58 / 72
第四十九椀
お疲れに「レバニラ炒め」。心身のストレスもすっ飛ばします
しおりを挟む
疲れた。
あんまり疲れた疲れたと口に出すのもよくないのだけど、今日はほんとうに疲れてしまった。
会社ではこってりと神経をすり減らし、ようやく仕事を終えて家路につくと、そんな時に限って電車はいつにも増して混んでいる。
超満員、乗車率120%、立錐の余地もない、さまざまな表現があるけれど、実際に経験しないとわからないだろう。
人間同士が直方体の箱にぎゅうぎゅう詰めになり、四方八方から圧迫されて、とんでもない格好のままじっとしていなくてはならない。
小柄なぼくはよくおじさんの肘がみぞおちに食い込んだり、おじさんの鼻息が脳天にふかふかかかったり、肩のあたりにスポーツ新聞を置かれたりしてなかなかスリリングだ。
そういう自分ももう立派なおじさんなのだから偉そうに言えないけど、まあお互いさまだと諦めることにしている。
ぜんたい、車内でのマナーがよろしくないのは我々おじさん世代が目立つように思えて仕方がない。
むしろぼくの印象では最近の若い人たちのほうがしゃきっとしていて、さりげなくお年寄りに席を譲ってあげるのも若者が多い。
いろいろと気になる車内での態度のうちで、ぼくがいちばん引っかかるのは座席で大股を開いて幅を取っている人だ。
ちょいと脚を閉じれば他の人が座れるのに。
たぶん内股の筋肉が退化してうまく閉じられなくなっているのだろうけど、前から見ると脚が「ひし型」のおじさんが結構いらっしゃる。
写メでも撮って一度見せてあげたいと思うのだけど。
いやはや、気が弱っているのかついつい愚痴っぽくなってしまう。
満員電車に揺られる、というのもサラリーマンの風情だと思えるほど達観できるといいのだけど、これがじわじわとストレスになって溜まっていくのだ。
誰かのスマホがぴろぴろ鳴ったり、すぐ近くの人のくちゃくちゃ口を動かす音が聞こえたりして、まともにいらいらすることも少なくない。
イヤホンで音楽を聞いてやり過ごすようにしているけれど、ぼくが朝早めに会社に行くようにしているのは、ひとつには満員電車のピーク時を避ける意図もある。
しかし、なんだかんだと言いながらも仕事があってご飯が食べられるというのは、本当にありがたいことなのだ。
ぼくは最初に就職した会社でうまくやっていくことができず、心身ともにぐたぐたに疲れ切ってやめてしまった。
その後、派遣社員としてほかの会社に勤め、正規雇用の話が出始めた頃にまだ記憶に新しい世界的な金融恐慌に見舞われた。
社員登用の件は白紙に戻り、いわゆる派遣切りの形で契約期間満了となった。
その後は就職活動はおろか、派遣やアルバイトの仕事もなかなか得られないという状態がしばらく続いた。
スポットや短期の校正業務でなんとか食いつなぎ、その間に何社も面接を受けたけど、当時の企業側の対応はほんとうに厳しかった。
「あなたのキャリアでは非常に不利です」
「最初の会社、やめなきゃよかったのにね」
「一度レールから外れると、ねえ」
どれも実際に面接官に言われたことで、くやしいとかどうとかよりも、ただひたすら情けなかった。
選ぶ側と、選んでもらおうとする側の圧倒的な立場の差があって、ぼくには選んでもらえるだけの力がなかっただけなのだ。
小説を書く、という趣味ができたのはなぜかそういう時期だった。
思うようにならない現実から目を背けたかったのか、毎日悶々としていた副作用が創作意欲として表れたのか、今となってはもうわからない。
けれど、自分のなかからとめどなくあふれてくる様々な世界や、魅力的な人々が織り成す物語は、ぼくにとってささやかな勇気になったのは確かだ。
それからある派遣先の職場で伊緒さんと知り合って、結婚して、いまの会社に入社した。
小説は相変わらず賞には落選し続けているけど、いくつかの投稿サイトに発表したものをたくさんの人が読んでくれて、すごく励みになっている。
ぼくは超満員の電車でサンドイッチになるたび、繰り返しそんな来し方を思い出すのだった。
ヨタヨタとオンボロアパートの階段下までたどり着くと、芳しく刺激的な匂いが漂ってきた。
ほかに何部屋にも住人がいて、それぞれご飯時だろうに、不思議なことに伊緒さんがつくってくれた料理の匂いがぼくにははっきり分かる。
途端に覚醒して、なるべく元気よく帰宅できるよう曲がっていた背筋をしゃんと伸ばして、ネクタイも整える。
「ただいまですー」
明るい声で玄関ドアを開けると、いつものように伊緒さんが出迎えてくれた。
「おかえりなさい、晃くん」
ふわっと小さな花が咲くような彼女の笑顔を見ると、いまだに胸がきゅうん、としてしまう。
今日みたいに弱っているときはなおさらで、自分で照れてとっさに、
「めちゃくちゃいい匂いですね!」
と、結局ご飯の話題にしてしまった。
でもほんとうに、中華屋さんののれんをくぐったときのような食欲をそそる香りが立ち込めている。
「ふふ。そうでしょう!すぐ食べられますからね」
伊緒さんはそう言って、ぼくが着替えたり手洗いうがいをしたりしている間にとんとんとん、と食卓を整えてくれている。
いつもながらまったくお大尽だなあ、と感謝しながら席につく。
「おお!レバニラ炒めですか!」
そこにはスタミナ料理の金字塔がででん、と鎮座していた。
「明日はおやすみだから、いいよね?」
伊緒さんがニコニコしながらご飯をよそって手渡してくれる。
ぼくは仕事で人と会うことが多いので、普段はあまり匂いの強いものは控えるように彼女も配慮してくれている。
でも、ほんとうはこんな力のつきそうなものを食べたくて仕方ないときもあるのだ。
まさしく今宵はそんな日だ。
喜んで手を合わせて、ふたり同時に「いただきます」と元気よく唱える。
レバー、ニラ、もやし、たまねぎ。
シンプルな材料だけどいずれも疲労回復にぴったりな、栄養満点のお料理だ。
箸先でがばっ、と野菜を摘むと、閉じ込められていた湯気とともに一層強く香りが立った。
ほおばって噛みしめると、しゃきりっしゃきりっ、と歯切れのいい音が響いてなんだか耳からも栄養をとっているみたいだ。
主役のレバーも、一口かじった瞬間に
「むっ!できる!」
という雰囲気を感じさせる、ひと味違った食感をまとっている。
火を通すとパサつきがちになるのに、全体にもっちりとやわらかく、厚手のハムのような口当たりだ。
「片栗粉をはたいて、サッと揚げてあるの」
伊緒さんの解説で、このレバーのおいしさに得心がいく。
それで表面が香ばしくコーティングされて、ふんわり旨みが閉じ込められているんだ。
ご飯がものすごくよく進む。
「よかった。たくさん食べてくれて。ここ最近お疲れのようだったから」
さらりと言った伊緒さんの言葉に、内心ギクッとした。
お家ではあんまり疲れた顔を見せたくないので、いつもどおりに振る舞うよう心がけていたはずだ。
ちゃんと、見てくれているんだ――。
さりげなく、でも温かく自分を待ってくれる人がいる。
それだけでもう、どんなにしんどくても頑張れると思う。
じっとりと染みついた疲れは、いつの間にかどこかへ吹き飛んでいた。
大きな声で
「おかわり!」
と差し出したお茶碗を、伊緒さんが弾けるような笑顔で受け取った。
あんまり疲れた疲れたと口に出すのもよくないのだけど、今日はほんとうに疲れてしまった。
会社ではこってりと神経をすり減らし、ようやく仕事を終えて家路につくと、そんな時に限って電車はいつにも増して混んでいる。
超満員、乗車率120%、立錐の余地もない、さまざまな表現があるけれど、実際に経験しないとわからないだろう。
人間同士が直方体の箱にぎゅうぎゅう詰めになり、四方八方から圧迫されて、とんでもない格好のままじっとしていなくてはならない。
小柄なぼくはよくおじさんの肘がみぞおちに食い込んだり、おじさんの鼻息が脳天にふかふかかかったり、肩のあたりにスポーツ新聞を置かれたりしてなかなかスリリングだ。
そういう自分ももう立派なおじさんなのだから偉そうに言えないけど、まあお互いさまだと諦めることにしている。
ぜんたい、車内でのマナーがよろしくないのは我々おじさん世代が目立つように思えて仕方がない。
むしろぼくの印象では最近の若い人たちのほうがしゃきっとしていて、さりげなくお年寄りに席を譲ってあげるのも若者が多い。
