトレイには十割蕎麦のせいろと今が旬の山菜と海老の天ぷら。
蕎麦がきや蕎麦豆腐、鴨肉のローストなどの小鉢が五品。
そして、黒蜜ときな粉がかかった美味しそうな蕨餅もあって、かなり豪勢な食事が並んでいる。
「わぁ、美味しそう!」
一花の屈託のない笑顔に天沢も嬉しそうだ。
「さっき、今回のブライダルパンフレットの責任者と話したんだが」
「ああ、どうだった? 正直言って結婚式に夢中だったから、撮影のことは一切頭になかったよ。上手くできたか心配だな」
「いや、それがその責任者がもう大泣きで」
「えっ? 泣いてた?」
「ああ、最初から最後までずっと感動しっぱなしだったらしい。お前と一花さんのおかげだよ」
「そうか。だがそもそもお前がいい提案をしてくれたおかげだからな。お前の役に立てたならよかったよ」
「ありがとう。ゆっくり食事していってくれ」
天沢は私の肩をポンと叩いて、その場を立ち去った。
「上手くいったんですか?」
「ああ、そうみたいだ。一花が可愛いから当然だな。さぁ、私が食べさせよう。一花、何から食べたい?」
「僕、これ食べてみたいです」
一花が指差したのは小鉢に入った蕎麦がき。
天沢がちゃんと分かってくれているようで一花の蕎麦がきには山葵が乗っていない。
まだ辛子や山葵のような刺激物は食べさせていないからな。
箸で一口サイズに切り分けて口に運んでやると、
「んっ! お団子みたいでおいしいです!!」
と食感を楽しんでいるようだ。
こうやって少しずつ知らないものを知っていく。
その場面に立ち会えるのが何よりも楽しい。
たくさんの小鉢や料理が並んでいたが、全てが一花仕様になっているため、完食できて満足そうだ。
磯山先生から直純くんの分も一花と同じものにして欲しいという要望があったため、全く同じものを用意したが、あちらも無事に完食できたようだ。
全ての皿が空っぽになったトレイを見て、直純くんが喜んでいるのがここからでも確認できる。
一花も残すことを極端に嫌がるが、きっと直純くんも同じなのだろうな。
「あの、貴船さん。今日の宿泊場所なんですけど……」
そっと隣に寄ってきて小声で尋ねてきたのは、磯山先生の甥っ子である昇くんだ。
小声で話しかけてくるということはあまり聴かれたくない話なのだろう。
隣の席に座っていた母と話をしている一花に少し背を向けて話をすることにした。
「ここからそこまで距離は離れていないから安心してくれ」
「いや、その温泉がついてるって聞いたんですけどそれって大浴場ですか?」
「ああ、その心配か。もちろん大浴場も完備しているしそこも利用可能だが、今回君たち参列者のために用意している部屋が特別棟だから、部屋に一つずつ露天風呂を完備しているよ」
「部屋に、露天風呂……」
「一応磯山先生からは夕食は君たちと一緒で、寝る部屋は別々でと言われているから隣同士の部屋を用意しているよ。磯山先生の話では直純くん、温泉に行きたいと話をしていたみたいだから喜ぶんじゃないか?」
「え、ええ。それはそうなんですけど……せっかくの露天風呂一人で入らせるのは可哀想ですよね?」
「それはそうだろうな。君が一緒に入ってやるんじゃないのか?」
「えっ、でもそれは流石に……」
「じゃあ大浴場に連れていくか? 不特定多数に彼の裸が見られる方が我慢できるか?」
「――っ、いやそれは……」
「だったら、露天風呂に一緒に入った方がいいんじゃないか?」
「でも、俺……我慢できるかどうか……」
まぁ、心配するのも無理はない。
昇くんは性欲旺盛な高校生。
だが、相手が一花よりも無知な中学生相手となれば、ためらってしまうだろう。
私だって、一花と一緒に温泉に入ったときは興奮してしまったが、一花の年齢もあって無事に先に進むことはできた。
昇くんの場合はそれができないから難しいだろうな。
「じゃあ、磯山先生と絢斗さんと一緒に入ってもらうように頼むか?」
「それは……」
絢斗さんは喜びそうだが、磯山先生がな……。
グリにさえ、嫉妬するような人だ。
直純くんが絢斗さんの裸を見てしまうのは流石に許せないだろうし、磯山先生自身も直純くんの裸を昇くんよりも先に見てしまうことに躊躇いそうだ。
さて、どうするのが一番いいか……。
困ったものだな。
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