血と渇望のルフラン

るなかふぇ

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第七章 陥穽

12 吸血 ※

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 俺の中に踏み込む前。怜二はそうっと、とびきり優しいキスをくれた。
 大事で大事でたまらない、宝物に触れるみたいに。
 それから、めちゃくちゃ甘い声で耳に囁かれた。

「怖い……? 勇太」
「ううん」

 本当は、ちょっと怖い。だってこんなの初めてだし。ってかそもそも童貞だし。
 俺のそこだって、もともとこういうことをするためにはできてねえだろうし……とか、色々考えちゃうし。

(でも──)

 俺のそこ、その奥は、もう欲しがってひくひくしている。その場所はもう、怜二を待って待ちきれなくて「早くしろ、バカ」ってさっきから俺にせっつきまくっている。
 すぐそこにある、怜二の真っ赤に燃える目。それは真っ赤になっているだけじゃなく、明らかに人間のものとは違う、縦に細長い虹彩を浮かべていた。
 俺はその瞳をまっすぐに見てにっこり笑った。

「……いいから来いよ。怜二」

 そう言って、ぐいと怜二の首を抱き寄せた。
 怜二の目が一瞬、ハッとしたように見開かれる。にこっと微笑んだ口元に、俺はたぶん初めて、きらりと光る牙を見た。





「息を詰めないで、勇太。できるだけ力を抜いていてね」
「う、……ん」

 ぬぷりと入って来たものが思っていたより大きくて、それに硬くて、俺は必死で目の前の枕を抱きしめていた。怜二はあのあと「最初はこっちの方が楽だから」って、俺の身体をひっくり返し、腰の下にも枕を入れて、背後から抱きしめてきたんだ。

まだまら……? 入っね……の? 全部れんぶ
 息が苦しくてしょうがない。言ってることが全部舌足らずになる。
「うん、ごめん。もうちょっとだから」

 そう言っている怜二の声も、ちょっとだけ苦しそうだ。怜二がゆっくりまた腰を進めると、俺の中にぐぐっと入って来たのがわかった。
「うあ……っ」
 怜二のものが、俺の中を押しのけるみたいにして入ってくる。
 やがてとうとう、みちっと怜二の腰が俺の尻に当たったのが分かった。

「はい……った……?」
「ん……」

 怜二はしばらく、そのままじっとしていてくれた。俺の身体に、怜二のものが馴染むのを待っていたんだ。
 なんか、まだ変な感じ。だってその……そこは、本来出すべき場所だから。そっちの感覚がむくりと起こって、体がついつい、勝手に怜二を締め出してしまいそうになるし。

「あ……んっ」
「そろそろ、いい? 動いて」
「ん……」

 怜二の身体がゆっくりと前後し始める。本当に丁寧で優しい動きだ。そこはやっぱり、余裕があるからなんだろうな、なんてふと思う。ヤリたい盛りのガキだったら、とてもこうはいかねえだろう。そこはさすが、千年の年の功だ。
 怜二がゆるゆると、俺の中で動いてる。
 時々ちょっと角度を変えて、先端があの場所をこすっていく。

「んあ……っ! ふあう……んっ」

 そこから真っすぐ俺自身の先端まで、快感が突き抜ける。
 そのたび、俺は変な声で啼くしかなかった。
 ほんと変。俺の声じゃねえみてえ。
 だって変に蕩けてるし、甘いし。

「ああ……可愛いよ。最高、勇太……!」

 怜二、嬉しそうだ。この体勢だと顔が見えねえけど、きっとすんごく嬉しそうに笑ってる。そういう時の声だもん。

「声、可愛いよ。素敵だ。ずっと想像していたのより、何万倍も。……もっと啼いて? ねえ……勇太」

 そうしてだんだん、怜二の腰の動きは早くなっていく。
 ずちゅずちゅと、やらしい水音が耳いっぱいになる。
 俺のそこが、怜二ので擦られてどんどん熱くなる。

「はあっあ……! あん、あんっ……ああんっ、やはっ、れい、じ……!」

 狙ったようにそこを責められて、また俺の中心がビンビンになりだした。先っぽにどんどん熱が溜まっていく。
 心臓の音と自分の呼吸音で、もうほとんど何も聞こえなくなっていく。

「だめっ、あ、あ……だめ! でるうっ、れい──」
「だぁめ。ちょっと我慢して」
「あううっ!」

 途端、ぎゅっと根元を握られて我慢させられた。腰の中で欲望が荒れ狂い、俺は悲鳴を上げた。

「いやらあっ! や、やだ、れいじ……」
 周囲のシーツを掴んでじたばた暴れる。
「もうちょっと我慢。イッちゃうと、後ろがつらくなるからね。少し我慢して、一緒にイこう。……ね? 勇太」
「あう、ああ……んっ!」

 怜二の腰の動きがもっと速くなって、俺はもう何も考えられなくなった。
 いや、その前に、俺は前から決めていたことをなんとか頼んだ。
 怜二に言おうって、決めていたから。
 このとき、この絶頂の瞬間に。

──『咬んで。俺を咬んで……! 怜二』って。

 怜二はびっくりしたみたいだった。一瞬動きを止め、「でも、勇太」って言いかけるのを俺は首を振って黙らせて、同じことを何度も頼んだ。
 あとはもう、なんにもわからなくなっていった。
 口はずっと開きっぱなしで、変な声で意味のわからない言葉を悲鳴みたいに叫び散らして。涙が勝手にいっぱい出て。
 怜二の抽挿がさらに激しさを増し、脳がぐずぐずに溶けていく。
 もう何もできない。何も考えられなかった。

 最後にやっと根元を解放して貰えた瞬間。
 腰の欲望が怜二のそれと一緒に、爆発するみたいに噴き出した。
 脳が真っ白になる。
 それと同時に、ちりっと首の脇に痛みが走った。
 とても甘い痛みだった。

 なんて甘さ。
 そして、なんて甘美な痛み。
 怜二が俺の望みをわかってくれたんだ。
 だから俺は、胸と頭いっぱいの恍惚の中で笑った。

「れい、じ……。おいしい?」

 なあ。
 美味しい?
 俺のいちばんの、とびっきりおいしい時の血。

「ああ……素晴らしい。ほんとに言葉にできないよ──でも、勇太」

 うっとりとした怜二の声が耳に流し込まれてきた。
 そこにまた、キスを落とされる。

『それ以上、僕を煽らないで。……お願いだから』

 そう聞こえたのが最後だった。
 俺はいっぱいの満足感に浸りながら、そのままあっさりと意識を手放した。

 
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