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甘いチョコレート
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「昨日の食事会は楽しかったね」
「はい。みなさん、とっても優しくてホッとしました」
「それは暁くんが素直で可愛いからだよ」
「そんなこと言われたことないです――わっ!!」
宇佐美さんにストレートに褒められて恥ずかしくて否定すると、突然後ろからぎゅっと抱きしめられたと思ったら、そのまま抱きかかえられてしまった。
「ど、どうしたんですか?」
「私はいつも言っているだろ、暁が素直で可愛いって。忘れたのか?」
「あっ……」
「ふふっ。小田切さん、誉さんから聞いていた人とは別人みたいですね」
「ああ、私も驚いているよ。小田切がこんなに情熱的で独占欲が強かったとはな」
上田先生がニヤリと智さんに視線を向けると、少し照れながら
「自分でも驚いています。でも、本当に愛する存在ができると変わるんだなと身をもって体験していますよ。それに……私と同じように愛しい人ができて劇的に変わった方を目の当たりにしていますから、変わるのも悪いことではないと思ってますよ」
と上田先生に笑いかけた。
「ははっ。小田切も言うじゃないか。まぁ、そうだな。私も敦己と知り合えてこんなにも自分が恋人に執着すると初めてしったからな」
「僕は嬉しいですよ。誉さんがこんなにも好きになってくれて……ここまで会いにきてくれるんですから」
宇佐美さん、すっごく嬉しそうだ。
昨日、もし上田先生が来てなかったらやっぱり寂しかっただろうからな。
「あっ! あそこだよ! 話してたジェラート屋さん!」
「うわっ、外観からして可愛いですね」
「アイスもね、すっごく美味しくて種類が多いから悩んじゃうよ」
「宇佐美さんは前、何を食べたんですか?」
「えっとね、バニラとストロベリーだったかな。どっちも美味しかったよ」
「二つも食べたんですか? すごいですね!」
「ふふっ。誉さんと半分こしたんだ。暁くんもそうしたらいいよ」
その提案に、智さんに視線を向けると、
「いいね、気になったものを二つ選んで分けて食べよう」
と言ってくれた。
「わぁ! 楽しみです!!」
カランと可愛い音のする扉を智さんが開けてくれて、四人で中に入ると、目の前のショーケースにはたくさんのジェラートが並んでいた。
「うわぁー、どれも美味しそうで悩んじゃうな」
「ふふっ。だよね」
宇佐美さんと一緒にあれが美味しそう! これもいいね! と話をしながら、ようやく二つに絞ることができた。
宇佐美さんはピスタチオとヨーグルト、そして僕はストロベリーとチョコレートに決めた。
すぐに智さんと上田先生がそれぞれ頼んでくれて、店員さんがさっとカップに手際よく入れてくれる。
『Here you are』
差し出されたカップには二種類のアイスと二本のスプーン。
それを見て、カップルと思われたのかもと思って少し照れてしまったけれど、宇佐美さんは当然のようにそれを受け取っていたのでここでは普通のことなのかもと思うことにした。
『Have a sweet weekend!』
扉を開けて出る時に、店員さんからそう声をかけられてやっぱりカップルだと思われたんだと恥ずかしくもあり、嬉しくもある。
やっぱり日本とは違うんだな。
あんなに隠して生きてきたのがバカだったみたい。
高遠さんも言ってたっけ。
日本では窮屈だったって。
こっちにきて田辺のお兄さんと手を繋いで歩いても誰にも何も言われないのが本当に安心するって。
いつか、智さんと一緒にアメリカで暮らすのもいいなぁ。
そんな夢を持ってしまう。
「……き、暁」
「あっ、智さん。ごめんなさい」
「いや、謝ることはないがどうしたんだ? ぼーっとしてたぞ」
「あ、いえ。あの……男同士のカップルでも普通に受け入れられるのって幸せだなって……」
「ああ、さっきの店員か?」
「はい。日本ではバレたら生きていけないと思って必死に隠してきたのが、バカみたいだなって思って……こうやって智さんとくっつきながら一緒に歩いても誰にも指を差されたりしないんだって思ったらいいなって思ったんです」
「暁……アメリカで過ごしたいか?」
「えっ……」
自分がいつかと思っていた夢をさらっと尋ねられて、驚いてしまった。
「暁がアメリカで過ごしたいなら、願いは叶えるよ。仕事ならいくらだってできるし、暁の友人もできたし、なんの障壁もないよ」
「本当に、いいんですか?」
「ああ。暁が自然体でいられる場所で生きていけばいい。私は、暁のいる場所が私のいる場所だから構わないよ」
「智さん……」
こんなふうに言ってくれる人がそばにいてくれたら、どこでだって頑張れそうな気がする。
「ありがとう、智さん……じゃあ、アメリカで過ごしたくなったらその時はお願いします」
「ふふっ。ああ、任せてくれ。ほら、ジェラートが溶けるよ。あーんして」
