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真実を話そう
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<side征哉>
ひかるに父親がいる。
しかも、あの櫻葉グループの会長だとは。
両親ともに美形だと評判だったから、ひかるのあの可愛らしい顔も納得だ。
ひかるはきっと喜ぶだろうな。
ずっと家族に飢えていたのだから。
私もひかるに本当の親が見つかったことは嬉しいし、すぐにでも会わせてやりたい。
それは本心だ。
だが、櫻葉会長が私とひかるの仲を認めてくれるかどうか……。
不安材料はそれだけだな。
どれだけ反対されても私はひかるを手放さないし、離れることを選択などしないが、父親と出会ってすぐに私と父親との板挟みにさせるのは可哀想だ。
櫻葉会長はかなり前衛的な方だから、男同士だからと言って反対することはないと思うが、それがずっと探し続けてきた息子だったら、しかも相手が私のような一回り以上も年上の男だったら流石によくは思わないかもしれない。
はぁーっ。
どうするかな。
それでも、ひかるに父親の存在を打ち明けないという考えは毛頭ない。
とにかくひかるに話してから考えよう。
ひかるがもし、父親に反対されても私と一緒にいたいと望んでくれるなら私は必死に戦うだけだ。
「ただいま」
「あっ、お帰りなさい! 征哉さん!」
「ひかる、ただいま。今は何していたんだ?」
「今、お母さんに編み物を教えてもらってたんです。出来上がったら、征哉さん……もらってくれますか?」
「ひかるの手編みか? もちろんだよ!!」
「ふふっ。よかったぁ」
ひかるは本当に可愛い。
私は絶対にこの笑顔をずっと守って見せる。
「征哉、どうしたの? なんだか疲れた顔しているけど、そんなに仕事忙しかったの?」
「えっ、いや。そんなことないよ」
「そう?」
やはり母親だな。
私が悩んでいるとすぐに気づかれてしまう。
「ひかる、母さん。大事な話があるんだ」
私の真剣な表情にひかるも、母も静かに私を見つめていた。
「本当はひかるだけにまずは話をしようかと思っていたんだが、私たちは家族だから母さんにも一緒に話を聞いてもらおうと思うんだ。ひかる、いいかな?」
ひかるは母をじっと見つめると、
「お母さん、一緒に征哉さんの話を聞いてください」
と震える声で言っていた。
きっと私の表情によからぬことを想像してしまったのかも知れない。
私は急いでひかるを抱きしめながら、
「ひかる、ごめん。怖がらせたな。だが違うんだ。ひかるにとっていい話なんだよ。だから安心してくれ」
と安心させるように告げた。
「僕にとって、いい話? それってどういうお話ですか?」
「心を落ち着けて聞いてほしい」
私はひかるの手を握りながら、さっき磯山先生から伺った話を始めた。
「実は、ひかるの本当の親がわかったんだ」
「えっ……僕の、本当の親? 僕を施設に捨てていった親ですか?」
「それが間違いだったんだ。ひかるは愛情たっぷりな両親の間に生まれたが、生まれてすぐに病院から誘拐されたんだ」
「えっ……」
「――っ!! 誘拐、って征哉、それ本当なの?」
「ああ、間違いない。しかも、誘拐したのはあの施設長の妻だった」
「う、そ……っ」
「ひかるっ!!」
ひかるの身体から力が抜けて私に倒れ込んでくる。
慌てて抱き止めるとひかるの顔が青褪めている。
無理もない。
トラウマを植え付けるほどひかるを罵っていたあの女が、自分を両親から引き離した誘拐犯だったのだからな。
「ひかる、一旦ここで話をやめておこうか? 少し休憩しよう」
「い、いいえ。大丈夫です。話を聞かせてください」
「わかった。だが、無理はしないでくれ」
「あの、じゃあこのまま抱きしめていてもらえますか?」
「ああ、もちろんだ」
私はひかるを胸に抱きながら、話の続きを始めた。
