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第八章 神殿の思惑
12 月の夜(2)※
しおりを挟む「あっ……は、ああっ……んう」
インテス様の手や唇が敏感なところを掠めていくたび、シディは腰を跳ねさせた。声を呑みこもうとするのに、ちっともうまくいかない。
体じゅう、もうどこにも触れられていない場所がなくなる頃にはもう、シディの意識は半分ほど霧散していた。
気持ちがよすぎてどうにかなってしまいそうだ。こんなにも丁寧に、まるでこの世でもっとも大切なものを扱うようにして触れてくださったのはこの方がはじめてだった。インテス様に言わせればそれは「以前のがひどすぎるだけだ」ということらしかったけれど。
「ひゃううっ!?」
くるりとひっくり返され、腰を持ちあげられたのに気づいてびっくりしたが、次に始まったことを認識してさらに慌てた。
インテス様がシディのそこを──この方をいつも受け入れている場所を──丁寧に舌で愛撫しはじめたからだ!
「ま、まって……っあ、あふ……だっ、だめええっ」
「いいから。させてくれ」
「やっ……あ、うあん……っ」
指でも割りひろげつつ、柔らかくて熱い肉が入口と内側の襞を愛撫する感覚。
インテス様のもう片方の手はシディのしっぽを持ちあげている。それに触れられるだけで、奇妙な感覚がビリビリと肌の上を這いまわる。
淫靡な水音に耳を犯される。
「っだめ、そんなとこ……っき、きたない、ですっ……!」
「シディはどこも穢れてなどいない。先ほどちゃんと風呂にも入ったではないか」
熱い吐息と一緒にそんな言葉をあらぬ場所に流し込まれる。殿下の言葉と吐息がそこを撫でていくたびに、シディは嬌声とともに身を捩らせた。
「ここも一緒にきれいにしただろう? 忘れてしまったのかい。んん?」
「れもっ」
でも、が舌足らずな形で響く。
「ほら、腰が動いてるぞ。気持ちがいいのだろう」
「らめ、らあ……っあ、ああんっ」
「そなたが気持ちいいなら、それでいいのさ。何も考えずに愉しめばよい」
「れ、れもおっ……」
半泣きで後ろを見やるが、とんでもない場面を目にすることになってしまって慌てて下を向く。
敏感なところを指先でぐりっと刺激されてまた腰が跳ねる。意識がまたどろどろと白濁しはじめた。
「や、やらあっ……ん、あうん……っ」
せめて、先に達しないようにするだけでもう必死だ。シディのそれは今にも欲望の証をぶちまけそうになっている。集中していないと、ふっと意識が遠のきそうになる。
シディは懸命に自分の根元を握りこんだ。
「こら。そんなことはしなくていい」
「あ、やっ……!」
すぐにその手を取られて戒められてしまう。シディの細い手首はふたつながらインテス様の片手にまとめて握られてしまい、あとはもう情けない声を上げて為すがままになるしかなかった。
「ひいっ……い!」
あの凄まじい高揚がやってくる。
それが腰の中で爆発し、一気にせりあがってきたと思ったら、次の瞬間にはもう一度目の絶頂を迎えていた。
「は……あ、あは……あ」
腰だけを天井に向けて突きあげたような格好で寝具に顔をうずめ、しばらく激しく呼吸を繰り返すことしかできない。
(だめ、だ……早く)
こんなことをしている場合じゃないのに。早く起き上がって、インテス様のものをしっかり頂いて、楽しんでいただきたいのに。
「ううっ……」
「なんだ。どうした? 無理に起き上がらなくてよいぞ」
そう言われて引き下がるつもりはない。どうにかこうにか身を起こし、インテス様の腰にみずからのろのろと跨った。
思った通り、殿下の屹立は相変わらずの強さを見せつけている。
……可哀想だ。こんな自分のために、この方はこんなに我慢してくださっていたのだ。
シディはインテス様の首に腕を回すと、腰を浮かせてその先端を自分のそこにあてがった。
「んん……っ」
「シディ──」
「はあ……っ」
ずぷ、と熱くて硬いものが入り口に割り込んでくる感覚。
殿下の唇に吸い付いて腰を揺らし、入口を少し締めたり緩めたりしながらゆっくりと腰を落として受け入れていく。
「んあ……あ」
「んっ……。シディ──」
「はああっ……」
──きて。
もっと、もっと。
オレの中に。
あなたが欲しい。
いっぱいいっぱい……欲しいんだ。
「シディ……!」
と、いきなり強い力で腰をつかまれた。
と同時に下から思いきり突き上げられた。
「はあ……っ!」
目の前がチカチカする。
(ふ、深い……っ)
体の奥の奥。こんな奥深いところまでこの人に突かれたのは初めてかもしれない。
……もちろん、客にめちゃくちゃにされたことは何度もあるけれど。
それとこれとはまったく違う行為だと思う。
少なくともシディにとって、これは至高の行為だった。
「シディ、シディ……愛してる」
「いん、てす……さまあっ。あ、あ、ああっ……!」
あとはもう、言葉らしい言葉はなにもなかった。
お互いの肌が、激しく律動しながらお互いの汗と体液にまみれたままドロドロに溶けあって、なにか明るくて熱い、大きなひとつのものになっていく。
胸が痛い。
こんなに嬉しいのに、なんだか張り裂けそうになる。
どうしてだか、わからない。
そんな感覚に揺蕩いながら、シディは自分の身体が発光していくような不思議な感覚に包まれていた。
──大好き。
「アイシテル」……?
その言葉の本当の意味はよくわからない。だけど。
(この人は……この人だけは)
どんなことをしても自分が守る。
「その対価としてお前自身を差し出せ」と言われればそうしてでも。
「だい、すき……。インテス、さま……」
汗みずくになりながら眠りに落ちる最後の最後。
ぽろぽろ涙をこぼしながら唇から勝手に出て行ったその言葉を、インテス様はふと寂しげな顔をして、黙って聞いていらしたようだった。
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