223 / 279
サプライズの成功のために
しおりを挟む
「一花」
「あっ、征哉さん。お帰りなさい!」
「ああ、ただいま」
ベッドに座り、谷垣くんと話をしていた一花がこちらを向いて笑顔を見せてくれる。
ああ、この子の可愛い花嫁姿が見られると思っただけで興奮してしまうな。
そっと近づいて一花を抱きしめ、ただいまのキスをしている間に志摩くんと谷垣くんも同じように恋人同士の儀式をしているようだ。
一花にとってはもう見慣れた光景だから気にする様子もない。
だからこそ、志摩くんたちがいる前でもこうして堂々とキスをしてくれるのだ。
一息ついてから、
「谷垣くん。一花から週末の話は聞いたか?」
と尋ねると、身体をピクッと震わせた。
もうだいぶ慣れてくれたかと思ったが、まだ私の声は彼に威圧を与えてしまっているようだ。
まぁ無理もないな。
「しゅ、週末の話、ですか?」
「ああ、天沢に頼まれてパンフレットの撮影がてら結婚式を挙げるという話だよ。当日、悪いが志摩くんには運転手兼スケジュール管理として同行してもらうから、谷垣くんにも一緒に来てもらいたい」
「は、はい。喜んでお供させていただきます」
「そうか、ありがとう。あとで志摩くんにも聞くと思うが、その日は近くの保養所で泊まってもらうことになっている。休日返上で付き合ってもらう代わりにそこでのんびり過ごしてもらいたいと思っているからそのつもりで来てほしい」
「保養所、ですか?」
「ああ、我が貴船コンツェルンの保養所だ。社員たちがいつでも泊まりに来られるように作ったものだから社員たちの中には同じ日に宿泊に来ているものもいるだろうが、私たちが泊まるのは別棟だから気遣いは無用だ。部屋に露天風呂もついているからのんびり過ごしてくれ」
「は、はい。楽しみです」
「征哉さん、僕もそこに泊まれるんですか?」
「ああ。もちろんだよ」
「わー、楽しみです!!」
無邪気に喜んでくれる一花を可愛いと思いながらも、私の頭の中はサプライズでいっぱいになっていた。
祝福してくれる人たちの姿を見たら、一花はどれだけ喜んでくれるだろうな。
想像するだけで胸が熱くなる。
当日まではしっかりと内緒にしておかないとな。
そしてあっという間に当日の朝を迎えた。
志摩くんが各方面と打ち合わせをしっかりとしてくれたおかげでもうすっかり準備も万端。
私は一花と共に向かうだけでいい。
「えっ……未知子ママ、来られないんですか?」
一花はてっきり一緒に出かけると思っていたのだろう。
母が予定があって早々に出かけてしまったと伝えるとあからさまにがっかりした表情を見せていた。
本当は母は牧田の運転で呉服屋に一花のサイズに直してもらった白無垢を取りにいき、私たちが到着するまでに天沢が用意してくれた支度部屋に届けてくれる算段になっているのだが、母が来ること自体をサプライズにしているのだから、それをいうわけにもいかない。
「天沢の方は急遽決まったことだったから、母さんの予定を動かせなかったんだよ。残念だが、帰ってから映像と写真を見せることにしよう」
「わかりました……」
「ああ、そうだ。母さんも出かけているし、私たちも遠出をするから今日はグリも一緒に連れて行こう」
「グリも一緒ですか? はい。わかりました」
可愛がっているグリも一緒に連れて行くということで少しは機嫌が治ったことにホッとしながら、駐車場に向かうともうすでに志摩くんと谷垣くんが来てくれていた。
志摩くんも谷垣くんには内緒にするように言っておいたから準備もなかなかに難しかっただろう。
本当に志摩くんには感謝している。
「志摩くん、今日も長距離の運転になるが頼むよ」
「承知しました。途中何箇所か休憩しますので、その時はお知らせします」
「ああ。わかった。谷垣くんも志摩くんのサポートを頼む」
「は、はい。承知しました」
せっかくの休日に二人も連れ出して申し訳なかったが、今夜は保養所でゆっくりと寛いでもらうとしよう。
車に乗り込み、いつもの席に座らせて一花から見える位置にグリをケージごと固定して、車はゆっくりと走り出した。
揺れに生じて一花は途中で眠ってしまっていたが、天沢の店がある場所に近づくと目を覚ました。
「あれ? もうこんなところまで……」
「ふふっ。よく眠っていたな。昨日はあまり寝られなかったか?」
「ちょっとドキドキして……でも、大丈夫です」
「そうか。一花はいつも通りでいいからな。何も心配することはない」
「はい。征哉さんが一緒だから大丈夫です」
そんな話をしている間に車は駐車場に到着した。
窓から見ても他に車は見えない。
手筈通り、招待客はここからは見えないもう一つの駐車場に車を止めてくれているのだろう。
私はこれからの計画を楽しみに、一花を抱きかかえて車を降りた。
「あっ、征哉さん。お帰りなさい!」
「ああ、ただいま」
ベッドに座り、谷垣くんと話をしていた一花がこちらを向いて笑顔を見せてくれる。
ああ、この子の可愛い花嫁姿が見られると思っただけで興奮してしまうな。
