白と黒のメフィスト

るなかふぇ

文字の大きさ
上 下
58 / 209
第六章 

6 奉仕 ※

しおりを挟む
「うっ……はあっ、あああ……っ」

 ゆるゆるしごかれ、耳をぱくんと咥えられ、唇で項を愛撫されただけで、シディは簡単に達してしまった。殿下の手の中から、ぴゅうっと白いものが飛び出していく。
 たったこれだけの液体が出て行くだけで、どうしてこんなに頭の中心が発光したみたいになってしまうのだろう。

「……あ、はあ……はあ」
「しっかり出したな。いい子だ」

 ぺろっと頬を舐められて、背筋にぞくぞくっと快感が這いあがってくる。しっぽが殿下の胸の前でピリピリ震えて、しっかりと快感を表現してしまっている。

「い、インテス様のも、しゅる……」

 する、と言いたかったのに幼児みたいな舌足らずになる。そのまま手をのばし、自分の太腿の横で存在を主張していた彼のものを握った。
 ん、とインテス様が鼻だけで押し殺した甘い声をたてる。気持ちがいいのは間違いない。
 シディは猫のようにするっと彼の膝から降りて、下半身を湯舟につけた。彼の太腿の間に体を割り込ませる。両手をそうっと硬く屹立したものに沿え、先端をぺろりと舐めた。

「は……っ。シディ。それは──」

 しなくてよい、とおっしゃるのに聞こえないふりをして、ぱくんと咥える。こんな性技があることをわざわざ見せつけるつもりはなかったのだけれど、今はただそうしてあげたい。
 先端の割れ目を舌先でちろちろ舐め、今度は唇と舌全体で包み込んで愛撫する。
 じゅぽ、じゅぽっと淫靡な水音が湯殿に響く。それに従うようにして、殿下の隠した口許から甘い吐息が漏れた。
 頬裏でしっかり扱き、喉奥をすぼめて先にも刺激を与え、次第にその速さを高めていく。男の匂いがさらにきつくなる。

「んんっ……! ダメだ。放せ、シディっ」

 言われてぐいと頭を押しのけられそうになったけれど、シディは彼のものを離さなかった。むしろもっと吸い付いて刺激を強くする。もちろん歯は立てないように細心の注意をはらって。
 唇に、硬くもりあがった血管の感触がする。とても力強くて元気だ。

「は……っ」

 と、びくびくっと口のなかのものが痙攣した。
 次の瞬間、どっと口内に殿下の欲望がぶちまけられた。

「は……あ」

 ぴくん、ぴくんと口のなかで柔らかく痙攣するそれが愛おしい。シディは躊躇なく殿下のそれを飲みくだした。

「あっ。ダメだと言うのに。吐け。吐きだせ!」

 荒い吐息をつきながら言う殿下に、口を開いて見せる。「もう遅いです」と言わんばかりに。
 それから、丁寧に殿下のそれをくまなく舐めてきれいにした。ぴちゃぴちゃと犬の子がおいしい肉でも舐めるようにして。その間、殿下はずっと困ったように顔を覆っておられた。

「……シディ。そなたは、まったく──」
「あっ」

 ざばっとお湯が音を立てる。脇に両手を入れられてひょいと持ち上げられ、殿下の膝に馬乗りにさせられたのだ。
 困ったような彼の瞳を真正面から見る形になって、はじめて後悔が頭をもたげた。

「あ……あのっ。ごめんなさい。あの……」

 こんなもの、間違いなく男娼としての奉仕ではないか。素人の少年がいきなりこんなことをするわけがないのだから。
 こんな奉仕なんて、この人にはまったく不要だったかもしれないのに。むしろがっかりされたかもしれないのに。
 勝手につい、こんなことをやってしまうなんて。
 こんなにも穢れた自分を嫌われたらどうしようとあれほど不安だったのに、あんなに欲望を我慢しているものを見たら我慢できなくなってしまったのだ。

