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3 専属奴隷
しおりを挟む数日後。
計画どおり、中身がアロガンス皇帝ストゥルトになってしまったという美少年奴隷「インセク」は、晴れて「シンケルス」の専属奴隷になった。
「うい~っす。んで? 皇帝ちゃんはどんな感じよ」
《…………》
「うんうん、大変なのね。ごくろーさまー」
男はしばらく返事をしなかった。しまいにやってきたのは、押し殺した声の「やかましい」ひと言だけだ。きっと苦虫を噛みつぶしたような顔をしているに違いない。そう思うとレシェントの心はどうしても踊ってしまった。ひどい「リーダー」もあったものだ。
「ぷっくくく……」
《……笑うな》
「ぶふっ」
そう言われたら、逆にもうダメだった。
「ぶわっははははははは!」
《貴様……》
まったくもって面白い。涙が出るほど笑ったのは久しぶりだ。
普段あまり物事に動じないあのクソ真面目な男が、中身があのワガママ放題のどうしようもない皇帝である美少年に翻弄されているというのは、どう考えたって「面白い」一択だった。
時々連絡してくるリュクスも、端で見ていて面白くてしょうがないらしい。「ほんと、普段見られないような顔してるよ、シンジョウ」と、この間もこっそりと教えてくれたばかりだ。とても楽しげに。
しかしそれでもちゃんとその「皇帝ちゃん」の面倒も見ているところは、さすがクソ真面目近衛隊長「シンケルス」である。人望の篤さという点で、彼はこれまでのどのエージェントよりも素晴らしい才能を持っている。
人づきあいが器用にできることと、人からの信頼を得ることとは決して同義ではない。たとえ不器用でも、なぜか人の心をつかみ、頼りにされる。「あの人さえいてくれれば俺たちは大丈夫」と、そんな風に友軍の兵らに思わせることができる。それをみずから体現して見せるのがこの男だ。だからこそあの国で、近衛隊の隊長にまでのし上がれたのだとも言える。
「んで? なんかわかったのかよ。二人の心が入れ替わっちまったわけとかよ」
《いや、まったくダメだ。本人たちにも何の心当たりもないらしい。目覚めたら突然こうなっていたと。どちらも心底驚いて、ひどく戸惑っている。嘘を言っているようには見えん》
「ほーん。参ったねえ……」
レシェントはほりほりと顎を掻いた。こっちでも、あれから《イルカ》のAIである《アリス》とともに色々と情報を集めてはいる。だが今のところ、なんの手がかりもない状態だ。
これまでにはない、驚くべきファクターが入り込んだことで、今回のミッションが成功する確率は格段に下がってしまった。少なくとも《アリス》はそう見積もった。だからといって、ここで諦めるわけにもいかない。なにしろこの作戦には、自分たちの、ひいては未来の全人類の命運が懸かっているのだから。
「とにかくだな。皇帝ちゃんとインセク君にゃ悪いが、ひとまず入れ替わりをもとに戻すのは二の次だ。俺らの目的を忘れんな」
《……もちろんだ》
「ほんとわかってんのかねー」
自分たちの目的は、あくまでも帝国アロガンスを予定通りに長続きさせること。しかもなるべく平和裏に。そのためには、皇帝ストゥルトが以前のようなただの愚帝のままでは困る。
当初の予定としては、側近になったシンケルスと文官として潜り込んでいるリュクスが動いて、なんとかしてあのどうしようもない愚帝をどうにかするはずだった。別に「賢帝」にまで育てる必要はない。きちんと会議に出席し、側近たちの意見をちゃんと聞いて冷静に判断できる、せいぜいが「普通の皇帝」であってくれればいいだけだ。
「その意味じゃ、別に俺らは皇帝の中身が今のまま、賢くて責任感のあるインセク君であってもなんも困りゃしねえ。むしろそっちのほうがよっぽど物分かりもいいし、俺らに協力的なんだよな?」
《それは……そうだが》
シンジョウの返事は、なんとなく奥歯にものが挟まったみたいになった。
まあわかる。この男の性格なら、皇帝ちゃんのほうはともかく、単なる被害者にすぎないインセクの方は助けてやりたいと思うだろう。
彼は自分の一族郎党を滅ぼされて散り散りにされた、とある北方の族長の息子だという。それがあの綺麗な顔のため、捕虜にされて薄汚い男どもの性奴隷に落とされた。
実に気の毒だが、そんなのは古代世界ではどこにでもあった話だ。そういう子供を全部救っていたら、エージェントチームがいくつあっても足りはしない。だが、それで納得しないのがシンジョウという男なのだ。
レシェントはテーブルに組んだ足を乗せるという行儀の悪い格好をして鼻を鳴らした。
「ま、しょーがねえべ? 俺らの目的を果たした上でなんとかなりそうなら協力はする。だが、飽くまでもそいつは『モノのついで』だ。そこんとこ忘れんなよ? シンちゃん」
《……了解した》
男はやっぱり、どこか不満げな様子で通信を切った。
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