恋の織物

四季

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恋の戦い 4

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「そうですか。それでは仕方ありませんね。それでミーナはこの獣に襲われそうになった時に、龍騎士の儀式をしたと言うことですね」

 ダニーの目が座っている。

ーーこ、怖い……ダニーってバロンさんとクレイさんの次に怒らしたらいけない人だったんだ……

「あっ、う、うん。そ、それで、あのブラック、あっ、龍が来てくれて、私達、あの島から脱出出来たの。それで、行き先が分かんなくて空を飛んでいたらブラックがここへ連れて来てくれたの」

「そうでしたか。でも、島で初めにマイシに見つけられてよかったのかもしれませんね。もし他の流刑者達に見つけられたら、今頃どうなっていたか分かりません」

 ダニーが静かな声で言った。

「あっ、それ、えとね。あの島にはマイシしかいないの。他の人達、全員病気が流行って死んでいないの」

「えっ!? ……そ、そうだったんですか。そんな島で、あなたは一人でいたのですね」

 ダニーが言った。ダニーの声はさっきと違って、気をつかった思いが漂っていた。きっとマイシを可哀想に思えたのだと思う。タケルイもさっきから黙りきっているけど、ずっとしずかに私達の声を聞いている。タケルイは、メリエッシのことで考え事をしているようだった。


「俺の名前は『マイシ』って言うんだー。じっちゃんの名前からもらったんだ。かっこいいだろう?」

マイシがにっこりとして言う。

ーーなんてかわいい笑顔……

タケルイもダニーも、なんと言っていいか分からないみたいでマイシを見ている。

「ええ、とても素晴らしいお名前です。私は『ダニー』と言います。そしてこちらが『タケルイ』です。私達はあなた同様ミーナの夫です。私達が先にミーナの夫なので、あくまでも私達の決まりに沿ってマイシも行動するように」

「えっ、決まりって?」

 私はついダニーに聞いたら彼に睨まれてしまった。

「もちろんミーナとの接し方の決まりです。夫三人もいれば決まりと言うものがあって当たり前です」

「ああ、分かった。だよなー、集落の男達にも決まりあったしな。じゃないと、数少ない女達を犯し過ぎてすぐに死なせてしまうから、きちんと決まりがあったよ」

 マイシが真面目な顔でダニーに同意している。でもダニーとタケルイは、口を開けてマイシを見ていた。

「ま、まあ、そう言うことで。王都に戻ったらきちんと教えます」

 ダニーが声を明るくして言った。

「王都って、なに?」

 マイシがダニーに聞いた。ダニーもタケルイも、目の前にいるこのかわいい生き物をどう扱っていいのか分からず途方に暮れた時に馬車が止まった。

 ヨナさんの屋敷はかなり大きな所だった。もちろん驚くマイシを私とダニーで引っ張って部屋の中へ入った。屋敷に入って、軽く軽食を食べた。その時もマイシが何度も「おいしい、おいしい」と言ってクッキーのお変わりを貰おうとしたのを止めさせるのに苦労した。マイシは怒っていたけれど、すぐに夕食があるよと言うと落ち着いた。
 夕食の前にお風呂に入ることになって、ここでも大騒動だった。マイシには風呂の入り方が分からなかった。ダニーが「教える」と言うと「俺の尻ねらってるー」って言って大騒ぎをした。結局私も一緒に浴室に入ることになった。もちろん私は二人を見れないように隅で壁を見ていただけ。もしダニーがマイシになにかした時に止めるためだって。マイシは温かいお湯と匂いのいい石けんを気にいって、お風呂を楽しんでいた。

「あなた、本当に男だったんですね……。それに私より大きい……。私は……自尊心を失いそうです……」

 とダニーが呟いていたのが聞こえた。

 夕食はあてられた自室で取った。本当はヨイさん達と取るべきだけれど、サラサさんと顔を合わせたくなかった。タケルイも元々使用人だったから、今更主人と一緒に食事を取れないと断った。きっとこれに対してヨナさんは、心を痛めていると思う。王子を龍騎士を使用人として扱っていたんて世間体が悪い。マイシは私の側から離れないので、一緒に部屋で食事をした。そして何度もお変わりをすていた。お腹壊すのではと心配した。ダニーさんだけでも、ヨイさん達と夕食を取ってよかった。