いろいろと気になる車内での態度のうちで、ぼくがいちばん引っかかるのは座席で大股を開いて幅を取っている人だ。
ちょいと脚を閉じれば他の人が座れるのに。
たぶん内股の筋肉が退化してうまく閉じられなくなっているのだろうけど、前から見ると脚が「ひし型」のおじさんが結構いらっしゃる。
写メでも撮って一度見せてあげたいと思うのだけど。
いやはや、気が弱っているのかついつい愚痴っぽくなってしまう。
満員電車に揺られる、というのもサラリーマンの風情だと思えるほど達観できるといいのだけど、これがじわじわとストレスになって溜まっていくのだ。
誰かのスマホがぴろぴろ鳴ったり、すぐ近くの人のくちゃくちゃ口を動かす音が聞こえたりして、まともにいらいらすることも少なくない。
イヤホンで音楽を聞いてやり過ごすようにしているけれど、ぼくが朝早めに会社に行くようにしているのは、ひとつには満員電車のピーク時を避ける意図もある。
しかし、なんだかんだと言いながらも仕事があってご飯が食べられるというのは、本当にありがたいことなのだ。
ぼくは最初に就職した会社でうまくやっていくことができず、心身ともにぐたぐたに疲れ切ってやめてしまった。
その後、派遣社員としてほかの会社に勤め、正規雇用の話が出始めた頃にまだ記憶に新しい世界的な金融恐慌に見舞われた。
社員登用の件は白紙に戻り、いわゆる派遣切りの形で契約期間満了となった。
その後は就職活動はおろか、派遣やアルバイトの仕事もなかなか得られないという状態がしばらく続いた。
スポットや短期の校正業務でなんとか食いつなぎ、その間に何社も面接を受けたけど、当時の企業側の対応はほんとうに厳しかった。
「あなたのキャリアでは非常に不利です」
「最初の会社、やめなきゃよかったのにね」
「一度レールから外れると、ねえ」
どれも実際に面接官に言われたことで、くやしいとかどうとかよりも、ただひたすら情けなかった。
選ぶ側と、選んでもらおうとする側の圧倒的な立場の差があって、ぼくには選んでもらえるだけの力がなかっただけなのだ。
小説を書く、という趣味ができたのはなぜかそういう時期だった。
思うようにならない現実から目を背けたかったのか、毎日悶々としていた副作用が創作意欲として表れたのか、今となってはもうわからない。
けれど、自分のなかからとめどなくあふれてくる様々な世界や、魅力的な人々が織り成す物語は、ぼくにとってささやかな勇気になったのは確かだ。
それからある派遣先の職場で伊緒さんと知り合って、結婚して、いまの会社に入社した。
小説は相変わらず賞には落選し続けているけど、いくつかの投稿サイトに発表したものをたくさんの人が読んでくれて、すごく励みになっている。
ぼくは超満員の電車でサンドイッチになるたび、繰り返しそんな来し方を思い出すのだった。
ヨタヨタとオンボロアパートの階段下までたどり着くと、芳しく刺激的な匂いが漂ってきた。
ほかに何部屋にも住人がいて、それぞれご飯時だろうに、不思議なことに伊緒さんがつくってくれた料理の匂いがぼくにははっきり分かる。
途端に覚醒して、なるべく元気よく帰宅できるよう曲がっていた背筋をしゃんと伸ばして、ネクタイも整える。
「ただいまですー」
明るい声で玄関ドアを開けると、いつものように伊緒さんが出迎えてくれた。
「おかえりなさい、晃くん」
ふわっと小さな花が咲くような彼女の笑顔を見ると、いまだに胸がきゅうん、としてしまう。
今日みたいに弱っているときはなおさらで、自分で照れてとっさに、
「めちゃくちゃいい匂いですね!」
と、結局ご飯の話題にしてしまった。
でもほんとうに、中華屋さんののれんをくぐったときのような食欲をそそる香りが立ち込めている。
「ふふ。そうでしょう!すぐ食べられますからね」
伊緒さんはそう言って、ぼくが着替えたり手洗いうがいをしたりしている間にとんとんとん、と食卓を整えてくれている。
いつもながらまったくお大尽だなあ、と感謝しながら席につく。
「おお!レバニラ炒めですか!」
そこにはスタミナ料理の金字塔がででん、と鎮座していた。
