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第四章 地下世界
6 蜜 ※
しおりを挟むすべてを吐き出したフランが、目を閉じたまま荒い息をついている。
彼のそこからかなりの勢いで吐き出されたそれは、とろりと甘い匂いがしていた。不思議に思って彼の腹の上に散ったそれに指を這わせ、少し掬って舐めてみる。
(なんっだ、こりゃあ……!?)
驚いた。
同じような白濁をしていても、それは人間の男のそれとはまるきり違うものだった。人間のものは青臭く、苦くて舐められたものではない。だが、彼のそれは香りもよく、むしろ積極的に舐めたくなるような甘さだったのだ。
ヴォルフは思わず、彼の両足を押し広げ、下腹に顔を寄せた。
ぴちゃぴちゃと彼の臍のあたりを舐める。
「あ……あ。ヴォル……フ」
まだ朦朧としていたフランが、次第に何が起こっているのかを認識して慌て始めた。
「だっ、ダメだよ……。そんなの、しないで……」
やめさせようと伸びてくる手を握って制し、ヴォルフはそこをぴちゃぴちゃと舐め続けた。少しずつ下へ移動し、やがてくたりとなっている彼のものへと舌は這わす。
べろりと竿を舐めてやったら、彼の腰がまたびくんと跳ねた。
「あっ……あんっ!」
構わずべろべろと舐め続ける。アイスキャンデーさながらだ。
「やめて……あんっ、だめ……あんんっ!」
「うるせえ。ちゃんと舐めさせろっつの」
「ひゃああんっ!」
遂にぱくりと咥えこんでやったら、フランは激しく首を横にふった。頬裏で刺激してやりながら、舌でちろちろと裏筋も舐めてやる。彼の足がびくびく震えているのがわかる。
(こりゃあ……たまんねえ)
どうしようもなく、興奮する。ヴォルフのそれも、すでにギンギンになって「もう待てない」と主張している。
ブチ込みたい。いま、すぐにも。
彼のものから口を放さないまま、ヴォルフは彼の茂みをまさぐり、袋をまたやわやわと可愛がってやってから、そろそろとその奥へと指を進めた。
ぴくっと彼の尻が跳ね上がる。
「ふあ……あはんんっ」
と、指先にぬるりとした感触があって、ヴォルフは不思議に思った。いや、最初は彼の放ったものがそちらへ垂れたのだろうと思ったのだが。
(ん……?)
どうも違う。もう少しまさぐってみると、奥まったその場所がひくひくと口を開いてぬるぬるに濡れているのが分かった。
男であったら、絶対に勝手には濡れない場所が。
思い切ってゆっくりと中指を突き入れてみて、ヴォルフは確信した。
(こりゃあ……。すげえな)
間違いない。彼のこの場所は、こういう行為の場合に興奮させると、恐らく勝手に濡れるのだ。まるで、人間の女のように。
それに気づいた途端、ぐわっと脳天に血液が逆流したような気になった。
それでやっと理解した。
彼が言った、あの言葉をだ。
──『僕らは男性にも、女性にもなれるんだ』。
(くそっ……!)
