119 / 226
115 推しの結婚式の始まり
しおりを挟む教会に足を踏み入れると、王族や高位貴族達が勢揃いしていた。
レッドドラゴンリーフの功績をたたえる意味も込めて、挙式には国王夫妻も参加されている。
王太子殿下のオール殿下と婚約者であるリーカイ様も参加されており、国王夫妻はパーティーには参加しないが、オール殿下達はパーティーにも参加してくださるそうだ。
もちろんお祖父様も参加していて、隣にはナートラ先生とサーガルド伯爵がいる。
三大公爵家のドンク家とダイヤ家も勢揃いしており、なんとヨハンを後妻に迎え入れたデラス侯爵も参加していた。
ヨハンはいないみたいだけどね。
左右に座席が分かれているが、右側が王族や高位貴族、外国からの来賓席で、左側が家族と他の貴族に分かれている。
「我が国からも、私以外に何人か貴族が参加している様だな」
「うん。リーナイト公爵家は幅広く商売をなさっているから。テオの婚約者として挨拶しておかないとね」
チラリと見ると、帝国からの客人も数名見受けられる。
「帝国のガルドル伯爵だな。彼は帝国の服飾関係の商家だ。流行りの服や布を手広く取り扱っている。…従姉妹とは懇意であったが、例の事件後は縁を切った様だ」
「そうなの?」
チラリと見ると、黒のタキシードで決めた中々の美丈夫だ。
金髪碧眼で、スタイルも良いからご婦人達にも人気なんだろうな。
「先代は王室主義で従姉妹とも懇意にしていたが、現当主は周りの意見をしっかり見聞きし判断する男で、キッパリと決別したんだ」
ほうほう。
中々良い判断だと思うよ。
ファッションリーダーとは言え、間違いを起こす貴族を平気で推すなんて、後々反感を買うだろうからね。
「後は宝石商のポートランス公爵と、薬関係の貿易を主に行なっているニムラス伯爵だな。ポートランス公爵は兄とも懇意だが、きちんと民にも寄付を行なっている。ニムラス伯爵であるナルは私の幼馴染だ」
ポートランス公爵は例の宝石商ですね。
帝国の宝石商は、身につけている宝飾も立派だ。
さすがにゲストだからか控えめだが、黒いタキシードに金と大粒のダイヤを使用したクラヴァットの飾りはとても良く似合っている。
短く切り揃えて後ろ手に撫で付けられた黒い髪に緑の瞳で、父様位の年齢だろうか。
宝石商と言うより騎士の様な体付きだ。
隣に立つニムラス伯爵より頭一つ分大きい。
「ニムラスは昔から薬草好きで、兄が居たのだが彼が家を継いだ。兄は剣術に長けており、腕も良かったので騎士の道を選び、今は王城で活躍している」
ふむふむ。
確かに薬草関係の貴族なら、薬草好きが継いだ方が良いものね。
ニムラス伯爵はテオと同い年だそうだが、線が細く可愛らいしい容姿をしており、婿を取ったと言う。
「隣にいるトルネが夫だ。彼も私の幼馴染であり友人だ。後のパーティーでは紹介させて欲しい」
「うん。楽しみにしてる」
長い黒髪を左側に一つに束ねたニムラス伯爵の隣には、短く切り揃えられた茶髪の体格の良い男性が立っている。
良く見ればニムラス伯爵と揃いの指輪をしており、仲睦まじく話している。
薬品を主に取り扱う貴族なら、確かに今回招待されていてもおかしくないね。
テオの友人だったら信用出来るし、しっかりした販路が約束されれば、ジャメル的にも安心だからね。
そうしていると、教会の鐘が鳴り響く。
皆が、一斉に祈りを捧げ始た。
我が国やその周りは殆どがスイレン神を信仰している。
愛と平和と豊作を司るスイレン教では、熱心に信仰する者はラッカルと言う宗教大国へ向かう。
他の国で普通に生活する上では、鐘の音に祈りを捧げたり、誕生祭を行ったりと言った、そこまで戒律の厳しいものではない。
我が国の教会にはラッカルで修行した神父達がおり、彼らは魔力にも長けているので魔術師としても活躍している。
本人証の発行や診断にも携わり、結婚式での進行なども彼らの役目だ。
バージンロードを父親と歩くと言う習わしは無く、二人で祭壇まで歩き、夫夫としての結婚証と言うものを新しく作るまでが挙式の流れだ。
結婚証は本人証と結び付けられ、二人が夫婦であると言う証にもなる。
鐘の音が終わると、いよいよ今日の主役達が現れる。
皆が一斉に扉へ体を向ける。
厳かな音楽が流れ始め、扉がゆっくりと開いた。
265
お気に入りに追加
1,141
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる