白と黒のメフィスト

るなかふぇ

文字の大きさ
上 下
73 / 209
第七章 闇の鳴動

10 離宮の夜(2)※

しおりを挟む

 寝室にふたりで立てる淫靡な水音と、甘い吐息が満たされている。
 シディは腰を上下させながら器用に入り口をつかってインテスさまのものをタイミングよく締め付け、律動を少しずつ早めていく。

「うっ……く」

 インテス様の柳眉がしかめられ、抑えようとしても欲望に濡れたようなひそやかな声が漏れ出している。それが嬉しい。
 シディは自分の感じやすい場所を器用に避けながら、インテス様に最大の快楽を届けようと腰と内側を存分に使った。男娼として身につけた技術をこの人に披露することはずっとはばかっていたけれど、今夜はもういい。
 この人からばかり、一方的に気持ちよくさせられている状態は、やっぱりダメだと思うからだ。

「んっ……ん、んん……っ」

 じゅぽじゅぽと自分の尻から濡れた音がまき散らされ、インテス様のものがさらに固くなって質量を増していくのをじかに感じる。うっかり自分が先に達してしまわないよう、シディは自分の手で自分の根元を戒めている。

「そっ、んなこと、しなくて……いいぞ。シディっ……」
 言いながら伸ばしてくる手をやんわりと押し戻して首を左右にふった。
「いい、んですっ……」

 気持ちよくなって。
 オレのこんな体で申し訳ないけれど、それでも。
 オレは、あなたに気持ちよくなってほしいんだ──

 思いながら、腰の律動をどんどん早くしていく。それに伴い、自分とインテス様の呼吸がどんどん早くなり、ひとつの音楽みたいに絡まり合って高く、熱くなっていく。

「はっ、あ……! シディ……っ」

 シディの腕をぎゅっと掴んで、遂にインテス様がびくんと震えた。内側に、どっと熱いものがぶちまけられた感覚。
 それと呼吸を合わせるようにして、シディも自分の手の中に自分の精を放った。

「はあ……あ」

 あまりの快楽に恍惚とする。目の前が一瞬、真っ白になる。
 腰の上で上体をふらつかせているシディを、起き上がったインテスさまがゆっくりと抱き込み、強く抱きしめてくださった。そのまましばらく抱き合って、ふたりで荒い息をついていた。
 が、それもつかの間のことだった。自分の内奥に挿しこまれたものはすぐにまたもとの力を取り戻したのだ。
 シディの耳にそっと囁く声が届いた。

「……すまない、シディ。もう少し、いいだろうか」
「はい……」
「今度は私が。……いいだろう?」

 まだ脳の中心が痺れたようになっていたが、シディは朦朧としながらもこくんとうなずいた。
 次にはぐっと腰をつかまれ、持ち上げられた。

「ああ……っ」

 そのまま落とされ、下からインテスさまに突き上げられる形になる。ずぷん、と自分のそこからきわどい音がしたような気がした。

「ひゃああん……っ!」

 今までになく、突然ものすごく深いところを突かれる形になる。シディはたまらず悲鳴をあげた。
 深いだけではない。容赦なく悦い場所を突かれている。しかも、そこを執拗なほどに狙われた。これではもたない。

「あっ、あ、あっ……イン、テス、さま……そんっ、だめえっ」

 目の奥がちかちかする。
 両足を思い切り開いて、無意識のうちにインテス様の腰に絡めていた。自分の口から勝手に溢れ出していく嬌声をどうにもできない。

「あっ、あひっ、ひゃう、うああんっ……」
「ああ、シディ、シディ……」

 インテス様もなにか夢中になっている様子だ。とはいえ、その時のシディにそんなことを考えている余裕はなかったけれど。
 ひたすらに自分の中に激しく送り込まれている抽挿に耐え、蕩けきった嬌声を溢れさせているばかりで。
 縦に抱かれて、後ろから突かれて、その夜はインテス様も少し度を越されたようだった。

 全部が終わって、インテスさまの指先による便利な魔法のおかげで体の中も外も綺麗にしていただいて、ようやく二人は眠りに就いた。
 インテス様はシディを抱きしめて眠っている間じゅう、今やお気に入りとなったシディのふかふかの黒い耳やふさふさした黒いしっぽを撫でてくださっていた。
 自分がもしも猫系の獣人だったら、きっとずっと喉をごろごろいわせていたに違いない。

(しあわせ、って……こういうこと、なのかな……?)

 よくわからない。
 みんなが言う「しあわせ」の意味が、自分にはまだよくわからないから。
 でも、この人とこうしているこの時間が、ずっとずっと続けばいいなと、うつらうつらと眠っている間もずっとシディは考えつづけていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

転生するにしても、これは無いだろ! ~死ぬ間際に読んでいた小説の悪役に転生しましたが、自分を殺すはずの最強主人公が逃がしてくれません~

槿 資紀
BL
駅のホームでネット小説を読んでいたところ、不慮の事故で電車に撥ねられ、死んでしまった平凡な男子高校生。しかし、二度と目覚めるはずのなかった彼は、死ぬ直前まで読んでいた小説に登場する悪役として再び目覚める。このままでは、自分のことを憎む最強主人公に殺されてしまうため、何とか逃げ出そうとするのだが、当の最強主人公の態度は、小説とはどこか違って――――。 最強スパダリ主人公×薄幸悪役転生者 R‐18展開は今のところ予定しておりません。ご了承ください。

天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん
BL
享年59歳、ハッピーエンドで人生の幕を閉じた大樹は、生前の善行から神様の幹部候補に選ばれたがそれを断りあの世に行く事を望んだ。 しかし自分の人生を変えてくれた「アルバード英雄記」がこれから起こる未来を綴った予言書であった事を知り、その本の主人公である呪われた英雄<レオンハルト>を助けたいと望むも、運命を変えることはできないときっぱり告げられてしまう。 しかしそれでも自分なりのハッピーエンドを目指すと誓い転生ーーーしかし平凡の代名詞である大樹が転生したのは平凡な平民ではなく・・? 少年マンガとBLの半々の作品が読みたくてコツコツ書いていたら物凄い量になってしまったため投稿してみることにしました。 (後に)美形の英雄 ✕ (中身おじいちゃん)平凡、攻ヤンデレ注意です。 文章を書くことに関して素人ですので、変な言い回しや文章はソッと目を滑らして頂けると幸いです。 また歴史的な知識や出てくる施設などの設定も作者の無知ゆえの全てファンタジーのものだと思って下さい。

処理中です...