51 / 59
恋の戦い 4
しおりを挟む「そうですか。それでは仕方ありませんね。それでミーナはこの獣に襲われそうになった時に、龍騎士の儀式をしたと言うことですね」
ダニーの目が座っている。
ーーこ、怖い……ダニーってバロンさんとクレイさんの次に怒らしたらいけない人だったんだ……
「あっ、う、うん。そ、それで、あのブラック、あっ、龍が来てくれて、私達、あの島から脱出出来たの。それで、行き先が分かんなくて空を飛んでいたらブラックがここへ連れて来てくれたの」
「そうでしたか。でも、島で初めにマイシに見つけられてよかったのかもしれませんね。もし他の流刑者達に見つけられたら、今頃どうなっていたか分かりません」
ダニーが静かな声で言った。
「あっ、それ、えとね。あの島にはマイシしかいないの。他の人達、全員病気が流行って死んでいないの」
「えっ!? ……そ、そうだったんですか。そんな島で、あなたは一人でいたのですね」
ダニーが言った。ダニーの声はさっきと違って、気をつかった思いが漂っていた。きっとマイシを可哀想に思えたのだと思う。タケルイもさっきから黙りきっているけど、ずっとしずかに私達の声を聞いている。タケルイは、メリエッシのことで考え事をしているようだった。
「俺の名前は『マイシ』って言うんだー。じっちゃんの名前からもらったんだ。かっこいいだろう?」
マイシがにっこりとして言う。
ーーなんてかわいい笑顔……
タケルイもダニーも、なんと言っていいか分からないみたいでマイシを見ている。
「ええ、とても素晴らしいお名前です。私は『ダニー』と言います。そしてこちらが『タケルイ』です。私達はあなた同様ミーナの夫です。私達が先にミーナの夫なので、あくまでも私達の決まりに沿ってマイシも行動するように」
「えっ、決まりって?」
私はついダニーに聞いたら彼に睨まれてしまった。
「もちろんミーナとの接し方の決まりです。夫三人もいれば決まりと言うものがあって当たり前です」
「ああ、分かった。だよなー、集落の男達にも決まりあったしな。じゃないと、数少ない女達を犯し過ぎてすぐに死なせてしまうから、きちんと決まりがあったよ」
マイシが真面目な顔でダニーに同意している。でもダニーとタケルイは、口を開けてマイシを見ていた。
「ま、まあ、そう言うことで。王都に戻ったらきちんと教えます」
ダニーが声を明るくして言った。
「王都って、なに?」
マイシがダニーに聞いた。ダニーもタケルイも、目の前にいるこのかわいい生き物をどう扱っていいのか分からず途方に暮れた時に馬車が止まった。
ヨナさんの屋敷はかなり大きな所だった。もちろん驚くマイシを私とダニーで引っ張って部屋の中へ入った。屋敷に入って、軽く軽食を食べた。その時もマイシが何度も「おいしい、おいしい」と言ってクッキーのお変わりを貰おうとしたのを止めさせるのに苦労した。マイシは怒っていたけれど、すぐに夕食があるよと言うと落ち着いた。
夕食の前にお風呂に入ることになって、ここでも大騒動だった。マイシには風呂の入り方が分からなかった。ダニーが「教える」と言うと「俺の尻ねらってるー」って言って大騒ぎをした。結局私も一緒に浴室に入ることになった。もちろん私は二人を見れないように隅で壁を見ていただけ。もしダニーがマイシになにかした時に止めるためだって。マイシは温かいお湯と匂いのいい石けんを気にいって、お風呂を楽しんでいた。
「あなた、本当に男だったんですね……。それに私より大きい……。私は……自尊心を失いそうです……」
とダニーが呟いていたのが聞こえた。
夕食はあてられた自室で取った。本当はヨイさん達と取るべきだけれど、サラサさんと顔を合わせたくなかった。タケルイも元々使用人だったから、今更主人と一緒に食事を取れないと断った。きっとこれに対してヨナさんは、心を痛めていると思う。王子を龍騎士を使用人として扱っていたんて世間体が悪い。マイシは私の側から離れないので、一緒に部屋で食事をした。そして何度もお変わりをすていた。お腹壊すのではと心配した。ダニーさんだけでも、ヨイさん達と夕食を取ってよかった。