「明日はおやすみだから、いいよね?」
伊緒さんがニコニコしながらご飯をよそって手渡してくれる。
ぼくは仕事で人と会うことが多いので、普段はあまり匂いの強いものは控えるように彼女も配慮してくれている。
でも、ほんとうはこんな力のつきそうなものを食べたくて仕方ないときもあるのだ。
まさしく今宵はそんな日だ。
喜んで手を合わせて、ふたり同時に「いただきます」と元気よく唱える。
レバー、ニラ、もやし、たまねぎ。
シンプルな材料だけどいずれも疲労回復にぴったりな、栄養満点のお料理だ。
箸先でがばっ、と野菜を摘むと、閉じ込められていた湯気とともに一層強く香りが立った。
ほおばって噛みしめると、しゃきりっしゃきりっ、と歯切れのいい音が響いてなんだか耳からも栄養をとっているみたいだ。
主役のレバーも、一口かじった瞬間に
「むっ!できる!」
という雰囲気を感じさせる、ひと味違った食感をまとっている。
火を通すとパサつきがちになるのに、全体にもっちりとやわらかく、厚手のハムのような口当たりだ。
「片栗粉をはたいて、サッと揚げてあるの」
伊緒さんの解説で、このレバーのおいしさに得心がいく。
それで表面が香ばしくコーティングされて、ふんわり旨みが閉じ込められているんだ。
ご飯がものすごくよく進む。
「よかった。たくさん食べてくれて。ここ最近お疲れのようだったから」
さらりと言った伊緒さんの言葉に、内心ギクッとした。
お家ではあんまり疲れた顔を見せたくないので、いつもどおりに振る舞うよう心がけていたはずだ。
ちゃんと、見てくれているんだ――。
さりげなく、でも温かく自分を待ってくれる人がいる。
それだけでもう、どんなにしんどくても頑張れると思う。
じっとりと染みついた疲れは、いつの間にかどこかへ吹き飛んでいた。
大きな声で
「おかわり!」
と差し出したお茶碗を、伊緒さんが弾けるような笑顔で受け取った。
1
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
フローライト
藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。
ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。
結婚するのか、それとも独身で過ごすのか?
「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」
そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。
写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。
「趣味はこうぶつ?」
釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった…
※他サイトにも掲載
猫と幼なじみ
鏡野ゆう
ライト文芸
まこっちゃんこと真琴と、家族と猫、そして幼なじみの修ちゃんとの日常。
ここに登場する幼なじみの修ちゃんは『帝国海軍の猫大佐』に登場する藤原三佐で、こちらのお話は三佐の若いころのお話となります。藤原三佐は『俺の彼女は中の人』『貴方と二人で臨む海』にもゲストとして登場しています。
※小説家になろうでも公開中※
【本編完結】繚乱ロンド
由宇ノ木
ライト文芸
番外編更新日 12/25日
*『とわずがたり~思い出を辿れば~1 』
本編は完結。番外編を不定期で更新。
11/11,11/15,11/19
*『夫の疑問、妻の確信1~3』
10/12
*『いつもあなたの幸せを。』
9/14
*『伝統行事』
8/24
*『ひとりがたり~人生を振り返る~』
お盆期間限定番外編 8月11日~8月16日まで
*『日常のひとこま』は公開終了しました。
7月31日
*『恋心』・・・本編の171、180、188話にチラッと出てきた京司朗の自室に礼夏が現れたときの話です。
6/18
*『ある時代の出来事』
6/8
*女の子は『かわいい』を見せびらかしたい。全1頁。
*光と影 全1頁。
-本編大まかなあらすじ-
*青木みふゆは23歳。両親も妹も失ってしまったみふゆは一人暮らしで、花屋の堀内花壇の支店と本店に勤めている。花の仕事は好きで楽しいが、本店勤務時は事務を任されている二つ年上の林香苗に妬まれ嫌がらせを受けている。嫌がらせは徐々に増え、辟易しているみふゆは転職も思案中。
林香苗は堀内花壇社長の愛人でありながら、店のお得意様の、裏社会組織も持つといわれる惣領家の当主・惣領貴之がみふゆを気に入ってかわいがっているのを妬んでいるのだ。
そして、惣領貴之の懐刀とされる若頭・仙道京司朗も海外から帰国。みふゆが貴之に取り入ろうとしているのではないかと、京司朗から疑いをかけられる。
みふゆは自分の微妙な立場に悩みつつも、惣領貴之との親交を深め養女となるが、ある日予知をきっかけに高熱を出し年齢を退行させてゆくことになる。みふゆの心は子供に戻っていってしまう。
令和5年11/11更新内容(最終回)
*199. (2)
*200. ロンド~踊る命~ -17- (1)~(6)
*エピローグ ロンド~廻る命~
本編最終回です。200話の一部を199.(2)にしたため、199.(2)から最終話シリーズになりました。
※この物語はフィクションです。実在する団体・企業・人物とはなんら関係ありません。架空の町が舞台です。
現在の関連作品
『邪眼の娘』更新 令和6年1/7
『月光に咲く花』(ショートショート)
以上2作品はみふゆの母親・水無瀬礼夏(青木礼夏)の物語。
『恋人はメリーさん』(主人公は京司朗の後輩・東雲結)
『繚乱ロンド』の元になった2作品
『花物語』に入っている『カサブランカ・ダディ(全五話)』『花冠はタンポポで(ショートショート)』
スパイスカレー洋燈堂 ~裏路地と兎と錆びた階段~
桜あげは
ライト文芸
入社早々に躓く気弱な新入社員の楓は、偶然訪れた店でおいしいカレーに心を奪われる。
彼女のカレー好きに目をつけた店主のお兄さんに「ここで働かない?」と勧誘され、アルバイトとして働き始めることに。
新たな人との出会いや、新たなカレーとの出会い。
一度挫折した楓は再び立ち上がり、様々なことをゆっくり学んでいく。
錆びた階段の先にあるカレー店で、のんびりスパイスライフ。
第3回ライト文芸大賞奨励賞いただきました。ありがとうございます。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
ことりの台所
如月つばさ
ライト文芸
※第7回ライト文芸大賞・奨励賞
オフィスビル街に佇む昔ながらの弁当屋に勤める森野ことりは、母の住む津久茂島に引っ越すことになる。
そして、ある出来事から古民家を改修し、店を始めるのだが――。
店の名は「ことりの台所」
目印は、大きなケヤキの木と、青い鳥が羽ばたく看板。
悩みや様々な思いを抱きながらも、ことりはこの島でやっていけるのだろうか。
※実在の島をモデルにしたフィクションです。
人物・建物・名称・詳細等は事実と異なります
サクラ舞い散るヤヨイの空に
志波 連
ライト文芸
くるくるにカールさせたツインテールにミニスカート、男子用カーデガンをダボっと着た葛城沙也は、学内でも有名なほど浮いた存在だったが、本人はまったく気にも留めず地下アイドルをやっている姉の推し活に勤しんでいた。
一部の生徒からは目の敵にされ、ある日体育館裏に呼び出されて詰問されてしまう沙也。
他人とかかわるのが面倒だと感じている飯田洋子が、その現場に居合わせつい止めに入ってしまう。
その日から徐々に話すことが多くなる二人。
互いに友人を持った経験が無いため、ギクシャクとするも少しずつ距離が近づきつつあったある日のこと、沙也の両親が離婚したらしい。
沙也が泣きながら話す内容は酷いものだった。
心に傷を負った沙也のために、洋子はある提案をする。
他のサイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより引用しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる