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理性が試される
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「尚孝さん、明日は朝からデートに行きましょうか」
「デート! 嬉しいです。どこか行きたいところがありますか?」
「そうですね、この前尚孝さんが観たいと言っていた映画をみて、洋服も買いに行きたいと思っています。途中でどこかでランチをしようと思っていますが、何か食べたいものはありますか?」
「あ、僕はあまりお店に詳しくなくて……唯人さんの好きなお店に連れて行ってください」
「ふふっ。じゃあ、気に入っているお店があるのでそこを予約しておきますね」
一応目星をつけていた店に連絡を入れるとすぐに席を確保してくれた。
これで尚孝さんと楽しいデートができるな。
少し手加減しておいたおかげで今日は尚孝さんも朝から出かけられそうだ。
たっぷりと愛しすぎると色気ただ漏れで変なのが寄ってくることになるからその点は気をつけなければいけない。
映画を見ながらポップコーンが食べたいと話していた尚孝さんに合わせて、朝食も今日は少なめにしておいた。
さりげなくペアだとわかる服に着替えて、今日はデート用のスポーツカーに乗って目的地に出かけた。
セキュリティーのしっかりした高級車専用駐車場に車を止め、映画館に向かう。
尚孝さんが観たいと言っていたのは、演技力に定評のある俳優が揃った洋画ミステリー。
恋愛の要素もミステリーを邪魔しない程度に加えられていて、面白いと評判の作品だ。
チケットは前もって購入してある。
席はこの映画館にだけ設置されているプライベートルーム型のV.I.P席。
フットレスト付きの高級ソファーに二人でゆったりと座って、映画を見ることができる。
「唯人さん、何にしますか?」
「私はアイスコーヒーにします。尚孝さんはカフェラテにしますか?」
「はい。僕が好きなのを覚えていてくれたんですね」
「もちろん。ポップコーンは塩とキャラメルが両方入っているのをシェアして食べましょう」
周りからの視線を感じるが、尚孝さんはあまり気にしてしない様子。
きっとこういう視線をいつも浴びていたんだろう。
これだけ威圧を放っていてもよからぬ視線を浴びせてくる奴がいるのに……。
やっぱり人目の多い場所に尚孝さんを一人で行かせることはやめた方がいいな。
頼んだものをトレイに乗せ、受付を通ると
「ご利用ありがとうございます。お席はあちらの扉からお入りください」
と案内された。
お礼を言って、尚孝さんの手を取ってそちらの扉に向かうと
「あれ? こっちなんですか?」
と不思議そうに尋ねられる。
みんなと違う入り口なことに気づいたのだろう。
「大丈夫ですよ、こっちで合ってます」
安心させて、扉をあけ緩やかなスロープをあがっていくと、広々とした部屋が現れた。
「わぁっ!」
「ふふっ。気に入りましたか?」
「こんなすごい部屋があるなんて思いませんでした」
「尚孝さんとの映画デートを誰にも邪魔されたくなかったのでこの席をとっておいたんです。さぁ、座りましょう」
ソファーに座らせると、その座り心地のよさに嬉しそうな声をあげる。
ああ、本当に私の尚孝さんは可愛い。
ソファーの両サイドには高性能なスピーカーが設置されている。
臨場感たっぷりに映画を楽しむことができるだろう。
やっぱり周りに誰もいないのはありがたい。
「ここなら、個室ですし一花くんも貴船さんとの映画を楽しめそうですね」
「そうですね。私も初めて利用しましたけど、落ち着いた雰囲気で一花さんにも良さそうです。会長に話をしてみましょう」
楽しいことを一花さんとも共有したいと思えるほど、尚孝さんの中で大切な友人になっているのだろうな。
「唯人さん、あーんしてください」
少し一花さんに嫉妬めいた感情を覚えていると、突然尚孝さんにそんな声をかけられる。
びっくりして口を開けると、尚孝さんが甘いキャラメル味のポップコーンを食べさせてくれた。
「ふふっ。美味しいですか?」
「ええ。キャラメル味は初めてですが、尚孝さんが食べさせてくれたから最高に美味しいですよ」
「よかった。実は僕もキャラメル味は初めてなんです……唯人さん、食べさせてください……」
「――っ、ええ。喜んで」
摘んで尚孝さんの口に運ぶと、私の指もろともパクリと咥えてくれる。
「ふふっ。指まで食べちゃいました。でも、すっごく美味しいです」
「くっ――!!」
私の愚かな嫉妬などすぐに霧散させてくれる私の尚孝さんは、無邪気に私の理性を試してくる。
