情事の事情

るなかふぇ

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ほづとしのりんの場合

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 思ったとおり、ほづは部屋に入ってくるなり大きなバッグを玄関先に放り出して、まずはぼくを抱きしめた。

「あ~。これこれ。シノの匂い。ほっとするわ~」
 嬉しそうに、人の髪の匂いをくんくん嗅いでる。ちょっと犬みたい。
「もう、ダメだよ。まだお風呂、入ってないし……」
「バッカ。そこがいいんじゃね?」

 笑ってそう言い、ぼくのおでこにチュッとキスを落とす。
 本当は、お風呂に入ってないっていうのは正確じゃない。ほづが来るって分かっている日は、会うまでに必ず、大事なところはきれいにしておく。そのとき、簡単にシャワーだけは浴びるから。
 ほづは僕よりずっと背が高い。まあ、僕が生物学的な男子としては低すぎるだけだけど。
 だから、ぼくからほづにキスしたいときは、彼の首に腕を回して一生懸命背伸びをしなくちゃならない。
 それに気づいたほづがちょっとかがんでくれて、やっとその唇に吸いつける。
 でも、舌はまだ絡めない。
 そこまでやっちゃうと、もうほづに火がついちゃうから。
 前にそれで、料理がすっかり冷めちゃうまでベッドで過ごす羽目になっちゃったからね。


「おお、すげえな。今日も美味そう」

 テーブルの上の料理を見ると、ほづは素直に嬉しそうな顔になった。
 ふふ、お腹の虫が鳴りまくってるのが聞こえるみたい。
 ほづは足早に洗面所に向かい、ぼくはその間にご飯やみそ汁をよそっておく。
 時間がないから出来合いのから揚げなんかも色々置いてるけど、生姜焼きの丼は上手にできたかなと思う。

「ん~っ、うめえ。どれもこれも、めっちゃイケる」

 ほづが豪快に料理を口に運びはじめると、ぼくはすっごく幸せな気持ちになる。本当においしそうに何でもばくばく食べてくれるから、一緒に食べているとうきうきしてくる。
 小食な人をカレシにしてる人、「ちょっと物足りない」って言うらしいし。だれかが「おいしい、おいしい」って目の前でいっぱい食べてくれることって、こんなに幸せなんだなって実感する。

 大体の食事が終わるころには、お風呂の準備も終わってる。一緒に後片付けをしたら、ぼくらは一緒にお風呂に入る。
 ぼくの部屋はひとり暮らし世帯のためのものだから、お風呂はトイレと一緒になった狭い狭いユニットバスだ。その窮屈なバスタブに、ふたりでぎゅうぎゅうづめになる。
 狭くってたまらないけど、それが嬉しいんだからしょうがない。
 お湯が熱いとのぼせてしまうから、うちではやや温度は低め。寒くなってきたら、お湯を足せばいいだけだしね。
 でも大抵、それは必要ない。
 体を密着させてふざけ合い、お互いにあっちこっちくすぐりっこしたりしているうちに、ぼくのお尻のすぐ後ろにあるほづのものが、ぎんぎんに固くなってぼくを欲しがり始めるからだ。

 後ろからぼくを抱いてるほづの手が、だんだんいやらしく動き始める。脇腹を撫でて、胸の飾りをゆるゆるこねて。そこがこりこりになってくると、もうぴりぴりと脳の真ん中が痺れ始める。
 ホルモン剤のお陰でほんの少しだけ膨らんでいるぼくの胸を、ほづはいつも、大切に大切に包んで撫でてくれる。

「あ……んっ、ほ……ほづぅ」

 ぼくがお尻を揺らしてほづのものに擦りつけると、ほづは後ろからぼくの耳やら項やら首筋やらにいっぱいキスして、時には甘く噛んで痕をつける。
 だけどほづは、最近ではぼくの前のものには勝手に触らない。
 ぼくが自分の体について感じている嫌悪感のことが、少しずつ分かってきたからだ。
 でも、触れてもらうとやっぱり気持ちがいい。
 女の子だったら違う器官であるはずのそこは、女の子にとっても気持ちのいい場所らしいから、それは当然のことだけれど。

「……触っていいか。シノ」

 後ろから、熱い吐息と一緒にそう訊かれて、ぼくは首を縦にふる。

「……ん。さわって……」

 言った途端、きゅっとそこを握られて「きゃんっ!」っていうような、子犬みたいな声が出る。
 薬のせいで、そこは前よりもまた少し小さくなってる。ほづの大きな手で握られたら、ほとんど隠れてしまいそうだ。それでも、そこは十分に固くなってしっかりと欲望を主張している。
 お湯の中でくちゅくちゅと弄られて、たまらず腰をくねらせてしまう。

「んくっ……あうんっ……」
 ふ、と後ろから笑みを含んだ吐息が聞こえる。
「ほんっとお前……エロいよな」
「もうっ! なに言って……あ、あ……!」
 振り向いて文句を言おうとしたところへ、後ろへもずぶりと指を突きこまれて仰け反ってしまう。
 さっき、きれいにするためにだいぶほぐしてはあるけれど、それでもほづは、いつでもちゃんと準備してくれる。
 なんと言っても、ほづのって……大きいし。

 ちゃんとジェルやゴムも使ってするけれど、それでも最初はなかなか入らなくて、しかも結構痛くて、ちょっと泣きが入りそうになったもんだ。
 でも今は、もうそんなこともない。
 ほづの太い指が、ぼくの体の中のイイ場所をちゃんと覚えていてぐりぐりと押してくると、ぼくはもう何も考えられなくなっていく。

 はやく、欲しい。
 そこにほづのが……欲しい。

 そうやって体が悲鳴をあげだして、「はやく、ほづ、はやくぅ」って必死でお尻を振るしかできなくなってしまう。

「いいけど、シノ。一回出ようぜ」
「え、あ……!」
 そこで脇の下に腕を入れられて、ぼくはざばっと湯舟から上げられた。
「ここじゃまた、気分が悪くなるといけねえからよ」
「あ、うん……」

 そうなんだ。
 お湯の温度が低めでも、一回のぼせちゃったこと、あるんだよね。
 ほづはぼくを洗い場に立たせ、壁に手をつかせて後ろに立つ。ちゅ、ちゅっとまた肩とか首とかにキスを落とされながら、大きな手でやわやわと胸を愛撫され、脇腹から足の付け根までゆるゆるっと撫でられる。
 お尻をきゅっと掴まれて、また「あひっ」って変な声が出ちゃう。

 ああ、ダメ。もうダメ。
 はやく、来てよ。
 ほづ……来て。


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