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許してほしい
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<side征哉>
「一花に、感謝? それは一体どういう意味だ?」
もう少し時間をかけてからでもよかったが、長引かせても仕方がない。
今が最善のタイミングだと思って私は口を開いた。
「櫻葉会長……今回、一花くんとの再会でお呼びだてしたのは、もう一つ大切なお話をしたいと思っていたのです」
「私に、大切な話?」
「はい」
そう言って、不安げには私を見上げるひかる……いや、一花の手をギュッと握って、櫻葉会長を見つめた。
「私は今、彼と真剣にお付き合いさせていただいています」
「えっ、一花と……付き合ってるって、それは……」
「私の生涯のパートナーとして心から愛しています」
「な――っ!」
想像だにしていなかったのだろう。
櫻葉会長は両目を見開いて、私と一花を何度も見返した。
「ほ、本当なのか?」
「はい。初めて出会った時から、一生添い遂げるのは彼しかいないと感じたのです」
「だ、だが、君も一花も男だろう? 大体、一花をパートナーに選んで征哉くんが父上から受け継いだこの会社はどうするつもりだ?」
「我が社は元々世襲制でもありませんし、実力のある者が後を継げばいいと思っています。櫻葉グループも、今は本家の血筋ではない史紀さんが頑張っていらっしゃるではないですか?」
「た、確かに……そう、だな……」
「もちろん会社は大事ですが、それよりも共に人生を歩んで行ける人を大切にしたいと思っています。私にとってそれが彼なんです。ですから、どうか私と彼、一花くんとの仲をお許しいただけないでしょうか?」
ようやく息子が見つかったばかりで、櫻葉会長もこのようなことを言われて気持ちが追いついていかないだろう。
それでも私たちの未来のために許してほしい。
その一心で私は頭を下げ続けた。
「征哉くん、頭を上げてくれ」
「櫻葉会長……」
「少し一花と話がしたいんだがいいかな?」
櫻葉会長は私ではなく、一花に向かって声をかけた。
一花が小さく頷くと、優しい声で尋ねる。
「一花も、征哉くんと同じ気持ちなのかな?」
「あの、僕……」
一花は不安げに私を見上げる。
「いいよ。素直に思った通りに言ってごらん」
そういうと、一花は自分の横に置いていたゾウのセイを胸に抱きながら、ゆっくりと口を開いた。
「僕……征哉、さんが……好きです。だから、ずっとそばにいたいです……お父さん……許して、くれますか?」
一花の必死な思いが伝わってくる。
それが何よりも嬉しい。
「――っ、一花っ!!」
「わっ!!」
櫻葉会長はセイを抱きしめたままの一花を自分の胸に抱きしめた。
「分かった。分かったよ、一花。征哉くんと幸せになるんだぞ」
「――っ、お、とうさん……っ!」
しばらく二人が抱き合うのを見つめながら、私は少しホッとしていた。
「それにしても征哉くんは、見る目があるな」
「えっ……」
「ふふっ。だって、今まで恋愛には無関心だっただろう? 大勢の女性たちが君との縁を繋ごうとして玉砕したと聞いていたぞ。そんな君が見つけたのが私の息子なのだからな。それだけ一花は君の心を射止めたということだろう?」
「はい。彼の美しい顔はもちろんですが、心も清らかで一緒にいるだけで浄化されていくようなそんな気がします」
「ははっ。浄化か……。なるほど、確かにそうかもしれないな。まぁ、一花は麻友子に似て美人だし、君が落ちるのも無理はない。私たちは好みが似ているということなのかもしれないな」
櫻葉会長がこんなにも嬉しそうに話をしてくれるとは……。
「そうですね、ずっと奥さま一筋の会長と似ているのなら、私も一生、一花一筋だと自信をもっていえますよ」
「ははっ。そうでなければ許さないぞ。いいか、一花を絶対に幸せにしてくれ。約束だぞ」
「はい。一花くんを一生幸せにすると誓います」
私の言葉に、微笑む櫻葉会長の目からポロッと涙が溢れた。
「まさか、18年ぶりに息子に再会できた日に、新しい息子までできるとは思っていなかったぞ」
「息子だと思っていただけて恐縮です」
「これからも一花に会いに来てもいいだろうか?」
「もちろんです。さっきも仰ってくださったでしょう? ここは息子の家ですから、いつでも一花に会いに来てください」
「ありがとう、征哉くん。ああ、そうだ。麻友子が好きだったお菓子を買ってきたんだ。一花、一緒に食べよう」
「はいっ!! お母さんの好きなお菓子を食べられるなんて、嬉しいです!!」