本当に個室にしておいてよかったと心から思った。
「デート! 嬉しいです。どこか行きたいところがありますか?」
「そうですね、この前尚孝さんが観たいと言っていた映画をみて、洋服も買いに行きたいと思っています。途中でどこかでランチをしようと思っていますが、何か食べたいものはありますか?」
「あ、僕はあまりお店に詳しくなくて……唯人さんの好きなお店に連れて行ってください」
「ふふっ。じゃあ、気に入っているお店があるのでそこを予約しておきますね」
一応目星をつけていた店に連絡を入れるとすぐに席を確保してくれた。
これで尚孝さんと楽しいデートができるな。
少し手加減しておいたおかげで今日は尚孝さんも朝から出かけられそうだ。
たっぷりと愛しすぎると色気ただ漏れで変なのが寄ってくることになるからその点は気をつけなければいけない。
映画を見ながらポップコーンが食べたいと話していた尚孝さんに合わせて、朝食も今日は少なめにしておいた。
さりげなくペアだとわかる服に着替えて、今日はデート用のスポーツカーに乗って目的地に出かけた。
セキュリティーのしっかりした高級車専用駐車場に車を止め、映画館に向かう。
尚孝さんが観たいと言っていたのは、演技力に定評のある俳優が揃った洋画ミステリー。
恋愛の要素もミステリーを邪魔しない程度に加えられていて、面白いと評判の作品だ。
チケットは前もって購入してある。
席はこの映画館にだけ設置されているプライベートルーム型のV.I.P席。
フットレスト付きの高級ソファーに二人でゆったりと座って、映画を見ることができる。
「唯人さん、何にしますか?」
「私はアイスコーヒーにします。尚孝さんはカフェラテにしますか?」
「はい。僕が好きなのを覚えていてくれたんですね」
「もちろん。ポップコーンは塩とキャラメルが両方入っているのをシェアして食べましょう」
周りからの視線を感じるが、尚孝さんはあまり気にしてしない様子。
きっとこういう視線をいつも浴びていたんだろう。
これだけ威圧を放っていてもよからぬ視線を浴びせてくる奴がいるのに……。
やっぱり人目の多い場所に尚孝さんを一人で行かせることはやめた方がいいな。
頼んだものをトレイに乗せ、受付を通ると
「ご利用ありがとうございます。お席はあちらの扉からお入りください」
と案内された。
お礼を言って、尚孝さんの手を取ってそちらの扉に向かうと
「あれ? こっちなんですか?」
と不思議そうに尋ねられる。
みんなと違う入り口なことに気づいたのだろう。
「大丈夫ですよ、こっちで合ってます」
安心させて、扉をあけ緩やかなスロープをあがっていくと、広々とした部屋が現れた。
「わぁっ!」
「ふふっ。気に入りましたか?」
「こんなすごい部屋があるなんて思いませんでした」
「尚孝さんとの映画デートを誰にも邪魔されたくなかったのでこの席をとっておいたんです。さぁ、座りましょう」
ソファーに座らせると、その座り心地のよさに嬉しそうな声をあげる。
ああ、本当に私の尚孝さんは可愛い。
ソファーの両サイドには高性能なスピーカーが設置されている。
臨場感たっぷりに映画を楽しむことができるだろう。
やっぱり周りに誰もいないのはありがたい。
「ここなら、個室ですし一花くんも貴船さんとの映画を楽しめそうですね」
「そうですね。私も初めて利用しましたけど、落ち着いた雰囲気で一花さんにも良さそうです。会長に話をしてみましょう」
楽しいことを一花さんとも共有したいと思えるほど、尚孝さんの中で大切な友人になっているのだろうな。
「唯人さん、あーんしてください」
少し一花さんに嫉妬めいた感情を覚えていると、突然尚孝さんにそんな声をかけられる。
びっくりして口を開けると、尚孝さんが甘いキャラメル味のポップコーンを食べさせてくれた。
「ふふっ。美味しいですか?」
「ええ。キャラメル味は初めてですが、尚孝さんが食べさせてくれたから最高に美味しいですよ」
「よかった。実は僕もキャラメル味は初めてなんです……唯人さん、食べさせてください……」
「――っ、ええ。喜んで」
摘んで尚孝さんの口に運ぶと、私の指もろともパクリと咥えてくれる。
「ふふっ。指まで食べちゃいました。でも、すっごく美味しいです」
「くっ――!!」
私の愚かな嫉妬などすぐに霧散させてくれる私の尚孝さんは、無邪気に私の理性を試してくる。
本当に個室にしておいてよかったと心から思った。
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