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嬉しい知らせ
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「じゃあ、早速櫻葉会長に連絡をしてくるよ。ひかるはここで母さんと待っていてくれ」
「わかりました」
ひかるの髪にキスを贈り、私は自室に向かった。
それにしても櫻葉会長とこんな縁で繋がることになるとは思ってもみなかったな。
櫻葉会長はどんな反応をするだろうか。
やはり緊張するな。
父が亡くなった時に、櫻葉会長が送ってくれた手紙にプライベート用の連絡先が書かれていた。
それを取り出し電話をかけると数コールののちに電話がつながった。
ーもしもし。
ーお忙しいところ恐れ入ります。私、貴船玄哉の息子で征哉と申します。櫻葉会長のお電話でお間違えございませんか?
ーああ、征哉くんか。久しぶりだな。
ーはい。ご無沙汰しております。お元気でお過ごしですか?
ーああ。今はかなり気楽に過ごさせてもらっているよ。時折会社には行くが、史紀が頑張ってくれているから私としては安心しているよ。
ーええ。史紀さんのお話は私にも届いていますよ。新たな事業を拡大したり頑張っているそうですね。
ーははっ。まだまだ征哉くんの足元にも及ばないが、史紀のことを頼むよ。
ーはい。私で力になれることでしたらおまかせください
ーそれで今日は一体どうしたんだ? こちらにかけてくるなんて、初めてじゃないか?
ーはい。実はとても大事な話があって、ご連絡いたしました次第です。
私の声が変わったことに気づいたのか、櫻葉会長の方の空気が変わったのが電話口でもよくわかった。
ーどうした? 何か大変なことでもあったのか?
ー本来ならば、電話などではなくお会いしてお話しするべき案件なのですが、まずはこちらで失礼します。実は、櫻葉会長の息子さんと思われる人物が見つかりました。
ーな――っ、それは本当か? どこだ? どこにいるんだ?
ー櫻葉会長、落ち着いてください。
ーああ、すまない。つい……。
ーいえ、お気持ちはわかります。実は、彼と縁があって一ヶ月ほど前から私の家で暮らしているのです。
ーえっ? 征哉くんの家に? どうしてそんなことに?
ーはい。実は――
ひかるが病院から誘拐されてから、施設で育ったこと。
ある店に引き取られて奴隷のような生活を送っていたこと。
ひと月ほど前に母を庇って事故に遭い、ひかるが一生歩けないと診断されたこと。
その後、ひかるを引き取り我が家で世話をしながらリハビリを頑張っていること。
それらをかい摘んで伝えると最初は静かに聞いていた櫻葉会長だったが、電話口からすすり泣きのようなものを感じた。
ー櫻葉会長、大丈夫ですか?
ーああ。先日、磯山先生が我が家に来られた時から、もしかしたら息子が見つかったのかもしれないという仄かな期待はしていたんだ。だが、今までも息子に似ている人がいるという情報に期待しては裏切られていたから、期待することを諦めていたんだ。だが、今度こそ本当なのだな……。
ーはい。櫻葉会長の息子さんが誘拐された当時着ていた服も、彼が着ていたものだという証言もありますし、何よりあの三つ並んだホクロもありますよ。間違いないとは思いますが、もし気になるようでしたらDNA鑑定もしてはっきりさせても構いません。
ーいや、征哉くんがそこまで言ってくれるんだ。間違いはないだろう。あの、それで……息子には会わせてもらえるだろうか? もし、彼が混乱するというのなら、父親だと名乗らなくてもいいんだ。ただ元気でいる姿が見たい。
ー実は、櫻葉会長にお話しする前に彼にはもう話をしました。
ーえっ? 本当に?
ーはい。彼はずっと自分が捨てられたと聞かされていたので、最初は困惑しているようでしたが、自分が無理やり病院から連れ出されて、櫻葉会長が今でも彼を探しているという話を伝えたら、会ってみたいと言っていましたよ。
ー――っ!!! そうか……。ああ、なんて優しい子なのだろうな……。
ーええ、本当に。母が申しておりましたよ、彼が優しい麻友子さんによく似ていると。
ーま、ゆこに……。そうか……ありがとう。
ーいつ頃、お会いになりますか? 彼が今はあまり動けない状況ですので、我が家にお越しいただくことになりますが。
ー私はいつでも構わない。征哉くんの都合に合わせよう。
ーそれでは明後日の午後でもよろしいですか?
ーああ、わかった。息子への贈り物を用意しても構わないか?