一花の心からの笑顔に、私も櫻葉会長も笑顔が止まらなかった。
「一花に、感謝? それは一体どういう意味だ?」
もう少し時間をかけてからでもよかったが、長引かせても仕方がない。
今が最善のタイミングだと思って私は口を開いた。
「櫻葉会長……今回、一花くんとの再会でお呼びだてしたのは、もう一つ大切なお話をしたいと思っていたのです」
「私に、大切な話?」
「はい」
そう言って、不安げには私を見上げるひかる……いや、一花の手をギュッと握って、櫻葉会長を見つめた。
「私は今、彼と真剣にお付き合いさせていただいています」
「えっ、一花と……付き合ってるって、それは……」
「私の生涯のパートナーとして心から愛しています」
「な――っ!」
想像だにしていなかったのだろう。
櫻葉会長は両目を見開いて、私と一花を何度も見返した。
「ほ、本当なのか?」
「はい。初めて出会った時から、一生添い遂げるのは彼しかいないと感じたのです」
「だ、だが、君も一花も男だろう? 大体、一花をパートナーに選んで征哉くんが父上から受け継いだこの会社はどうするつもりだ?」
「我が社は元々世襲制でもありませんし、実力のある者が後を継げばいいと思っています。櫻葉グループも、今は本家の血筋ではない史紀さんが頑張っていらっしゃるではないですか?」
「た、確かに……そう、だな……」
「もちろん会社は大事ですが、それよりも共に人生を歩んで行ける人を大切にしたいと思っています。私にとってそれが彼なんです。ですから、どうか私と彼、一花くんとの仲をお許しいただけないでしょうか?」
ようやく息子が見つかったばかりで、櫻葉会長もこのようなことを言われて気持ちが追いついていかないだろう。
それでも私たちの未来のために許してほしい。
その一心で私は頭を下げ続けた。
「征哉くん、頭を上げてくれ」
「櫻葉会長……」
「少し一花と話がしたいんだがいいかな?」
櫻葉会長は私ではなく、一花に向かって声をかけた。
一花が小さく頷くと、優しい声で尋ねる。
「一花も、征哉くんと同じ気持ちなのかな?」
「あの、僕……」
一花は不安げに私を見上げる。
「いいよ。素直に思った通りに言ってごらん」
そういうと、一花は自分の横に置いていたゾウのセイを胸に抱きながら、ゆっくりと口を開いた。
「僕……征哉、さんが……好きです。だから、ずっとそばにいたいです……お父さん……許して、くれますか?」
一花の必死な思いが伝わってくる。
それが何よりも嬉しい。
「――っ、一花っ!!」
「わっ!!」
櫻葉会長はセイを抱きしめたままの一花を自分の胸に抱きしめた。
「分かった。分かったよ、一花。征哉くんと幸せになるんだぞ」
「――っ、お、とうさん……っ!」
しばらく二人が抱き合うのを見つめながら、私は少しホッとしていた。
「それにしても征哉くんは、見る目があるな」
「えっ……」
「ふふっ。だって、今まで恋愛には無関心だっただろう? 大勢の女性たちが君との縁を繋ごうとして玉砕したと聞いていたぞ。そんな君が見つけたのが私の息子なのだからな。それだけ一花は君の心を射止めたということだろう?」
「はい。彼の美しい顔はもちろんですが、心も清らかで一緒にいるだけで浄化されていくようなそんな気がします」
「ははっ。浄化か……。なるほど、確かにそうかもしれないな。まぁ、一花は麻友子に似て美人だし、君が落ちるのも無理はない。私たちは好みが似ているということなのかもしれないな」
櫻葉会長がこんなにも嬉しそうに話をしてくれるとは……。
「そうですね、ずっと奥さま一筋の会長と似ているのなら、私も一生、一花一筋だと自信をもっていえますよ」
「ははっ。そうでなければ許さないぞ。いいか、一花を絶対に幸せにしてくれ。約束だぞ」
「はい。一花くんを一生幸せにすると誓います」
私の言葉に、微笑む櫻葉会長の目からポロッと涙が溢れた。
「まさか、18年ぶりに息子に再会できた日に、新しい息子までできるとは思っていなかったぞ」
「息子だと思っていただけて恐縮です」
「これからも一花に会いに来てもいいだろうか?」
「もちろんです。さっきも仰ってくださったでしょう? ここは息子の家ですから、いつでも一花に会いに来てください」
「ありがとう、征哉くん。ああ、そうだ。麻友子が好きだったお菓子を買ってきたんだ。一花、一緒に食べよう」
「はいっ!! お母さんの好きなお菓子を食べられるなんて、嬉しいです!!」
一花の心からの笑顔に、私も櫻葉会長も笑顔が止まらなかった。
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