転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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195 推しと一か八かの撒き餌

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「それは本当か!?ギル…。まさか、奴らは叔父上まで手に掛けようとしているのか」

「ええ、チョントとワークの話をしっかりと聞きました。私を狙っている事は分かっていましたが、まさかバランモス公爵まで…。命を狙われているなどと知ったら、ますます公爵に心労が掛かるのではと…」

「うむ。許し難いな。皇帝に進言し、叔父上にはしっかりと護衛を手配しよう」

「ありがとうございます。殿

俺とテオは、皇帝達の居る部屋とは別の部屋で内緒話をする。

ま、聞いて貰いたい内緒話なんだけどね。

隣の部屋にはザラムゼフ伯爵が待機していて、騎士達はドアの外に立っている。

どちらの部屋も、ベランダの窓を開けておいたから、俺達の会話はザラムゼフ伯爵に聞こえているはずだ。

いや、ガンガンに聞こえている。

俺が魔術で彼に聞こえるようにしているからね!!

「…それで、ザラムゼフがチョントとタニアにとって脅威とは?」

「それは分かりませんでした。ただ、危険なのでザラムゼフ伯爵には近づかない様にと、ワークが指示をしておりました。意図は分かりませんが、ザラムゼフ伯爵の存在が、今のチョントにとって不都合があるのでは無いでしょうか」

「ううむ。ザラムゼフは今は現役から外れたが、腕の良い皇室騎士だ。しかし、チョントの父親でもあるからな…」

「それでしたら、バランモス公爵はますます危険なのでは?」

俺達の会話を、ザラムゼフが息を殺しながら聞いているのを感じる。

「チョントとタニア嬢にとって、タニア嬢の廃嫡を決めたバランモス公爵が邪魔になったのでしょう?ザラムゼフ伯爵はタニア嬢を支持している貴族の一人とお聞きしましたが…」

「ああ。私もそう聞いているが…。しかし、チョントとタニアにとっても危険とは、どう言う意味なのか…」

「取り敢えず、バランモス公爵にはしっかりと護衛を付けて頂きましょう」

「そうだな。皇帝にもそう進言しよう」

チョントとタニアのせいで、バランモス公爵が危機に晒されている事と、ザラムゼフ伯爵なら何とかなるかもと全力でアピールしつつ、俺達は皇帝に呼ばれたフリをして部屋を後にする。

テオと顔を見合わせながら、ザラムゼフ伯爵が動いてくれる事を願う。

俺とテオは、先程こんな話し合いをしていたのだ。

「テオ、実はね…」

そう言ってバランモス公爵の身が危険である事と、ザラムゼフ伯爵がなぜかチョントとタニアにとって危険人物であると説明すると、テオはそれは好都合かもしれないと言った。

「ね、テオ。もしかしてお二人って…」

「ああ、実はな…」

テオは、二人の関係をこっそりと教えてくれた。

二人は、長い間の両片思いだったんだと!!

両片思い!!

激アツだなと思いつつ話を聞くと、バランモス公爵の結婚は、当時サンジカラと周辺隣国の不安定な関係性の問題で、国同士の結束を深める為の政略結婚だった。

それは当時も珍しくは無いのだが、バランモス公爵は皇室騎士であったザラムゼフ伯爵に恋をしており、ザラムゼフ伯爵も憎からず思っていたそうだ。

「前皇帝である父は既に母と結婚しており、兄も産まれていた。下に妹がいたのだが、既にスノラリアの公爵家へ嫁ぐ話が決まっており、バランモス公爵しか結婚相手がいなかったんだ」

バランモス公爵は、躊躇する事無く結婚を受け入れたそうだ。

自分の私利私欲より、第一に国を優先する。

そんな時代だったからだ。

「幸い、お互い穏やかな性格で気が合ったそうだ。子供も二人儲けたからな。元々体が弱かったからか、カルパを産んでからすぐに体調を崩して亡くなってしまったが…。タニアの教育は帝国貴族の乳母が行ったはずなのだが、あんな風になってしまい、危惧した叔父上はカルパには接触させずにラッカルから手配された乳母に任せたのだ」

タニアの教育者って大問題だよね…。

聞くと、今もタニアの中では乳母として絶対権力を持っているそうで、支援者の用意した屋敷を取り仕切っていると聞く。

しかし、今は皇室にも嫌われて、公爵家と城へは出入りを禁止されているそうだ。

「幸いカルパは、容姿は叔父上に良く似て、性格は夫人の良い所を継いだ。ラッカルからの乳母や家庭教師にも良い教育を受け、立派に育ってくれた」

確かにカルパは、恵まれた環境に身を置けたんだろうな。

タニアは自由奔放でオシャレや流行りにばかり気を使い、礼儀や格式を軽んじる、典型的な問題児になってしまったけど。

「タニアの乳母は、一応は他国から公爵家へ嫁いだ身なのだが、既に離縁され縁を切られている。元々礼儀作法にも厳しい方だったのだがな…」

何かきっかけがあったんだろうか?

それとも、タニアの容姿や人気に便乗する様に、金銭的にも儲けたのかもしれないね。

あれ?

「他国からって…」

「ああ、もしやと思い調べたのだが、サンジカラでは無かった。スノラリアだ」

「スノラリアか…」

うーん。

スノラリアってサンジカラとは仲良く無いしなぁ。

「誰かが接触している可能性はあるよね」

「ああ。昔と性格も随分と変わったそうだから、もしやあちらも薬や魔術を掛けられて、操られている可能性もあるな」

サンジカラの執念深さには驚くけど、昔から根強くしぶとく仕掛けているんだな。

「しかし、詰めが甘いね」

「ああ。近年は上層部にも麻薬が広がっていると聞く。長年掛けてきた仕掛けも、思考が安定せずに、ボロが出始めているのだろう」

テオと話しつつ、俺達は皇帝の元へ戻る。

魔術師達が揃い、今後の話し合いをしているそうだから、もしかしたら裏切り者も居るかも知れない。

「気を付けないとね」

「ああ。罠に掛かってくれると良いが」


















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