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194 推しとロマンスの香り
しおりを挟む「ギル殿。カルパの異変に気付いて頂き、誠にありがとうございます」
皇帝達の部屋へ向かう廊下で、バランモス公爵が俺に礼を言う。
その言葉に合わせ、一緒に部屋に向かうジュレス公爵夫夫も俺に頭を下げた。
うーん、やっぱりバランモス公爵とカルパって生き写しってくらいに似てるね。
儚げで色気があるが、芯の強そうな美人!
俺好きだよ!
ジュレス公爵も騎士として学校を出ているし、教師もしていたそうだからか、体付きも立派でイケメンだし、本当今日は目の保養が多くて困っちゃうなぁ。
そんな事を考えつつも、俺はにこやかに笑顔で謙遜しておく。
「兄に助言して頂いたから気が付いたのです。カルパ様、お身体の具合はどうですか?」
それとなく、ジェレミー兄様の凄さをアピールしつつ、カルパの具合を尋ねると、ジュレス公爵に優しく腰を抱かれながらカルパは微笑む。
「ええ。ジェレミー殿とフロル殿に治癒をして頂き、体が軽く感じています。今まで体が重かったり、意味もなく不安だと感じる事が多かったので…。ジンギ様にも大変心配をお掛けしました」
「君が元気になったのなら、それで十分だよ。ギル殿。本当にありがとうございます」
うう~んラブラブぅ。
俺の好みのカップルのラブラブって、大好物なんだよね。
俺も早くテオとラブラブアピールしたい!!
そんな事を考えつつ、長い廊下を歩いていると、前からタダならぬ気配を感じる。
チラリとテオに視線を向けると、テオは苦笑する。
「…ああ、大丈夫だ」
テオがそう言うなら大丈夫なんだろうけど、本当にタダならぬ気配なんですけど…。
ジュレス公爵夫夫にも緊張が走るが、ふと見たバランモス公爵は落ち着いている。
「テオドール殿下。どうやら皇帝により呼び出されたザラムゼフ伯爵がいらっしゃる様です。一旦別室へ入られますか?」
護衛がテオに声を掛けるが、テオは大丈夫だと断る。
「…その様だな。こちらに害を成す事は無いであろうから、このまま対面しても問題は無い」
「かしこまりました」
ええ!?
ザラムゼフ伯爵って、チョントの父親だよね?
悪い奴の父親なのに、害は無いって判断したテオに、俺は驚きつつも従う事にした。
先程覗き見した感じでは、チョントは魔術師っぽかった。
明るい茶髪と濁った碧眼で、顔立ちは上品ではあるがパッとしない感じの、体型も至って普通の男性だったな。
そんな事を思い出していると、四人の騎士に前後左右を囲まれた状態の男が前から歩いてくる。
え、アレがザラムゼフ伯爵!?
四人の騎士に囲まれても、一際目立つ逞しさで、腰の剣を見る限り彼は騎士の出だろう。
息子と同じ茶髪と碧眼なのに、目鼻立ちはクッキリしており、顎髭も綺麗に整えられ、少しウェーブの掛かった肩までの長さの髪は、無造作だがセクシーさを演出している。
おいおいおいおいおい爆イケオジじゃねーか!!
髪と眼の色以外、息子に遺伝子渡さなかったのって位、チョントとは似ても似つかないイケオジの出現に、俺は顔には出さずに驚く。
「…テオドール殿下。婚約者様。並びにバランモス公爵、ご子息夫妻。この度は我が愚息が大変ご迷惑をお掛けしました」
おお、声もイケオジボイス…。
そんな事を考えつつ、取り敢えず対応はテオに任せておく。
「子息の行動は許し難いが、裏にサンジカラが関わっているとなると、操られている可能性も高い。今後の対応は皇帝から指示がある。声が掛かるまで控え室で待つ様に」
「かしこまりました」
それ以上の会話は無いまま、ザラムゼフ伯爵は俺達の横を静かに通り過ぎて行く。
行ったけど。
俺はしっかりはっきり見ましたヨォおおおおおお!!
本当に一瞬だったけど、ザラムゼフ伯爵はバランモス公爵を見ていた。
とっても熱い視線でね!
それだけじゃない。
バランモス公爵も、一瞬ザラムゼフ伯爵を見ていたんだよね。
切なそうな顔で!!
どちらも見たタイミングが違うから、二人の視線は交わってはいないけど、何かあるよね?
これで無かったらおかしいくらいの、一瞬の情熱を俺の敏感なセンサーがビンビン感じ取ったからね!!
確か、バランモス公爵の結婚は、国同士の大きな繋がりを作る為のものだったはず。
亡くなった夫人は、ラッカル三大公爵家であるマド公爵家の出身だし、バランモス公爵も前皇帝の弟だし。
和平を強くする為に、マド公爵家の子息との婚姻の申し出があった時、既に前皇帝は結婚済みだったし歳が離れすぎていたので、年の近いバランモス公爵に白羽の矢が立ったらしい。
夫人は体は弱かったが容姿も性格も良く、バランモス公爵ともすぐに打ち解けて、子供を二人授かった仲睦まじい夫夫だったと聞いているけど…。
悶々と様々な妄想を頭の中で走らせながら、俺達は再び皇帝達と合流する。
バランモス公爵やカルパに起きた事などを説明しながら、俺は先程のチョント達の会話を思い出す。
あいつらは必ず動き出すだろう。
それに、チョントやタニアにとってザラムゼフ伯爵は脅威だと言っていた。
ちょっと使えそうだよね。
そう思いつつ、俺はテオにこっそりと先程の話を伝える事にした。
上手く行けば良いんだけど。
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