そう言って差し出された、チョコレートのジェラートは今まで食べたアイスの中で一番美味しかった。
「はい。みなさん、とっても優しくてホッとしました」
「それは暁くんが素直で可愛いからだよ」
「そんなこと言われたことないです――わっ!!」
宇佐美さんにストレートに褒められて恥ずかしくて否定すると、突然後ろからぎゅっと抱きしめられたと思ったら、そのまま抱きかかえられてしまった。
「ど、どうしたんですか?」
「私はいつも言っているだろ、暁が素直で可愛いって。忘れたのか?」
「あっ……」
「ふふっ。小田切さん、誉さんから聞いていた人とは別人みたいですね」
「ああ、私も驚いているよ。小田切がこんなに情熱的で独占欲が強かったとはな」
上田先生がニヤリと智さんに視線を向けると、少し照れながら
「自分でも驚いています。でも、本当に愛する存在ができると変わるんだなと身をもって体験していますよ。それに……私と同じように愛しい人ができて劇的に変わった方を目の当たりにしていますから、変わるのも悪いことではないと思ってますよ」
と上田先生に笑いかけた。
「ははっ。小田切も言うじゃないか。まぁ、そうだな。私も敦己と知り合えてこんなにも自分が恋人に執着すると初めてしったからな」
「僕は嬉しいですよ。誉さんがこんなにも好きになってくれて……ここまで会いにきてくれるんですから」
宇佐美さん、すっごく嬉しそうだ。
昨日、もし上田先生が来てなかったらやっぱり寂しかっただろうからな。
「あっ! あそこだよ! 話してたジェラート屋さん!」
「うわっ、外観からして可愛いですね」
「アイスもね、すっごく美味しくて種類が多いから悩んじゃうよ」
「宇佐美さんは前、何を食べたんですか?」
「えっとね、バニラとストロベリーだったかな。どっちも美味しかったよ」
「二つも食べたんですか? すごいですね!」
「ふふっ。誉さんと半分こしたんだ。暁くんもそうしたらいいよ」
その提案に、智さんに視線を向けると、
「いいね、気になったものを二つ選んで分けて食べよう」
と言ってくれた。
「わぁ! 楽しみです!!」
カランと可愛い音のする扉を智さんが開けてくれて、四人で中に入ると、目の前のショーケースにはたくさんのジェラートが並んでいた。
「うわぁー、どれも美味しそうで悩んじゃうな」
「ふふっ。だよね」
宇佐美さんと一緒にあれが美味しそう! これもいいね! と話をしながら、ようやく二つに絞ることができた。
宇佐美さんはピスタチオとヨーグルト、そして僕はストロベリーとチョコレートに決めた。
すぐに智さんと上田先生がそれぞれ頼んでくれて、店員さんがさっとカップに手際よく入れてくれる。
『Here you are』
差し出されたカップには二種類のアイスと二本のスプーン。
それを見て、カップルと思われたのかもと思って少し照れてしまったけれど、宇佐美さんは当然のようにそれを受け取っていたのでここでは普通のことなのかもと思うことにした。
『Have a sweet weekend!』
扉を開けて出る時に、店員さんからそう声をかけられてやっぱりカップルだと思われたんだと恥ずかしくもあり、嬉しくもある。
やっぱり日本とは違うんだな。
あんなに隠して生きてきたのがバカだったみたい。
高遠さんも言ってたっけ。
日本では窮屈だったって。
こっちにきて田辺のお兄さんと手を繋いで歩いても誰にも何も言われないのが本当に安心するって。
いつか、智さんと一緒にアメリカで暮らすのもいいなぁ。
そんな夢を持ってしまう。
「……き、暁」
「あっ、智さん。ごめんなさい」
「いや、謝ることはないがどうしたんだ? ぼーっとしてたぞ」
「あ、いえ。あの……男同士のカップルでも普通に受け入れられるのって幸せだなって……」
「ああ、さっきの店員か?」
「はい。日本ではバレたら生きていけないと思って必死に隠してきたのが、バカみたいだなって思って……こうやって智さんとくっつきながら一緒に歩いても誰にも指を差されたりしないんだって思ったらいいなって思ったんです」
「暁……アメリカで過ごしたいか?」
「えっ……」
自分がいつかと思っていた夢をさらっと尋ねられて、驚いてしまった。
「暁がアメリカで過ごしたいなら、願いは叶えるよ。仕事ならいくらだってできるし、暁の友人もできたし、なんの障壁もないよ」
「本当に、いいんですか?」
「ああ。暁が自然体でいられる場所で生きていけばいい。私は、暁のいる場所が私のいる場所だから構わないよ」
「智さん……」
こんなふうに言ってくれる人がそばにいてくれたら、どこでだって頑張れそうな気がする。
「ありがとう、智さん……じゃあ、アメリカで過ごしたくなったらその時はお願いします」
「ふふっ。ああ、任せてくれ。ほら、ジェラートが溶けるよ。あーんして」
そう言って差し出された、チョコレートのジェラートは今まで食べたアイスの中で一番美味しかった。
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