挿入れたい。すぐにも。
堪らない。
こんなに興奮するのは久しぶりだった。もしかすると、はじめて女の体を知った、てんで青二才の時以来かもしれなかった。
ずぷずぷと中指を彼の奥へ進ませて、ぐりぐりと中をさぐる。
「ひ! あひっ……!」
感度のいい彼の体は、いちいちぴくぴくと反応している。
狭い内側はとろとろに濡れ、ひどく熱くなっていた。彼の内臓の襞が指を包み込み、吸いついて、無言のうちにも「もっと、もっと」と先を欲しがっているのがはっきりと分かる。
ヴォルフは指を二本に増やし、ゆるゆるとその部分を押し広げた。
もちろん、口で彼のものを愛撫するのも忘れない。
と、こりっととある部分に指先が振れ、フランが高い声をあげた。
「あう……あうんっ……! くうんっ」
どうやら、ここがイイ場所らしい。ヴォルフは頭の中にしっかりとその場所をメモしておく。
フランはもう、翻弄されすぎてずっと首を横に振り続けている。随分、気持ちがいいらしい。口はさっきから開けっ放しで、そこからちろちろと舌を見せ、よだれを垂らしている。
だらしないが、ひどく可愛い顔だった。
だが、まだだ。ヴォルフはさらに、指を三本に増やしてやる。十分に準備しなければ、恐らく凶悪な自分のものは彼の内部を傷つけるからだ。
当然ながらヴォルフ自身も、限界まで自分の自制心を試されることになった。
「ヴォル……も、やだ……やだあっ」
フランがもう半狂乱に近い声で哀願し、涙をこぼして腰をくねらせている。
「い、いいからあっ。はや……く、お願っ……はやくう──」
それでやっと、ヴォルフは彼のものから口を離した。そこはすっかり、再び力を取り戻してぐっと屹立してしまっている。ヴォルフの唾液と彼自身の精液で、てらてらとピンク色に光っていた。
ヴォルフは彼の両足を持ち上げると、出来るだけ大きく押し開いた。
呼吸の浅くなったフランが口を開いたまま、うっとりとこちらを見上げてくる。
ヴォルフは一度、上体をかがめて彼のその唇にキスをした。ねっとりと舌を絡めてやると、彼もこちらの首に腕を回して夢中になって応えてくれる。
先端を彼のそこにあてがうと、彼がゆるりと目を閉じ、息をついた。
ゆっくりと腰を進める。下からぬちぬちと淫靡な水音がして、濡れそぼったそこがヴォルフのものを受け入れていく。
「は……ふ、う……んっ」
ああ、狭い。熱い。
そして、めちゃくちゃにぬるぬるだ。絡みついてくる。
内側が、ヴォルフのものに吸いついてうねうねと震えている。
ヴォルフの全部を欲しがっている。
正直いって、気持ちがいいなんてものじゃなかった。
これまで抱いてきた女など、目じゃなかった。
控えめに言って、最高。
まさに最高の体だった。
「は、ああ……ん」
フランが全身をひくつかせながら、ヴォルフの全部を受け入れている。全身から、悦びが溢れ出るようだった。
◆
男たちが立ち去ってから、タチアナはそろそろと隠れ場所から這い出てみた。ほとんど四つん這いのまま、そうっと木立の間からバギーの方をうかがってみる。
男たちは、一人を残してみんなその場からは消えていた。あのままヴォルフたちを探しに行ったのだろう。
今、バギーのそばには連中の中でも最も立場が低いらしい痩せた男が立っている。確か、名前はピットといったはずだ。男は一応レイ・ガンを手にしているものの、いかにも手持ち無沙汰な顔でうろうろと近くを歩き回る様子だった。
タチアナは手元のレイ・ガンの出力モードを切り替えた。この銃は出力を抑えることで、相手に衝撃派だけを叩きつけて昏倒させることが可能なのだ。
別に、殺す必要まではない。気を失わせ、バギーに常備してある睡眠剤でも投与して眠らせておくだけでことは足りる。そのままマレイアス号に連れて戻り、簡易の軍法会議に掛けて、あとは冷凍睡眠させておけばいいだけなのだ。つまり、本部に戻ってあらためて本式の軍法会議にかけるまで。
少しずつ場所を移動して男に近づいていくと、タチアナはレイ・ガンの狙いを定めた。
男はいま、平和そのものの森の中にちょっと入ったところで、何やらうつむいてごそごそしている。
(……好都合ね)
男のしていることに気が付いて、心密かに苦笑した。
男はそこで、暢気に立ち小便をしていたのだ。くああ、といかにも退屈そうに欠伸までしている。
タチアナは再び狙いを定めた。
そうして男の背中に向かって、躊躇なく引き金をひいた。
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