ーええ。彼も喜びます。それではお待ちしております。何かあればいつでもご連絡ください。
櫻葉会長の声、本当に嬉しそうだった。
生まれてすぐに離れて18年ぶりに会うのだからな。
その間、ずっとひかるのことを忘れずに過ごしてきたわけか……。
ひかるとの仲は流石に電話で話すわけにはいかなかった。
明後日、直接会って許しをいただくとしよう。
まずは親子の対面をさせてからだな。
「わかりました」
ひかるの髪にキスを贈り、私は自室に向かった。
それにしても櫻葉会長とこんな縁で繋がることになるとは思ってもみなかったな。
櫻葉会長はどんな反応をするだろうか。
やはり緊張するな。
父が亡くなった時に、櫻葉会長が送ってくれた手紙にプライベート用の連絡先が書かれていた。
それを取り出し電話をかけると数コールののちに電話がつながった。
ーもしもし。
ーお忙しいところ恐れ入ります。私、貴船玄哉の息子で征哉と申します。櫻葉会長のお電話でお間違えございませんか?
ーああ、征哉くんか。久しぶりだな。
ーはい。ご無沙汰しております。お元気でお過ごしですか?
ーああ。今はかなり気楽に過ごさせてもらっているよ。時折会社には行くが、史紀が頑張ってくれているから私としては安心しているよ。
ーええ。史紀さんのお話は私にも届いていますよ。新たな事業を拡大したり頑張っているそうですね。
ーははっ。まだまだ征哉くんの足元にも及ばないが、史紀のことを頼むよ。
ーはい。私で力になれることでしたらおまかせください
ーそれで今日は一体どうしたんだ? こちらにかけてくるなんて、初めてじゃないか?
ーはい。実はとても大事な話があって、ご連絡いたしました次第です。
私の声が変わったことに気づいたのか、櫻葉会長の方の空気が変わったのが電話口でもよくわかった。
ーどうした? 何か大変なことでもあったのか?
ー本来ならば、電話などではなくお会いしてお話しするべき案件なのですが、まずはこちらで失礼します。実は、櫻葉会長の息子さんと思われる人物が見つかりました。
ーな――っ、それは本当か? どこだ? どこにいるんだ?
ー櫻葉会長、落ち着いてください。
ーああ、すまない。つい……。
ーいえ、お気持ちはわかります。実は、彼と縁があって一ヶ月ほど前から私の家で暮らしているのです。
ーえっ? 征哉くんの家に? どうしてそんなことに?
ーはい。実は――
ひかるが病院から誘拐されてから、施設で育ったこと。
ある店に引き取られて奴隷のような生活を送っていたこと。
ひと月ほど前に母を庇って事故に遭い、ひかるが一生歩けないと診断されたこと。
その後、ひかるを引き取り我が家で世話をしながらリハビリを頑張っていること。
それらをかい摘んで伝えると最初は静かに聞いていた櫻葉会長だったが、電話口からすすり泣きのようなものを感じた。
ー櫻葉会長、大丈夫ですか?
ーああ。先日、磯山先生が我が家に来られた時から、もしかしたら息子が見つかったのかもしれないという仄かな期待はしていたんだ。だが、今までも息子に似ている人がいるという情報に期待しては裏切られていたから、期待することを諦めていたんだ。だが、今度こそ本当なのだな……。
ーはい。櫻葉会長の息子さんが誘拐された当時着ていた服も、彼が着ていたものだという証言もありますし、何よりあの三つ並んだホクロもありますよ。間違いないとは思いますが、もし気になるようでしたらDNA鑑定もしてはっきりさせても構いません。
ーいや、征哉くんがそこまで言ってくれるんだ。間違いはないだろう。あの、それで……息子には会わせてもらえるだろうか? もし、彼が混乱するというのなら、父親だと名乗らなくてもいいんだ。ただ元気でいる姿が見たい。
ー実は、櫻葉会長にお話しする前に彼にはもう話をしました。
ーえっ? 本当に?
ーはい。彼はずっと自分が捨てられたと聞かされていたので、最初は困惑しているようでしたが、自分が無理やり病院から連れ出されて、櫻葉会長が今でも彼を探しているという話を伝えたら、会ってみたいと言っていましたよ。
ー――っ!!! そうか……。ああ、なんて優しい子なのだろうな……。
ーええ、本当に。母が申しておりましたよ、彼が優しい麻友子さんによく似ていると。
ーま、ゆこに……。そうか……ありがとう。
ーいつ頃、お会いになりますか? 彼が今はあまり動けない状況ですので、我が家にお越しいただくことになりますが。
ー私はいつでも構わない。征哉くんの都合に合わせよう。
ーそれでは明後日の午後でもよろしいですか?
ーああ、わかった。息子への贈り物を用意しても構わないか?
ーええ。彼も喜びます。それではお待ちしております。何かあればいつでもご連絡ください。
櫻葉会長の声、本当に嬉しそうだった。
生まれてすぐに離れて18年ぶりに会うのだからな。
その間、ずっとひかるのことを忘れずに過ごしてきたわけか……。
ひかるとの仲は流石に電話で話すわけにはいかなかった。
明後日、直接会って許しをいただくとしよう。
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