「今回のことであの施設を調べるうちに、あの施設にあった隠し金庫にひかるが病院から誘拐された当時に着ていた服が見つかって、ひかるが間違いなくその子だと認定されたんだ」
「それで、そのひかるくんの実の両親は一体どこの誰なの?」
「それがな……櫻葉グループの会長夫妻だったんだ」
「えっ!!! 櫻葉さんの???」
母が驚くのも無理はない。
櫻葉会長夫妻とは面識もあったし、奥さんが亡くなった時は母も少し塞ぎ込んでいたくらいには仲が良かったのだから。
「お母さん、その人たちを知っているんですか?」
「ええ。昔はよく会っていたわ。だからかしら。ひかるくんと初めて会った時、どこかで会ったような気がしたのよ。そう言われれば、目元が麻友子さんに似ているわ」
ひかるを見つめる母の目が少し潤んでいる。
きっと奥さんのことを思い出しているのだろう。
「僕、似ているんですか?」
「ええ。顔だけじゃなくて、気配りもできて優しいところもよく似ているわ。麻友子さんはとっても綺麗で優しい人だったから、亡くなった時はたくさんの人が悲しんでいたわ」
「えっ……亡くなったんですか?」
「そうなんだ。残念ながらひかるの本当の母親は亡くなっているが、父親はまだ元気だよ。今でもずっとひかるの行方を探し続けているそうだよ」
「お父さんが……」
「ひかるがもし会いたいと願うなら、会わせてやりたいと思うが……ひかるはどう思う?」
「僕……びっくりしすぎて、何が何だかわからないんですけど……でも、会ってみたいです」
そう思うのは当然だな。
捨てられたのなら会いたくないと思っても仕方ないが、誘拐されたのなら話は別だ。
しかも今もまだひかるのことを探しているのだからな。
「じゃあ、櫻葉会長に話をしてみよう。会う時は私の一緒にいてもいいか?」
「はい。一緒にいてください。僕、お父さんに征哉さんのこと大事な人だって紹介したいです」
「――っ!!! ひかるっ!!!」
ああ、私は何て幸せなんだろう。
さっきまでの不安も何もかも消し去ってくれる。
やっぱり私にはひかるが必要なんだ。
ひかるに父親がいる。
しかも、あの櫻葉グループの会長だとは。
両親ともに美形だと評判だったから、ひかるのあの可愛らしい顔も納得だ。
ひかるはきっと喜ぶだろうな。
ずっと家族に飢えていたのだから。
私もひかるに本当の親が見つかったことは嬉しいし、すぐにでも会わせてやりたい。
それは本心だ。
だが、櫻葉会長が私とひかるの仲を認めてくれるかどうか……。
不安材料はそれだけだな。
どれだけ反対されても私はひかるを手放さないし、離れることを選択などしないが、父親と出会ってすぐに私と父親との板挟みにさせるのは可哀想だ。
櫻葉会長はかなり前衛的な方だから、男同士だからと言って反対することはないと思うが、それがずっと探し続けてきた息子だったら、しかも相手が私のような一回り以上も年上の男だったら流石によくは思わないかもしれない。
はぁーっ。
どうするかな。
それでも、ひかるに父親の存在を打ち明けないという考えは毛頭ない。
とにかくひかるに話してから考えよう。
ひかるがもし、父親に反対されても私と一緒にいたいと望んでくれるなら私は必死に戦うだけだ。
「ただいま」
「あっ、お帰りなさい! 征哉さん!」
「ひかる、ただいま。今は何していたんだ?」
「今、お母さんに編み物を教えてもらってたんです。出来上がったら、征哉さん……もらってくれますか?」
「ひかるの手編みか? もちろんだよ!!」
「ふふっ。よかったぁ」
ひかるは本当に可愛い。
私は絶対にこの笑顔をずっと守って見せる。
「征哉、どうしたの? なんだか疲れた顔しているけど、そんなに仕事忙しかったの?」
「えっ、いや。そんなことないよ」
「そう?」
やはり母親だな。
私が悩んでいるとすぐに気づかれてしまう。
「ひかる、母さん。大事な話があるんだ」
私の真剣な表情にひかるも、母も静かに私を見つめていた。
「本当はひかるだけにまずは話をしようかと思っていたんだが、私たちは家族だから母さんにも一緒に話を聞いてもらおうと思うんだ。ひかる、いいかな?」
ひかるは母をじっと見つめると、
「お母さん、一緒に征哉さんの話を聞いてください」
と震える声で言っていた。
きっと私の表情によからぬことを想像してしまったのかも知れない。
私は急いでひかるを抱きしめながら、
「ひかる、ごめん。怖がらせたな。だが違うんだ。ひかるにとっていい話なんだよ。だから安心してくれ」
と安心させるように告げた。
「僕にとって、いい話? それってどういうお話ですか?」
「心を落ち着けて聞いてほしい」
私はひかるの手を握りながら、さっき磯山先生から伺った話を始めた。
「実は、ひかるの本当の親がわかったんだ」
「えっ……僕の、本当の親? 僕を施設に捨てていった親ですか?」
「それが間違いだったんだ。ひかるは愛情たっぷりな両親の間に生まれたが、生まれてすぐに病院から誘拐されたんだ」
「えっ……」
「――っ!! 誘拐、って征哉、それ本当なの?」
「ああ、間違いない。しかも、誘拐したのはあの施設長の妻だった」
「う、そ……っ」
「ひかるっ!!」
ひかるの身体から力が抜けて私に倒れ込んでくる。
慌てて抱き止めるとひかるの顔が青褪めている。
無理もない。
トラウマを植え付けるほどひかるを罵っていたあの女が、自分を両親から引き離した誘拐犯だったのだからな。
「ひかる、一旦ここで話をやめておこうか? 少し休憩しよう」
「い、いいえ。大丈夫です。話を聞かせてください」
「わかった。だが、無理はしないでくれ」
「あの、じゃあこのまま抱きしめていてもらえますか?」
「ああ、もちろんだ」
私はひかるを胸に抱きながら、話の続きを始めた。
「今回のことであの施設を調べるうちに、あの施設にあった隠し金庫にひかるが病院から誘拐された当時に着ていた服が見つかって、ひかるが間違いなくその子だと認定されたんだ」
「それで、そのひかるくんの実の両親は一体どこの誰なの?」
「それがな……櫻葉グループの会長夫妻だったんだ」
「えっ!!! 櫻葉さんの???」
母が驚くのも無理はない。
櫻葉会長夫妻とは面識もあったし、奥さんが亡くなった時は母も少し塞ぎ込んでいたくらいには仲が良かったのだから。
「お母さん、その人たちを知っているんですか?」
「ええ。昔はよく会っていたわ。だからかしら。ひかるくんと初めて会った時、どこかで会ったような気がしたのよ。そう言われれば、目元が麻友子さんに似ているわ」
ひかるを見つめる母の目が少し潤んでいる。
きっと奥さんのことを思い出しているのだろう。
「僕、似ているんですか?」
「ええ。顔だけじゃなくて、気配りもできて優しいところもよく似ているわ。麻友子さんはとっても綺麗で優しい人だったから、亡くなった時はたくさんの人が悲しんでいたわ」
「えっ……亡くなったんですか?」
「そうなんだ。残念ながらひかるの本当の母親は亡くなっているが、父親はまだ元気だよ。今でもずっとひかるの行方を探し続けているそうだよ」
「お父さんが……」
「ひかるがもし会いたいと願うなら、会わせてやりたいと思うが……ひかるはどう思う?」
「僕……びっくりしすぎて、何が何だかわからないんですけど……でも、会ってみたいです」
そう思うのは当然だな。
捨てられたのなら会いたくないと思っても仕方ないが、誘拐されたのなら話は別だ。
しかも今もまだひかるのことを探しているのだからな。
「じゃあ、櫻葉会長に話をしてみよう。会う時は私の一緒にいてもいいか?」
「はい。一緒にいてください。僕、お父さんに征哉さんのこと大事な人だって紹介したいです」
「――っ!!! ひかるっ!!!」
ああ、私は何て幸せなんだろう。
さっきまでの不安も何もかも消し去ってくれる。
やっぱり私にはひかるが必要なんだ。
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