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第七章 共闘
9 宇宙ピクニック
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それからすぐ、リョウマは行動を開始した。
まずは《人間保護区》にいるサクヤとコジロウに連絡を取り、その後《勇者の村》の長老たちとケント、ハルトとも連絡を取り合う。もちろん、村の人々を宇宙へ脱出させる作戦を遂行するためだ。
連絡を聞いたみんなは一様に驚きを隠せぬ様子ではあったが、そこはさすが古老たちと《レンジャー》だった。すぐさま行動計画をつくり、着手した。
計画はこうだ。
まず、魔王国から自分たち用に用意されている宇宙船まで、人々を誘導する。魔王国の人々同様、こちらでもパニックに陥ったり、「ここにとどまる」と頑強に言いつのる者が出ることは想定内だ。それで、心苦しかったが魔王国の政府が行っている方法を参考にさせてもらうことになった。
要するに、「これは一時的な宇宙の散策、遊びのピクニックだ」と説明する。魔王がこちらの村の人々にプレゼントしてくれた宇宙ピクニック。あくまでもお遊びだと。実際、あちら側も特に学校に通う子どもたちにはそのように説明し、ともに親を同伴させて一緒に宇宙へ連れ出しているらしい。希望があれば、そのほかの親族が同伴してもよいということになっている。
正直、「なかなか頭がいいな」と思った。
こう言ってはなんだが、種としての生物を延命させる場合、どう考えても大切なのは若い人、特に子どもたちだからだ。経験をつんだ老年の人々の知恵は重要だけれども、優先されるのはやはり、未来のある子どもたちであろう。……と、魔王たちはそのように判断したわけだ。そこは納得である。
子どもたちには「なるべく保護者や親せきなどたくさん呼ぶこと」と通達する。どれだけたくさんの家族や親族、友人たちを連れてこられるかを生徒同士で競争させる学校もあるようだ。親がいない子については、お世話になっている近所の人などでもいいと伝えてあるという。とにかく、ひとりでも多くの国民を宇宙船に乗せることが目的だからだ。
ちょっと悔しい気もしたが、リョウマたちもそれを参考にさせてもらうことにした。
まず《保護区》の人々に宇宙ピクニックの話をする。特に子どもたちは、話を聞いただけで目を輝かせた。「うちゅうってなに?」「ちきゅうってなに?」と、そんなところから説明が必要ではあったが、子どもたちはすっかりそのピクニックの話に夢中になったのだ。
大人たちはさすがにそこまで簡単ではなかったけれども、誰よりもリョウマ自身が魔王から大変よくしてもらっているのは自明のこと。そのリョウマが口を極めて「ぜひ行こう、楽しいぞ~!」と勧めてくれるものを、無碍に断れる村人はいなかった。こちらの《保護区》での生活が非常に豊かで、リョウマと魔王に感謝の思いを抱いている村人も多かったことも大きいのだろう。
ともあれ、比較的人数の少ない《保護区》の人々は、幸いにも全員が翌日には宇宙船に乗って地球を脱出することになった。みんな、持っているのは手荷物程度である。
サクヤとコジロウは、そんな村民について一緒に宇宙船に乗ることになっている。
「リョウマ。あんた、大丈夫なの」
村民のすべてが、魔王国の宇宙港で自分たち用の宇宙船に乗り込んだのを確認したところで、サクヤがリョウマに近づいてきて言った。心配そうな顔をしたコジロウが、その後ろからそっとこちらを見つめている。
「ん? なにが」
「あんた、気づいてないの? ひっどい顔してるわよ。目の下のクマ、やっばいし」
「……そっか?」
「はああ」
サクヤはわざとらしいため息をついた。
「ちゃんと寝てないでしょ、あんた。魔王となんかあった?」
「べつに」
「あったんでしょーが!」
「痛ってえええええ!」
そっぽを向いたリョウマの耳に、いきなり激痛が走った。
まずは《人間保護区》にいるサクヤとコジロウに連絡を取り、その後《勇者の村》の長老たちとケント、ハルトとも連絡を取り合う。もちろん、村の人々を宇宙へ脱出させる作戦を遂行するためだ。
連絡を聞いたみんなは一様に驚きを隠せぬ様子ではあったが、そこはさすが古老たちと《レンジャー》だった。すぐさま行動計画をつくり、着手した。
計画はこうだ。
まず、魔王国から自分たち用に用意されている宇宙船まで、人々を誘導する。魔王国の人々同様、こちらでもパニックに陥ったり、「ここにとどまる」と頑強に言いつのる者が出ることは想定内だ。それで、心苦しかったが魔王国の政府が行っている方法を参考にさせてもらうことになった。
要するに、「これは一時的な宇宙の散策、遊びのピクニックだ」と説明する。魔王がこちらの村の人々にプレゼントしてくれた宇宙ピクニック。あくまでもお遊びだと。実際、あちら側も特に学校に通う子どもたちにはそのように説明し、ともに親を同伴させて一緒に宇宙へ連れ出しているらしい。希望があれば、そのほかの親族が同伴してもよいということになっている。
正直、「なかなか頭がいいな」と思った。
こう言ってはなんだが、種としての生物を延命させる場合、どう考えても大切なのは若い人、特に子どもたちだからだ。経験をつんだ老年の人々の知恵は重要だけれども、優先されるのはやはり、未来のある子どもたちであろう。……と、魔王たちはそのように判断したわけだ。そこは納得である。
子どもたちには「なるべく保護者や親せきなどたくさん呼ぶこと」と通達する。どれだけたくさんの家族や親族、友人たちを連れてこられるかを生徒同士で競争させる学校もあるようだ。親がいない子については、お世話になっている近所の人などでもいいと伝えてあるという。とにかく、ひとりでも多くの国民を宇宙船に乗せることが目的だからだ。
ちょっと悔しい気もしたが、リョウマたちもそれを参考にさせてもらうことにした。
まず《保護区》の人々に宇宙ピクニックの話をする。特に子どもたちは、話を聞いただけで目を輝かせた。「うちゅうってなに?」「ちきゅうってなに?」と、そんなところから説明が必要ではあったが、子どもたちはすっかりそのピクニックの話に夢中になったのだ。
大人たちはさすがにそこまで簡単ではなかったけれども、誰よりもリョウマ自身が魔王から大変よくしてもらっているのは自明のこと。そのリョウマが口を極めて「ぜひ行こう、楽しいぞ~!」と勧めてくれるものを、無碍に断れる村人はいなかった。こちらの《保護区》での生活が非常に豊かで、リョウマと魔王に感謝の思いを抱いている村人も多かったことも大きいのだろう。
ともあれ、比較的人数の少ない《保護区》の人々は、幸いにも全員が翌日には宇宙船に乗って地球を脱出することになった。みんな、持っているのは手荷物程度である。
サクヤとコジロウは、そんな村民について一緒に宇宙船に乗ることになっている。
「リョウマ。あんた、大丈夫なの」
村民のすべてが、魔王国の宇宙港で自分たち用の宇宙船に乗り込んだのを確認したところで、サクヤがリョウマに近づいてきて言った。心配そうな顔をしたコジロウが、その後ろからそっとこちらを見つめている。
「ん? なにが」
「あんた、気づいてないの? ひっどい顔してるわよ。目の下のクマ、やっばいし」
「……そっか?」
「はああ」
サクヤはわざとらしいため息をついた。
「ちゃんと寝てないでしょ、あんた。魔王となんかあった?」
「べつに」
「あったんでしょーが!」
「痛ってえええええ!」
そっぽを向いたリョウマの耳に、いきなり激痛が走った。
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