そっと近づいて一花を抱きしめ、ただいまのキスをしている間に志摩くんと谷垣くんも同じように恋人同士の儀式をしているようだ。
一花にとってはもう見慣れた光景だから気にする様子もない。
だからこそ、志摩くんたちがいる前でもこうして堂々とキスをしてくれるのだ。
一息ついてから、
「谷垣くん。一花から週末の話は聞いたか?」
と尋ねると、身体をピクッと震わせた。
もうだいぶ慣れてくれたかと思ったが、まだ私の声は彼に威圧を与えてしまっているようだ。
まぁ無理もないな。
「しゅ、週末の話、ですか?」
「ああ、天沢に頼まれてパンフレットの撮影がてら結婚式を挙げるという話だよ。当日、悪いが志摩くんには運転手兼スケジュール管理として同行してもらうから、谷垣くんにも一緒に来てもらいたい」
「は、はい。喜んでお供させていただきます」
「そうか、ありがとう。あとで志摩くんにも聞くと思うが、その日は近くの保養所で泊まってもらうことになっている。休日返上で付き合ってもらう代わりにそこでのんびり過ごしてもらいたいと思っているからそのつもりで来てほしい」
「保養所、ですか?」
「ああ、我が貴船コンツェルンの保養所だ。社員たちがいつでも泊まりに来られるように作ったものだから社員たちの中には同じ日に宿泊に来ているものもいるだろうが、私たちが泊まるのは別棟だから気遣いは無用だ。部屋に露天風呂もついているからのんびり過ごしてくれ」
「は、はい。楽しみです」
「征哉さん、僕もそこに泊まれるんですか?」
「ああ。もちろんだよ」
「わー、楽しみです!!」
無邪気に喜んでくれる一花を可愛いと思いながらも、私の頭の中はサプライズでいっぱいになっていた。
祝福してくれる人たちの姿を見たら、一花はどれだけ喜んでくれるだろうな。
想像するだけで胸が熱くなる。
当日まではしっかりと内緒にしておかないとな。
そしてあっという間に当日の朝を迎えた。
志摩くんが各方面と打ち合わせをしっかりとしてくれたおかげでもうすっかり準備も万端。
私は一花と共に向かうだけでいい。
「えっ……未知子ママ、来られないんですか?」
一花はてっきり一緒に出かけると思っていたのだろう。
母が予定があって早々に出かけてしまったと伝えるとあからさまにがっかりした表情を見せていた。
本当は母は牧田の運転で呉服屋に一花のサイズに直してもらった白無垢を取りにいき、私たちが到着するまでに天沢が用意してくれた支度部屋に届けてくれる算段になっているのだが、母が来ること自体をサプライズにしているのだから、それをいうわけにもいかない。
「天沢の方は急遽決まったことだったから、母さんの予定を動かせなかったんだよ。残念だが、帰ってから映像と写真を見せることにしよう」
「わかりました……」
「ああ、そうだ。母さんも出かけているし、私たちも遠出をするから今日はグリも一緒に連れて行こう」
「グリも一緒ですか? はい。わかりました」
可愛がっているグリも一緒に連れて行くということで少しは機嫌が治ったことにホッとしながら、駐車場に向かうともうすでに志摩くんと谷垣くんが来てくれていた。
志摩くんも谷垣くんには内緒にするように言っておいたから準備もなかなかに難しかっただろう。
本当に志摩くんには感謝している。
「志摩くん、今日も長距離の運転になるが頼むよ」
「承知しました。途中何箇所か休憩しますので、その時はお知らせします」
「ああ。わかった。谷垣くんも志摩くんのサポートを頼む」
「は、はい。承知しました」
せっかくの休日に二人も連れ出して申し訳なかったが、今夜は保養所でゆっくりと寛いでもらうとしよう。
車に乗り込み、いつもの席に座らせて一花から見える位置にグリをケージごと固定して、車はゆっくりと走り出した。
揺れに生じて一花は途中で眠ってしまっていたが、天沢の店がある場所に近づくと目を覚ました。
「あれ? もうこんなところまで……」
「ふふっ。よく眠っていたな。昨日はあまり寝られなかったか?」
「ちょっとドキドキして……でも、大丈夫です」
「そうか。一花はいつも通りでいいからな。何も心配することはない」
「はい。征哉さんが一緒だから大丈夫です」
そんな話をしている間に車は駐車場に到着した。
窓から見ても他に車は見えない。
手筈通り、招待客はここからは見えないもう一つの駐車場に車を止めてくれているのだろう。
私はこれからの計画を楽しみに、一花を抱きかかえて車を降りた。
2,097
お気に入りに追加
4,683
あなたにおすすめの小説
【完結】勇者様の思い通り~魔王や魔族たちに何故か溺愛されてます
浅葱
BL
【12/18 完結後番外編を上げました】
「私と結婚してこの魔の国を治めてはくれぬか?」
妖艶な美女の姿をした魔王にそう言われ、勇者は泣いた。
「なんで女性ばっかなんだよおおおーーー!」と。
勇者の恋愛対象は男性なのに、見目よし、実力ありのせいか勇者パーティーは全員女性だった。
魔王城に辿り着くまで、パーティーの女性たちに毎晩夜這いをかけられて女性不信マックスになっていた勇者。
これはもう魔王に殺してもらうしかないとまで思いつめて魔王城に着いたら、魔王まで女性でしかも勇者に求婚してくる始末。
勇者は絶望したが、魔王の元の姿は男性型で、しかも変化が得意と知って?
元の姿は背が低めの少年魔王(変化が得意。アレはでかい)+魔族とか魔物×顔はイケメンだけどムキムキマッチョな童貞処女ビッチ勇者。
魔族や魔物は強い者が好きで、その者に従う傾向がある。勇者は妄想をこじらせ過ぎていろんな男性に愛されたいと強く願っていたから、魔王、魔族、魔物にめちゃくちゃ愛されるようになる。
超テンプレ。誰もが書いてる設定での安定のハッピーエンドです。
魔王とのらぶえち(変化あり)あり、魔族や魔物とのらぶえちもあり。小スカとか二輪挿しもあるし、ありえないところからの出産もあるよ(ぉぃ
公開セッ/総受け/巨根攻め/結腸責め/複数攻め/尿道責め/小スカ/拡張/二輪挿し/乳首責め/触手責め/駅弁/出産あり
注:勇者以外がされる描写もあります。そちらには注意書きを改めて入れます~
9/2 表紙のイラストはNEOZONE様に描いていただきました! 魔王(エリーアス)と勇者(クルト)と侍従長(イオール)です! 美麗イラストめちゃくちゃ嬉しいです!!
12/1 fujossyの「第三回 fujossy小説大賞」に参加します! 修正更新していきますのでよろしくー
https://fujossy.jp/books/25823
二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです
矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。
それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。
本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。
しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。
『シャロンと申します、お姉様』
彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。
家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。
自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。
『……今更見つかるなんて……』
ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。
これ以上、傷つくのは嫌だから……。
けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。
――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。
◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです(_ _)
※感想欄のネタバレ配慮はありません。
※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっておりますm(_ _;)m
ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)
三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。
各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。
第?章は前知識不要。
基本的にエロエロ。
本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。
一旦中断!詳細は近況を!
【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで
あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。
連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。
ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。
IF(7話)は本編からの派生。
【R18】翡翠の鎖
環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。
※R18描写あり→*
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる