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199 推しと管理者の発表
しおりを挟む「さて、集まって頂いて感謝する。手短に始めるが、まずはドラゴンの管理者であるカグラの素性を正式に発表する」
貴族が集まると、皇帝はそう言ってサッサと話を進める。
この潔さは中々爽快だなと、感心するくらいだ。
「…ジャメル家の方々もドラゴンの話を理解したと聞いているぞ」
「おやおや。平民もコレで肩の荷が降りたのでは?」
嫌な会話が聞こえて来るが、それも想定内だな。
「失礼な事を。ドラゴンは会話が出来たとしても、管理者は変わらんはずだ。ガンタレの二の舞になりたいのか」
「そうだ。前任の管理者と、カグラ殿の献身と活躍にどれ程助けられているか」
おお、流石に理解してる貴族の方が多そうで安心だよ。
「しかし…。平民の出ですよ?多くの良い縁談もあると聞いております。身の程知らずな」
「あら、何か問題がありますの?今は立派な伯爵ですわよ」
「ええ、それに素行や容姿もとても良い方ですもの。当然の良い縁談が舞い込んでいるだけでしょうに」
おお、女性達もバチバチだね。
面白いなと思っていると、ハンクにエスコートされたカグラが、先程よりはリラックスした表情で現れる。
おっと。
いつの間にお揃いに着替えてるのかなぁ~?
二人は揃いで仕立て上げられたであろう黒の燕尾服に身を纏っており、対になる様に肩から胸へ金色の刺繍が施されていた。
「…ハンク様よ」
「どうして、平民なんかに…」
おお、嫉妬の渦が目に見える様だ。
二人が前に出ると、スッとゼンドラル公爵も前に出て来る。
「ゼンドラル公爵が何故?」
「カグラ殿の後見人だからでは?」
不思議そうな周りをよそに、皇帝は立ち上がりカグラ達の元へ降りる。
「ドラゴンの言葉をジャメル一族の方々が理解できるとの話は、皆も耳にしたであろう。ホセ殿、ジェレミー殿こちらへ」
そして、ホセ兄様とジェレミー兄様が呼ばれる。
何事かと騒つく中、皇帝は声高に説明を始める。
「本日、お二人にはカグラの知らぬ所でドラゴンと会話をして来てもらった。その内容を発表して貰いたい」
わざわざカグラの知らない所って事は、カグラには言わなかった事があるって事だよね。
「やはり管理者が変更になるのでは?」
「ええ。平民上がりが管理者など、外見に悪いですものね」
皇帝が嫌らしい顔で嫌味を言う貴族を一瞥すると、流石に息をのんで黙る。
皇帝に促されたホセ兄様が、一歩踏み出した。
「トーレ王国、ジャメル侯爵ホセです。モモルル殿からの伝言を発表させて頂きます」
良く通る声で、発表が始まる。
「我々ジャメル家については友人が増えたと喜んでいる。だが、ドラゴンの管理者はカグラ殿以外は認めない。カグラ殿は心優しく、周りにも気を遣っているが、カグラ殿を悪く言い、嫌な思いをさせている貴族にドラゴンは気が付いている。そして特定も済んでいる。これ以上カグラ殿に不本意な悪意が向くのであれば、どこに居ようとも消し去るまで。こちらにその方々のリストも用意してあります。もちろん直ぐには攻撃はしないが、覚悟しておけとの事でした」
おお、モモルル結構言うね。
確かに怒り心頭って感じではあったし、特定も済んでるって事は本気だな。
ホセ兄様がリストを皇帝に差し出すと、皇帝はそのまま防衛大臣を呼び手渡した。
「もし帝都や周りに民が居たら大変だ。今後離れた土地に隔離する用意をしておけ」
「…ナング地区にある古い隔離塔などはいかがでしょう」
「うむ。良いな。手筈を頼む」
「早急に」
段取り早すぎない??
コレ絶対事前に話し合い終わってるヤツだよね。
チラリとカグラの事を悪く言っていた奴らを見ると、顔が青を通り越して白くなってるねぇ。
それでもギギギと音がしそうな目で、カグラを睨みつけている令嬢も居るけど。
「そして、カグラの身について話していない事がある。まぁ、ビーマ家出身との事で勘の良い貴族は気が付いているだろうが」
皇帝の言葉に、怪訝そうな顔をする貴族と、無論と言った感じで頷く貴族もいる。
「…どう言う事で?」
「ビーマ家をご存知で無いと?我が帝国有数の商家の一つでしょうに」
「たかが大農の一つでしょう?」
「先先代の皇帝が、降下なさったお家ですよ」
「!!!」
驚くよねぇ。
俺も聞いて驚いたもん。
先先代の皇帝は、息子がとても優秀であった事を見抜き、早々と引退したそうだ。
その時にはビーマ家の当主もお互いに妻を亡くしていた事と、良い仲になっていた事から、ひっそりと降下したのだとか。
トーレでも公爵家へ降下した女王がいらしたけど、こちらは爵位の無い平民へ降下だから、先先代の潔さが窺える。
「カグラの父親は現ビーマ家当主の三男。そして母親はここに居る、ゼンドラル公爵の末の妹ルルである」
「!!!」
つまり皇族とも関係があり、更に公爵家の血筋って事だね。
「…やはりな。ルル殿に良く似ていらっしゃる」
「ええ。ゼンドラル公爵が後見人にと聞いた時からもしやと思いましたけれど…」
「覚えていますわ。あまり社交にはお顔を見せませんでしたが。お体が弱い方でしたけど、品が良くて優しくて、とても美しい方でしたわ。静養されてそのままあちらに嫁がれたのですね」
あ、薄々気が付いてる貴族も結構居たんだね。
ドラゴンの前の管理者が厳重に隠されていた件もあり、何となく気が付いててもそっとしていたみたい。
「…考えれば分かりそうなものだからな」
「なるほど」
爵位を授けるって話になった頃から、薄々勘付く貴族も多かったんだって。
昔から、体の弱い令嬢令息が田舎の良い家に嫁いだりとかあったから、その子供が帝都に戻り、親族から爵位を継いだりとかね。
「さて、では次の話に取り掛かる」
あ、まだ何か話があるんだね。
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