 食事の後で、私達はすぐに眠った。マイシはベットに喜んで騒いでいた。いざ眠る時にマイシは自分に割与えた部屋じゃなく、私と一緒に寝るってゴネた。私はマイシが寂しがっているのが分かったので、一緒に寝ることにした。周りに人がいる中で眠れないみたい。マイシの育った環境とまったく違う所で眠れることが出来ない気持ちが分かる。タケルイも私達と眠ると言って私の横に眠った。私も相当疲れていたので、反対する気力がなかったので何も言わなかった。

 私達はすぐに眠った。

 次の日私の部屋のソファーで寝ているダニーを見つけた。私の両側にいるタケルイとマイシ。私はなんか急に幸せな気分になった。

 私達は朝食の後にすぐに王都へ立った。私はサラサさんに会っていない。ダニーとタケルイはサラサさんとヨイさんにお別れを言いに行ったけれど私とマイシは部屋にいた。マイシはヨイさんがマイシのために用意してくれた服とブーツを着てはしゃいでいる。とてもうれしそうにしているマイシを見て私も幸せになる。

 朝早く私の部屋にサラサが来た。タケルイがサラサに私と会わせられないと入り口で断った。

「どうして! わたくしは、ルイさんのことをこんなにお慕いしているのに。どうしてその気持ちが分かって頂けないのですか?」

 サラサが大きな声で言った。

「サラサ様。私は結婚している身です」

 タケルイが静かな声で返事をする。

「そ、それでも、わたくしはあなたと一緒にいたいです。ルイさんも、わたくしにはじめにお会いしておりましたら、わたくしと結婚していたはずです!」

 私にはどうしてこのお嬢様がここまで自身を持てるのか分からない。

「いいえ、そんなことはありません。私はミーナしか愛していません」

「どうして! あの女は男を三人も夫にして! 妾でもいいの! わたくしをお側に召して! そ、そしたら、わたくしを愛してくれるわ!」

「お嬢様……」

 顔が見えないけれど、廊下から何人かの人達の焦った声が聞こえる。

「これ以上の会話は無意味です! それにミーナに夫が三人いるのは神の意志! あなたには関係ないことです!」

 タケルイが低い声で言った。

「そ、そ、そんな。お願い、龍姫! わ、私にルイさんを返して! 他にも二人の男がいるでしょう!? 別にルイさんが一人いなくなっても、いいでしょう!? お願い」

 タケルイの怒った声に気付いた人達がサラサを引っ張って行った。でもサラサの叫び声が廊下に響いた。 私は両手で耳を塞ぐ。

ーーどうして、みんな私に夫を他の人に譲れと言うの?

 愛する人を勝手に譲るものでもないのに……人の気持ちを、他の人が勝手に決めていいものでもないのに……。
 なぜか後味の悪い旅立ちだった。



 王都へ行く時に私はマイシと相乗りした。やっぱり迷子になってしまったら、王都へ行き方の分からないマイシを一人にしておけなかったから。私も王都への行き方は知らないけれど、この世界のことはマイシよりは知っているから人に尋ねることが出来る。マイシは、それも出来ないと思うし。

 ダニーもタケルイも私の意見に賛成してくれた。それに私はマイシの後ろに乗ることで安心したみたい。でもこの姿勢は私にとってかなりキツい。タケルイやダニーの前に座って二人にもたれかかっていたかった。

 途中でヨイさんの用意してくれたランチを食べた。マイシがほとんど食べたけれど……。

 私は何日しか経ってないけれど、龍屋敷に戻るのを楽しみだった。メリエッシのことでいろいろまた傷つくかもしれないけれど龍騎士が三人揃ったから心強かった。


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