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~元聖女の皇子と元黒竜の訳あり令嬢はまずは無難な婚約を目指すことにしました~
皇子の療養休暇 ③仮面
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床に落ちているのは、薄汚れた袋のように見えた。
拾い上げようとかがんだ拍子に、皇子の懐から、今度はピンク色の何かがコトリと落ちた。
「あら、それは、仮面茶話会の」
一目見て、エレノアが声を上げた。
「どこで手に入れられたのですか?」
「いや、湖で、みつけたのだが」
魔物の腹の中で人の手の一部と一緒に、とは、さすがに皇子も言うのを控えた。
「湖で?皇都の、ですか?どこのご令嬢が落とされたのかしら?きっと必死に探しておられますわ」
アルフォンソがマホガニーの床から拾い上げたのは、仮面舞踏会で着用される類の仮面だった。
顔の上半分をすっぽりと覆うようにデザインされた華奢な仮面は、縁取りにふんだんにパールが埋め込まれた豪華なもの。淡いピンクの蛍光塗料らしきもので彩色され、アーモンド形に切りこまれた目の部分にも同色のガラスがはめ込まれている。
明らかに貴族令嬢用と思われる、可愛らしいが実用性がなさそうな高価な作りだ。
「エレノア嬢はこれが何かご存じなのか?」
「え、これって、仮面茶話会への招待客に渡される仮面でしょう?招待状の代わりに?」
「仮面茶話会?」
「まさか、殿下、ご存じないんですか?今話題の茶話会を?主催者はサリナス辺境伯夫人ですよ?」
「サリナスと言うと・・・アマリアーナ姉上が?」
「『仮面の辺境伯』夫人が開く『仮面茶話会』。叔母が言うには、今や、その茶話会に御呼ばれすることが、若い令嬢の品位の証明になっているとか。実は、私、次回の会にご招待いただいおりますの。ぜひ、我が国の話がお聞きになりたいとのことで」
アマリアーナ・エイゼル・サリナス。
現辺境伯夫人はアルメニウス一世の長女であり、アルフォンソの2つ上の異母姉である。彼女が、北部一帯を治める辺境伯の後添いに入ったのは、およそ4年前だ。
彼女の夫、辺境伯エドモンド・サリナスとは・・・
現在、皇国の守りの要の一人ともいわれる人物で、名もなき兵士からその腕一つで今の地位を築き上げた、名だたる軍人でもある。
数々の武勲に加えて、建国以来続いてきた山岳民族との争いに終止符を打ったことでも知られる。実際、彼らを配下に組み込むこんだ功績を認められ、彼は、直系が絶え、実質的には空位だった辺境伯の地位を、15年前に受け継いだのだ。
前辺境伯の傍系の令嬢を妻に迎えることを条件に。
ゆくゆくは二人の子供が正統な辺境伯となるはずだったのだが、1年も経たないうちに奥方が亡くなった。
公的な発表によると、土砂崩れに馬車が巻き込まれるという、突然の不幸な事故で。
少なからぬ人々が、彼の妻の死は事故ではなく、自殺なのではないかと噂したが。
幸せな新妻が、何の理由もなく、土砂降りの真夜中に、馬車を出させて都へ急ぎ戻ろうとするだろうか?
誰もが、彼女の愚行は彼の名を国中に知らしめしたもう一つの事実に関係があると考えてもおかしくない。
仮面の辺境伯。
畏怖を込めて、あるいは憐れみを込めて、人々は彼をこう呼ぶ。
少年の頃に戦火に巻き込まれ顔に大けがをしたとかで、辺境伯は常に顔上半分を覆う武骨な仮面をつけており、傍に仕える臣下でさえその素顔を見たことはないと言われている。
肩まで野放図に伸ばされた髪の色はくすんだ茶色。仮面の穴から覗く双眸の色は青みがかった灰色。顔の下半分も、髪と同色の立派な口ひげと顎ひげで隠されているため、彼の風貌でわかるのは、それくらいだ。
当時、夫の素顔のあまりの醜さに、皇都育ちの深窓のご令嬢だった新妻は耐えられず死を選んだのだと、真しなやかに国中で囁かれたものだった。
高貴な血筋の妻を失った後も、このミステリアスな男の武人としての進撃は続いた。
指揮官としての彼の采配は見事なもので、常に敵味方共に最小限の犠牲で最大の戦果を挙げた。また、軍人としては稀有なことだが、彼は、見かけの猛々しさとは異なり、可能な限りにおいて、戦いより話し合いを選ぶことでも有名だった。
数年のうちに、彼の指揮の下、それまで蛮族の割拠する地として放置されていた最北の辺境地は統一され、名実ともに皇国の領土となった。
その褒賞として、辺境地の多くはそのまま辺境伯の領土として下賜され、彼はさらに広大な地を治めることとなったのである。
サリナス辺境伯は、顔のことを除けば、誰もが認める良き支配者であり、皇国の忠臣であった。
有事では先頭に立って戦う優秀な武人であり、平時では、かつての敵をも公平に評価して受け入れる懐の深さを持ち、庇護する民への配慮を忘れない領主としての評価も高い。現に、かつて激しく対立しあった山岳民族の多くは彼を主君と仰ぎ、今や彼の直属軍の一角をなしている。
けれど、この軍神のごとき男にとっても、新妻の事故死はよほど堪えたのか。
惨劇から10年以上が経った後も、彼の地位や人柄にほれ込んだ高位貴族たちがどんなに彼との縁組を望もうとも、頑として首肯しようとしなかったのだが。
4年前の彼と皇国第一王女アマリアーナとの婚姻は一大ニュースであった。
すでに、自国や他国のダンジョン攻略に出かけていたアルフォンソの耳に入るくらいには。
皇国の若き第一王女と20歳以上年上のいわくつきの辺境伯との結婚。
辺境伯が率いる軍事力を王家の懐刀として確実に取り込むための政略結婚だとか、山岳地帯でのみとれる希少鉱物の採掘権と引き換えに結ばれた取引婚だとか、口さがない民人が噂していたのを、アルフォンソは思い出した。
拾い上げようとかがんだ拍子に、皇子の懐から、今度はピンク色の何かがコトリと落ちた。
「あら、それは、仮面茶話会の」
一目見て、エレノアが声を上げた。
「どこで手に入れられたのですか?」
「いや、湖で、みつけたのだが」
魔物の腹の中で人の手の一部と一緒に、とは、さすがに皇子も言うのを控えた。
「湖で?皇都の、ですか?どこのご令嬢が落とされたのかしら?きっと必死に探しておられますわ」
アルフォンソがマホガニーの床から拾い上げたのは、仮面舞踏会で着用される類の仮面だった。
顔の上半分をすっぽりと覆うようにデザインされた華奢な仮面は、縁取りにふんだんにパールが埋め込まれた豪華なもの。淡いピンクの蛍光塗料らしきもので彩色され、アーモンド形に切りこまれた目の部分にも同色のガラスがはめ込まれている。
明らかに貴族令嬢用と思われる、可愛らしいが実用性がなさそうな高価な作りだ。
「エレノア嬢はこれが何かご存じなのか?」
「え、これって、仮面茶話会への招待客に渡される仮面でしょう?招待状の代わりに?」
「仮面茶話会?」
「まさか、殿下、ご存じないんですか?今話題の茶話会を?主催者はサリナス辺境伯夫人ですよ?」
「サリナスと言うと・・・アマリアーナ姉上が?」
「『仮面の辺境伯』夫人が開く『仮面茶話会』。叔母が言うには、今や、その茶話会に御呼ばれすることが、若い令嬢の品位の証明になっているとか。実は、私、次回の会にご招待いただいおりますの。ぜひ、我が国の話がお聞きになりたいとのことで」
アマリアーナ・エイゼル・サリナス。
現辺境伯夫人はアルメニウス一世の長女であり、アルフォンソの2つ上の異母姉である。彼女が、北部一帯を治める辺境伯の後添いに入ったのは、およそ4年前だ。
彼女の夫、辺境伯エドモンド・サリナスとは・・・
現在、皇国の守りの要の一人ともいわれる人物で、名もなき兵士からその腕一つで今の地位を築き上げた、名だたる軍人でもある。
数々の武勲に加えて、建国以来続いてきた山岳民族との争いに終止符を打ったことでも知られる。実際、彼らを配下に組み込むこんだ功績を認められ、彼は、直系が絶え、実質的には空位だった辺境伯の地位を、15年前に受け継いだのだ。
前辺境伯の傍系の令嬢を妻に迎えることを条件に。
ゆくゆくは二人の子供が正統な辺境伯となるはずだったのだが、1年も経たないうちに奥方が亡くなった。
公的な発表によると、土砂崩れに馬車が巻き込まれるという、突然の不幸な事故で。
少なからぬ人々が、彼の妻の死は事故ではなく、自殺なのではないかと噂したが。
幸せな新妻が、何の理由もなく、土砂降りの真夜中に、馬車を出させて都へ急ぎ戻ろうとするだろうか?
誰もが、彼女の愚行は彼の名を国中に知らしめしたもう一つの事実に関係があると考えてもおかしくない。
仮面の辺境伯。
畏怖を込めて、あるいは憐れみを込めて、人々は彼をこう呼ぶ。
少年の頃に戦火に巻き込まれ顔に大けがをしたとかで、辺境伯は常に顔上半分を覆う武骨な仮面をつけており、傍に仕える臣下でさえその素顔を見たことはないと言われている。
肩まで野放図に伸ばされた髪の色はくすんだ茶色。仮面の穴から覗く双眸の色は青みがかった灰色。顔の下半分も、髪と同色の立派な口ひげと顎ひげで隠されているため、彼の風貌でわかるのは、それくらいだ。
当時、夫の素顔のあまりの醜さに、皇都育ちの深窓のご令嬢だった新妻は耐えられず死を選んだのだと、真しなやかに国中で囁かれたものだった。
高貴な血筋の妻を失った後も、このミステリアスな男の武人としての進撃は続いた。
指揮官としての彼の采配は見事なもので、常に敵味方共に最小限の犠牲で最大の戦果を挙げた。また、軍人としては稀有なことだが、彼は、見かけの猛々しさとは異なり、可能な限りにおいて、戦いより話し合いを選ぶことでも有名だった。
数年のうちに、彼の指揮の下、それまで蛮族の割拠する地として放置されていた最北の辺境地は統一され、名実ともに皇国の領土となった。
その褒賞として、辺境地の多くはそのまま辺境伯の領土として下賜され、彼はさらに広大な地を治めることとなったのである。
サリナス辺境伯は、顔のことを除けば、誰もが認める良き支配者であり、皇国の忠臣であった。
有事では先頭に立って戦う優秀な武人であり、平時では、かつての敵をも公平に評価して受け入れる懐の深さを持ち、庇護する民への配慮を忘れない領主としての評価も高い。現に、かつて激しく対立しあった山岳民族の多くは彼を主君と仰ぎ、今や彼の直属軍の一角をなしている。
けれど、この軍神のごとき男にとっても、新妻の事故死はよほど堪えたのか。
惨劇から10年以上が経った後も、彼の地位や人柄にほれ込んだ高位貴族たちがどんなに彼との縁組を望もうとも、頑として首肯しようとしなかったのだが。
4年前の彼と皇国第一王女アマリアーナとの婚姻は一大ニュースであった。
すでに、自国や他国のダンジョン攻略に出かけていたアルフォンソの耳に入るくらいには。
皇国の若き第一王女と20歳以上年上のいわくつきの辺境伯との結婚。
辺境伯が率いる軍事力を王家の懐刀として確実に取り込むための政略結婚だとか、山岳地帯でのみとれる希少鉱物の採掘権と引き換えに結ばれた取引婚だとか、口さがない民人が噂していたのを、アルフォンソは思い出した。
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