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第十一章 背後の敵
17 眠りの淵 ※
しおりを挟むそこからはもう夢中で、互いの唇をむさぼりあった。
互いの舌を絡めあい、互いの身体の形を確かめあう。インテス様のきれいに走った腕や背中の筋肉。腰の張り──
「……んっ」
内腿に手をすべらせた瞬間、インテス様の唇から甘い吐息がこぼれた。それがシディをさらに興奮させる。
腰まわりや尻のあたりを撫でていたインテス様の手が、シディの手の動きをなぞるようにして内側にのびてくる。
「あふ……っん」
ぴくんと腰が勝手に跳ねる。
しかしインテス様の手は意地悪で、なかなか肝心な場所には到達しない。さわさわと下腹や内腿をやさしく撫でおろしているだけだ。だというのに、すでにそこは勝手にその先を期待するように、硬く張りつめて天井を向いてしまっている。
インテス様のそれも十分硬くなっていた。腰を覆う布が、その下の怒張のかたちを彷彿とさせつつ押しあげられているのがわかる。
「あ……ふうんっ、インテス、さまぁ……」
インテス様の腰に跨るかたちで、たまらずシディは腰をうごめかせた。自分のそれと、インテス様のそれ。布を挟んでお互いの欲望が擦りあわされる感覚。
うっかりすると、それだけで達してしまいかねない。
ひさしぶりすぎて、ともすると興奮と悦楽の度合いに体がついていけなくなるのだ。感覚が鋭くなりすぎている。
「あ、あ、あ……」
腰が勝手に揺れてしまう。無意識のうちに互いのものが触れあった場所を握りこんでいた。それを上からインテス様の手が覆う。
そっとその手が動いて、余計な布を取り去っていく。
むき出しになったお互いの熱源は、すでに双方とろりとした液体をにじませていた。シディのそれは堪え性もなく流れ落ちて、昂りの全体を濡らしている。
それは灯火の光を跳ね返していやらしくぬらぬらと光っていた。
「はっ……は、はあっ……」
「んんっ」
お互いにもう目といわず首といわず胸といわず思う存分に口づけし、丁寧に舐め、撫で擦りながら一緒に揺れる。
足の間のものがインテス様のものと擦りあわされて、ぬちゃぬちゃと淫靡な音をたてる。
「あは、っん、んっ……あうんっ……!」
決して悲しいわけではないのに、涙がどんどん溢れてくる。
「シディ、つらいのか? どうした」
荒い息の下でインテス様が訊ねてくださる。必死でそれに首を振ってみせる。
大丈夫。とってもイイ。
イイから、やめないで、と。
「ふあっ、あん、きゃいんっ……はあああっ!」
あっというまに絶頂がきた。
きてしまった。
目の前が一瞬、脳も体も全部いっしょになって真っ白に輝く、あの瞬間だ。
「あは……っん」
インテス様の腕のなかでぶるぶるっと震える。シディの胸に顔を埋めたまま、インテス様も震えた。
熱いものがお互いの腹を濡らして、どろりと落ちていく感覚。
(ああ……)
客に好き放題に嬲られていたあの頃、相手に必死に媚びを売りながら、ただただ「早く終わって、早く終わって」と心の中で繰り返し懇願していたのが遠い昔のことのようだ。
今はただ、この人といっしょに思いきり愉悦と幸福に浸れる時間。
「さあ。横になろうな」
手早く互いの身体を清めてからインテス様の優しい手がシディを抱きしめ、そのまま寝台へと沈めていく。
「……いや。まだ……いんてす、さま──」
力なく首を横に振ったことまでは憶えていた。
でもそのあとはもう、シディは心から満たされながら穏やかな眠りの淵へと落ちていった。
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