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心配しないわけがない <side智>
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「わぁーっ! 本当にたくさん並んでますね!」
助手席に座る暁の驚く声に目を向ければ、アメリカではほとんど見かけることのない行列ができていた。
確かにこの列に杉山さん一人を並ばせるなんて絶対にさせられない。
透也さんが私に任せるのもわかる。
だが、考えてみたらこの列に目立つこの二人を連れて並ぶのか……。
これは相当神経を集中させておかないとな。
駐車場に車を止めて、暁を降ろしている間に杉山さんが降りようとする。
一人で先に並びに行こうとでもしそうな雰囲気に慌てて
「杉山さん、一緒に行きましょう」
と声をかけると、透也さんの一人で買いに行ってはいけないと言われていたことを思い出したのか、
「そうですね」
とその場に立ち止まってくれてホッとした。
行列は私たちの前に十五人ほど。
限定個数での販売だそうだが、一人が購入できる個数が決まっているため、この分なら目的のものは買えそうだ。
「fascinate、東京のお店よりも可愛いですね」
「そうなんだよ。もうすっかりお気に入りで、大夢くんもここのケーキが好きだからよく来るんだ」
「二人で、ですか?」
「いやいや、それは祥也さんが許さないよ。透也以上に心配性だから、必ず一緒についてきてくれるんだよ。透也がいる時に四人できたこともあるよ」
「ケーキ屋さんなら、心配はなさそうですけどね」
「そうだろう? 俺もそういうんだけど透也と最初に会った時に、変なのに絡まれてるところを見られて、しかも助けてもらってるから、あんまり強くは言えなくて……。でも、本当にここなら全然安心なんだけどね」
「田辺がそんなに心配性だなんて僕知らなかったですよ」
二人で楽しそうに話をしているが、ここに高遠さんと杉山さんを二人で行かせるなんて、おそらくここで何十年住んだとしてもありえないな。
現に今だって、本人たちは話に夢中で全然気づいていないけれど、あちらこちらから暁と杉山さんを狙う視線が降り注いでるのがよくわかる。
『みて! あの子たち、日本人かな? すっごく可愛い!』
『あ、あの片方の子はたまに見かける子だよ! でももう一人の子は初めてかも』
『ああ、わかる! いつも一緒に来てる子、あの子犬みたいな子でしょう?』
『そうそう。でも今日もさらに可愛いのを連れてるよね!』
『やっぱり可愛い子には可愛いのが集まるのかな?』
『ねぇ、でもちょっと見て。あの子たち、スーツ着てるよ』
『あ、確かに! じゃああの子たちって大学生じゃないってこと?』
『いつも私服だったから大学生だと思ってた』
『いやいや、あっちの子は確実にJuniorか、Seniorでしょ?』
『でも、ほら日本人って若く見えるっていうし』
『一緒にいるイケメンはなんだろう? もしかして三兄弟とか?』
『顔似てないし。それに初めて見たじゃん』
『そっか、じゃあどっちかの彼氏、とか?』
『きゃーっ! それ、最高!! イケメンと可愛いのがくっつくとか最高だよ』
なんだか面白おかしく話しているようだが、二人には害はなさそうだからいいか。
それよりも気になるのは、二組前に並んでいる女性連れの男。
彼女と話しながらもチラチラと暁と杉山さんに視線を向けている。
女性連れで列に並んでおきながら、二人に心奪われるなんて連れている女性に対しても失礼なのだが、それくらいこの二人が魅力的に映っているということなのだろう。
とりあえずあいつは危険人物として、様子をチェックしておくとしよう。
日本にある店の支店だけあって、行列に関するルールはしっかりとできているようで、三組ずつ中に入ることができるようだ。
あの男と同じグループになるのはいただけないが、仕方がない。
『次の三組さま、どうぞ中にお入りください』
スタッフに声をかけられ、私たちは案内に従って中に入った。
「わぁー、中も可愛い!」
「暁くんも絶対に気にいると思ったよ」
「大智さんが仰ってた限定のお菓子ってどれですか?」
「あれ! キャラメルサンド」
「ああー、すっごく美味しそう!!」
「だろう? すごく人気なんだよ。うちの祖母は甘いものに目がなくてね。食べさせたいと思っていたから、持っていってもらえることになって嬉しいよ」
杉山さんは妹さんに優しいと思っていたけれど、おばあさまにも優しいんだな。
杉山さんからのお菓子だといって持っていったら、きっと喜ばれるだろうな。
「限定品のお菓子以外にも美味しいケーキがいっぱいだから、一緒についてきてくれたお礼にご馳走するよ」
「えっ、そんな……申し訳ないです」
「いいから。好きなのを選んで。小田切先生の分もだよ」
暁は申し訳なさそうに私を見るが、ここは杉山さんの気持ちをありがたく受け取っておいた方がよさそうだ。
この件は後で透也さんに報告しておこう。
助手席に座る暁の驚く声に目を向ければ、アメリカではほとんど見かけることのない行列ができていた。
確かにこの列に杉山さん一人を並ばせるなんて絶対にさせられない。
透也さんが私に任せるのもわかる。
だが、考えてみたらこの列に目立つこの二人を連れて並ぶのか……。
これは相当神経を集中させておかないとな。
駐車場に車を止めて、暁を降ろしている間に杉山さんが降りようとする。
一人で先に並びに行こうとでもしそうな雰囲気に慌てて
「杉山さん、一緒に行きましょう」
と声をかけると、透也さんの一人で買いに行ってはいけないと言われていたことを思い出したのか、
「そうですね」
とその場に立ち止まってくれてホッとした。
行列は私たちの前に十五人ほど。
限定個数での販売だそうだが、一人が購入できる個数が決まっているため、この分なら目的のものは買えそうだ。
「fascinate、東京のお店よりも可愛いですね」
「そうなんだよ。もうすっかりお気に入りで、大夢くんもここのケーキが好きだからよく来るんだ」
「二人で、ですか?」
「いやいや、それは祥也さんが許さないよ。透也以上に心配性だから、必ず一緒についてきてくれるんだよ。透也がいる時に四人できたこともあるよ」
「ケーキ屋さんなら、心配はなさそうですけどね」
「そうだろう? 俺もそういうんだけど透也と最初に会った時に、変なのに絡まれてるところを見られて、しかも助けてもらってるから、あんまり強くは言えなくて……。でも、本当にここなら全然安心なんだけどね」
「田辺がそんなに心配性だなんて僕知らなかったですよ」
二人で楽しそうに話をしているが、ここに高遠さんと杉山さんを二人で行かせるなんて、おそらくここで何十年住んだとしてもありえないな。
現に今だって、本人たちは話に夢中で全然気づいていないけれど、あちらこちらから暁と杉山さんを狙う視線が降り注いでるのがよくわかる。
『みて! あの子たち、日本人かな? すっごく可愛い!』
『あ、あの片方の子はたまに見かける子だよ! でももう一人の子は初めてかも』
『ああ、わかる! いつも一緒に来てる子、あの子犬みたいな子でしょう?』
『そうそう。でも今日もさらに可愛いのを連れてるよね!』
『やっぱり可愛い子には可愛いのが集まるのかな?』
『ねぇ、でもちょっと見て。あの子たち、スーツ着てるよ』
『あ、確かに! じゃああの子たちって大学生じゃないってこと?』
『いつも私服だったから大学生だと思ってた』
『いやいや、あっちの子は確実にJuniorか、Seniorでしょ?』
『でも、ほら日本人って若く見えるっていうし』
『一緒にいるイケメンはなんだろう? もしかして三兄弟とか?』
『顔似てないし。それに初めて見たじゃん』
『そっか、じゃあどっちかの彼氏、とか?』
『きゃーっ! それ、最高!! イケメンと可愛いのがくっつくとか最高だよ』
なんだか面白おかしく話しているようだが、二人には害はなさそうだからいいか。
それよりも気になるのは、二組前に並んでいる女性連れの男。
彼女と話しながらもチラチラと暁と杉山さんに視線を向けている。
女性連れで列に並んでおきながら、二人に心奪われるなんて連れている女性に対しても失礼なのだが、それくらいこの二人が魅力的に映っているということなのだろう。
とりあえずあいつは危険人物として、様子をチェックしておくとしよう。
日本にある店の支店だけあって、行列に関するルールはしっかりとできているようで、三組ずつ中に入ることができるようだ。
あの男と同じグループになるのはいただけないが、仕方がない。
『次の三組さま、どうぞ中にお入りください』
スタッフに声をかけられ、私たちは案内に従って中に入った。
「わぁー、中も可愛い!」
「暁くんも絶対に気にいると思ったよ」
「大智さんが仰ってた限定のお菓子ってどれですか?」
「あれ! キャラメルサンド」
「ああー、すっごく美味しそう!!」
「だろう? すごく人気なんだよ。うちの祖母は甘いものに目がなくてね。食べさせたいと思っていたから、持っていってもらえることになって嬉しいよ」
杉山さんは妹さんに優しいと思っていたけれど、おばあさまにも優しいんだな。
杉山さんからのお菓子だといって持っていったら、きっと喜ばれるだろうな。
「限定品のお菓子以外にも美味しいケーキがいっぱいだから、一緒についてきてくれたお礼にご馳走するよ」
「えっ、そんな……申し訳ないです」
「いいから。好きなのを選んで。小田切先生の分もだよ」
暁は申し訳なさそうに私を見るが、ここは杉山さんの気持ちをありがたく受け取っておいた方がよさそうだ。
この件は後で透也さんに報告しておこう。
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