食事の後で、私達はすぐに眠った。マイシはベットに喜んで騒いでいた。いざ眠る時にマイシは自分に割与えた部屋じゃなく、私と一緒に寝るってゴネた。私はマイシが寂しがっているのが分かったので、一緒に寝ることにした。周りに人がいる中で眠れないみたい。マイシの育った環境とまったく違う所で眠れることが出来ない気持ちが分かる。タケルイも私達と眠ると言って私の横に眠った。私も相当疲れていたので、反対する気力がなかったので何も言わなかった。
私達はすぐに眠った。
次の日私の部屋のソファーで寝ているダニーを見つけた。私の両側にいるタケルイとマイシ。私はなんか急に幸せな気分になった。
私達は朝食の後にすぐに王都へ立った。私はサラサさんに会っていない。ダニーとタケルイはサラサさんとヨイさんにお別れを言いに行ったけれど私とマイシは部屋にいた。マイシはヨイさんがマイシのために用意してくれた服とブーツを着てはしゃいでいる。とてもうれしそうにしているマイシを見て私も幸せになる。
朝早く私の部屋にサラサが来た。タケルイがサラサに私と会わせられないと入り口で断った。
「どうして! わたくしは、ルイさんのことをこんなにお慕いしているのに。どうしてその気持ちが分かって頂けないのですか?」
サラサが大きな声で言った。
「サラサ様。私は結婚している身です」
タケルイが静かな声で返事をする。
「そ、それでも、わたくしはあなたと一緒にいたいです。ルイさんも、わたくしにはじめにお会いしておりましたら、わたくしと結婚していたはずです!」
私にはどうしてこのお嬢様がここまで自身を持てるのか分からない。
「いいえ、そんなことはありません。私はミーナしか愛していません」
「どうして! あの女は男を三人も夫にして! 妾でもいいの! わたくしをお側に召して! そ、そしたら、わたくしを愛してくれるわ!」
「お嬢様……」
顔が見えないけれど、廊下から何人かの人達の焦った声が聞こえる。
「これ以上の会話は無意味です! それにミーナに夫が三人いるのは神の意志! あなたには関係ないことです!」
タケルイが低い声で言った。
「そ、そ、そんな。お願い、龍姫! わ、私にルイさんを返して! 他にも二人の男がいるでしょう!? 別にルイさんが一人いなくなっても、いいでしょう!? お願い」
タケルイの怒った声に気付いた人達がサラサを引っ張って行った。でもサラサの叫び声が廊下に響いた。 私は両手で耳を塞ぐ。
ーーどうして、みんな私に夫を他の人に譲れと言うの?
愛する人を勝手に譲るものでもないのに……人の気持ちを、他の人が勝手に決めていいものでもないのに……。
なぜか後味の悪い旅立ちだった。
王都へ行く時に私はマイシと相乗りした。やっぱり迷子になってしまったら、王都へ行き方の分からないマイシを一人にしておけなかったから。私も王都への行き方は知らないけれど、この世界のことはマイシよりは知っているから人に尋ねることが出来る。マイシは、それも出来ないと思うし。
ダニーもタケルイも私の意見に賛成してくれた。それに私はマイシの後ろに乗ることで安心したみたい。でもこの姿勢は私にとってかなりキツい。タケルイやダニーの前に座って二人にもたれかかっていたかった。
途中でヨイさんの用意してくれたランチを食べた。マイシがほとんど食べたけれど……。
私は何日しか経ってないけれど、龍屋敷に戻るのを楽しみだった。メリエッシのことでいろいろまた傷つくかもしれないけれど龍騎士が三人揃ったから心強かった。
0
お気に入りに追加
379
あなたにおすすめの小説
わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた
名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。
NeverDream ~魔王軍が世界を救ってもいいですか?~
逢坂一可
恋愛
ある日、いつの間にか部屋に置かれていたレトロゲームをプレイしたタチモリ・ヒナノ。
フルコンプリートし、眠りから目覚めるとなんとクリアしたゲームの中にいた。
しかも魔王軍の四天王に気に入られてしまい、更には魔王軍側の女神の生まれ変わりらしく?!
このままだと勇者たちと魔族の争いが激化し、魔族が人間たちに滅ぼされてしまう。――魔王や魔族が倒されて、お約束ハッピーエンドだ。
魔族たちと関わり、「お約束のハッピーエンド」を迎える事に疑問を抱いたヒナノ。
このゲームに似た世界にトリップしたヒナノは、「お約束のハッピーエンド」を回避することを決意する。
※定番の勇者が魔王を倒す王道のレトロゲームにトリップします。
※魔王軍での逆ハーレム。無理矢理あまあま恋愛。
※R18には、「◆」を記載します。
小説家になろうでも連載中です。(登場人物紹介 挿絵有)
http://novel18.syosetu.com/n3237cv/
離縁しようぜ旦那様
たなぱ
BL
『お前を愛することは無い』
羞恥を忍んで迎えた初夜に、旦那様となる相手が放った言葉に現実を放棄した
どこのざまぁ小説の導入台詞だよ?旦那様…おれじゃなかったら泣いてるよきっと?
これは、始まる冷遇新婚生活にため息しか出ないさっさと離縁したいおれと、何故か離縁したくない旦那様の不毛な戦いである
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
「霊感がある」
やなぎ怜
ホラー
「わたし霊感があるんだ」――中学時代についたささいな嘘がきっかけとなり、元同級生からオカルトな相談を受けたフリーターの主人公。霊感なんてないし、オカルトなんて信じてない。それでもどこかで見たお祓いの真似ごとをしたところ、元同級生の悩みを解決してしまう。以来、ぽつぽつとその手の相談ごとを持ち込まれるようになり、いつの間にやら霊能力者として知られるように。謝礼金に目がくらみ、霊能力者の真似ごとをし続けていた主人公だったが、ある依頼でひと目見て「ヤバイ」と感じる事態に直面し――。
※性的表現あり。習作。荒唐無稽なエロ小説です。潮吹き、小スカ/失禁、淫語あり(その他の要素はタグをご覧ください)。なぜか丸く収まってハピエン(主人公視点)に着地します。
※他投稿サイトにも掲載。
中イキできないって悲観してたら触手が現れた
AIM
恋愛
ムラムラして辛い! 中イキしたい! と思ってついに大人のおもちゃを買った。なのに、何度試してもうまくいかない。恋人いない歴=年齢なのが原因? もしかして死ぬまで中イキできない? なんて悲観していたら、突然触手が現れて、夜な夜な淫らな動きで身体を弄ってくる。そして、ついに念願の中イキができて余韻に浸っていたら、見知らぬ世界に転移させられていた。「これからはずーっと気持ちいいことしてあげる♥」え、あなた誰ですか?
粘着質な触手魔人が、快楽に弱々なチョロインを遠隔開発して転移させて溺愛するお話。アホっぽいエロと重たい愛で構成されています。
妖怪私事語
LEKSA
恋愛
死んだと思ったら妖怪の姫になっていた!?
なんだその仰々しい名前!!?
というか、“妖怪の姫”って何すんだ!?
この物語は、気の向く侭に“妖怪生”を謳歌する前世人間現世妖怪の主人公の随想録である。
この作品は「小説家になろう ムーンライトノベルズ」でも掲載しています。
※注意事項※
・女主人公ですが、口調が粗雑です
・逆ハーレムです
・残酷描写は未定ですが性描写はR-18を含みます
以上の項目で地雷のある方は、そっとブラウザバックお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる