星のオーファン

るなかふぇ

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第九章 めぐりあひて

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「きて……。ベータ」

 言われるまでもなかった。
 ベータは彼のそこに己のものをあてがうと、ぐっと先端を突き込んだ。

「あっ……あ、あ……ん」

 彼が全身を震わせる。とろとろに濡れた彼の中も嬉しげに蠕動して、ベータを迎え入れていた。内壁がきゅうきゅうと、悦びに溢れて締め付けてくる。

「ああ、あ……イイ……っ、ベータ、イイ、よおっ……」

 ぽろぽろと涙をこぼしながら彼が啼く。だらしなく開いた口から覗かせた舌を蠢かせる様がひどく淫靡だ。
 あの清げな美しい皇子殿下が、自分を受け入れてここまで乱れてくれる。それだけでも脳が焼ききれそうになるというのに。
 ベータは彼に誘われるままその舌に吸いついて、深く深くそこを犯しながらさらに腰を進めた。

「んあっ……あ、あん……ん」

 戒められた彼のそこは血液が集まり切って赤黒く張りつめている。先端をてろてろと光らせながらも、ベータを受け入れたそこはひくひく動き、「もっと、もっと」とその先を強請ねだっていた。
 彼の最奥さいおうまで到達して、ベータは一旦動きを。止めた見下ろせば、皇子が蕩け切った顔で見上げてくる。ぴくん、ぴくんと彼のものがこちらの腹に当たっているのが分かった。これだけでも十分、感じているらしい。

「んっ……。う、動いてぇ……。ベータ」

 何もかもをこちらに晒して皇子が先をまた強請る。甘ったるく、情欲に濡れた声だ。

「いっぱい……犯して。私を……わたし、を──」
「……バカが。煽りすぎだ」

 さすがのベータも少し苦しい息をつき、彼の腰を掴みこんだ。そして次の瞬間にはもう、凄まじい突き上げで彼に悲鳴を上げさせていた。



◆◆◆



「んあっ……あ、あふ、んふううっ……!」

 何度も体位を変え、彼に注ぎ込んでやったことでとどまり切れなかった白濁がその足の間を滑り落ちる。それでも、彼は決して「やめて」とは言わなかった。
 しまいには、その「大人の玩具」をつけたままベータの上に跨って自ら腰さえ振った。

「っふ、あ……んん、んっ……く」

 どうにかしてベータに快感を与えたい。彼はそれしか考えていないようにも見えた。自分の腹の上で揺れている白い肢体を、ベータは不思議な思いで見上げた。
 あの皇子が、自分の上で腰を振っている。それも、ひどく嬉しそうにだ。快感によるものなのだか生理的なものなのだかももう分からなくなった涙を流しながら。時々「ベータ、い……?」などと訊ねながらだ。
 こんな卑猥な真似をしているというのに、彼に醜さや汚さはなかった。
 ベータは彼の腰を掴み、自ら腰を振って彼にまた悲鳴を上げさせた。下から突き上げられ、また場所を刺激されて彼の嬌声があがる。

「ふあ、あ、ああ……っ」

 先ほどからずっと腰の中で暴れ狂っているだろう欲望が、せき止められてさらに唸り狂い、彼の脳を犯していく。その様が見えるかのようだった。
「や、ああ、いい……のおっ……あ、ああ……、ダメ、ああ……ダメえっ……」
 もはやアルファは、自分で自分が何を言っているかも分かっていないようだ。
 最後の最後、自分が彼の中に注ぐと同時に、ベータは彼の中心を戒めていた物をむしり取った。

「あっひ、いいいっ……!」

 アルファがびくんと仰け反り、倒れそうになるのを片腕を掴んで支えてやる。それは勿論、彼が達する最も顔を自分が堪能するためでもあった。
「あ、あ、ああ……」
 びゅく、びゅるっと彼の先端から欲望の証が飛び出す。自分を咥えこんでいる部分もびくびくと収縮し、名残惜しげにベータのものにまとわりついた。
 あんなことを言っていたくせに、彼はあっさり意識を飛ばしてぐらりと体を傾ける。ベータは上体を起こして彼を抱き留めた。肩にくたりと彼の頭が落ちてくる。彼の体を抱きしめ、意識を失った彼の頬に二度、三度とキスを落とす。
 胸の奥から、なにか堪らなく甘酸っぱいものが広がってくるのを覚えた。

(……言ってやりたい)

 だが、それは言ってもいい言葉だろうか。
 あの時も、あの時も。
 彼は自分が何か行動を起こすたびに、必ず様子がおかしくなった。
 弱いものだとはいえ一応は<感応>を持つ彼のことだ。こちらには詳しくは分からないことだとしても、彼にはもしかしたら多くのことが見えすぎるほど見えてしまっているのかも知れない。
 事実、ほんのわずかに気を許してしまった隙に、彼は自分の「ムラクモ」としての過去の多くをその目で見てしまったのだから。

 汗に濡れた彼の髪をやわらかく撫でながら、ベータはしばらく考えていた。
 しかしとうとう、意識をなくしている彼の耳に唇を寄せ、声を出さずにそっとそれを囁いた。


 『……アイシテル』。


 そうして、力の抜けた彼の体を、両腕で思うさま抱きしめた。

「ベー、タ……?」

 小さな声が耳元でして、びくりと男は停止した。
 見れば黒髪の皇子様が、夢見るような潤んだ黒い瞳をあけて、じっとこちらを見つめていた。

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