「きっ、嫌いにならないでください……っ。ごめんなさい、勝手にこんなこと──」
「ああ、シディ。誤解しないでくれ。それは気にしなくていい」

 ぷるぷる震え始めたシディを、殿下の両腕がしっかり抱きしめてくださった。

「どんなシディでも私は愛している。だれだって過去は塗り替えられない。なによりそれはシディの責任ではない」
「インテス様……」

 おそるおそる見上げたら、インテス様の瞳は少し熱に浮かされたようだったがやっぱり優しいものだった。

「気持ちよかったぞ。ありがとう」
「ほ、ほんとうですか?」
「ああ。まあ……少しばかり恥ずかしかったがな」

 早すぎただろう、とわずかに赤面しておっしゃる。
 シディはきょとんとして美しい方を見返した。
 しばし、湯殿の水音だけが響いた。

「……ぷふっ」
「あっ! 笑ったな、シディ!」
「い、いえいえっ。ちがいます、笑ってなんか……うっひゃひゃひゃひゃ!」

 案の定というか、なんというか。
 その後シディは涙を流しながら「ごめんなさい、許しておねがいインテス様あ!」と叫ぶまで、しばらくその手で散々くすぐられたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私と番の出会い方~愛しい2人の旦那様~

柚希
ファンタジー
世界名:グランドリズ ハーレティア王国の王都、レティアの小さな薬屋の娘ミリアーナと番の2人との出会い。 本編は一応完結です。 後日談を執筆中。 本編より長くなりそう…。 ※グランドリズの世界観は別にアップしてます。 世界観等知りたい方はそちらへ。 ただ、まだまだ設定少ないです。 読まなくても大丈夫だと思います。 初投稿、素人です。 ふんわり設定。 優しい目でお読みください。

【完結】結婚式当日、婚約者と姉に裏切られて惨めに捨てられた花嫁ですが

Rohdea
恋愛
結婚式の当日、花婿となる人は式には来ませんでした─── 伯爵家の次女のセアラは、結婚式を控えて幸せな気持ちで過ごしていた。 しかし結婚式当日、夫になるはずの婚約者マイルズは式には現れず、 さらに同時にセアラの二歳年上の姉、シビルも行方知れずに。 どうやら、二人は駆け落ちをしたらしい。 そんな婚約者と姉の二人に裏切られ惨めに捨てられたセアラの前に現れたのは、 シビルの婚約者で、冷酷だの薄情だのと聞かされていた侯爵令息ジョエル。 身勝手に消えた姉の代わりとして、 セアラはジョエルと新たに婚約を結ぶことになってしまう。 そして一方、駆け落ちしたというマイルズとシビル。 二人の思惑は───……

貴方にとって、私は2番目だった。ただ、それだけの話。

天災
恋愛
 ただ、それだけの話。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

【完結】浮気者と婚約破棄をして幼馴染と白い結婚をしたはずなのに溺愛してくる

ユユ
恋愛
私の婚約者と幼馴染の婚約者が浮気をしていた。 私も幼馴染も婚約破棄をして、醜聞付きの売れ残り状態に。 浮気された者同士の婚姻が決まり直ぐに夫婦に。 白い結婚という条件だったのに幼馴染が変わっていく。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

【完結】8私だけ本当の家族じゃないと、妹の身代わりで、辺境伯に嫁ぐことになった

華蓮
恋愛
次期辺境伯は、妹アリーサに求婚した。 でも、アリーサは、辺境伯に嫁ぎたいと父に頼み込んで、代わりに姉サマリーを、嫁がせた。  辺境伯に行くと、、、、、

魔力ゼロの出来損ない貴族、四大精霊王に溺愛される

日之影ソラ
ファンタジー
魔法使いの名門マスタローグ家の次男として生をうけたアスク。兄のように優れた才能を期待されたアスクには何もなかった。魔法使いとしての才能はおろか、誰もが持って生まれる魔力すらない。加えて感情も欠落していた彼は、両親から拒絶され別宅で一人暮らす。 そんなある日、アスクは一冊の不思議な本を見つけた。本に誘われた世界で四大精霊王と邂逅し、自らの才能と可能性を知る。そして精霊王の契約者となったアスクは感情も取り戻し、これまで自分を馬鹿にしてきた周囲を見返していく。 HOTランキング&ファンタジーランキング1位達成!!

排卵誘発♡発情カラコン

コウシ=ハートフルボッコ
ファンタジー
(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14531236)

処理中です...