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87 推し達との食事会
しおりを挟むアドン子爵のレストランは、今日も大盛況だ。
「ようこそおいで下さいました。皆様お揃いでございます。どうぞこちらへ」
アドン子爵が出迎えてくれ、テオに腰を抱かれて歩く。
「良い雰囲気の店だな。柑橘のソースは楽しみだ」
「帝国の魚が新鮮な状態で届くからね。こちらのレストランは料理人の腕も一流なんだ」
俺達は予約していた大部屋へ通される。
そこにはリーナイト家とジャメル家が勢揃いしていた。
時間には間に合ったけど、遅くなっちゃったね。
「遅くなって申し訳ありません。お待たせしました」
「いや、我々も先程到着したばかりだ。良い葡萄酒と林檎酒が入った様で、今持ってくるそうだよ。ギルやフロルは果汁水がくる」
シェル様にフォローされながら、俺とテオは向かい合わせに座る。
皆それぞれのお相手と向かい合わせになり、食前酒が運ばれてくるのを待つ。
「今日は私も招待して頂き、ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそギルに随分と贈り物を頂いた様で…。それぞれの商会からもお礼がありましたよ」
あら、父様にもバレてたか。
でもまぁ、テオが好きで買ってくれたんだから良いよね?
「私も良い物を頂いたので、つい買い過ぎてしまった。私が冒険者として手にしていた報酬からの購入なので気にしないで欲しい。あまり使う機会も無く、こうやって愛する人に使えて楽しくてな」
愛する人だって~!テオったら、惚気ちゃって。
皇室や国家の費用じゃ無いと言うテオの言葉に、父様は納得してくれた。
帝国のS級冒険者なら、結構稼ぎも良いから納得だよね。
そこへ、ホセ兄様達が話に入ってくる。
「私もフロルに何か贈りたいな」
「ホセ様…。それなら、私もホセ様と揃いの物が欲しいです」
「ギル達の指輪やバングル、父様達のペンダントも良いな」
ニコニコとホセ兄様に突っ込まれ、父様は咳をする。
シェル様も少し照れた様に笑った。
父様も愛するシェル様に贈ってるもんね~。
「揃いの物を身に付ける事が流行っているから、宝石店や仕立て屋も売り上げが良いらしい」
セルジオ様達も会話に入ってきて、ここからは美味しい食事と会話を楽しむ時間だ。
「揃いの…。食器やハンカチーフなども揃いで仕上げても良いのでは?平民にも買いやすいカップやカトラリーなどから揃いを準備し、アピールしてみても良いかもしれません」
ペアの食器とかって、前世でも良くあったしね。
貴族は一式揃った皿やカトラリーを使用するけど、平民はそんなに食器の数は持たないし、恋人同士だったり夫婦で揃いで持つと言うのも良いのでは。
俺の提案を、セルジオ様は真剣に聞いている。
「揃いの日用品と言う事か。貴族だとそれぞれ家紋入りの食器が良いが、平民や軽くお茶をする時などに揃いの食器は良いかもしれない」
お、中々好感触だね。
「揃いのティーカップのセットなどを、贈り物として提案したらどうでしょう。若い夫婦などに贈りやすいですし」
引き出物とか、そんな感じが多かったりするしね。
「それなら、カトラリーのセットも好まれそうですね。贈り物なら少し豪華にしても良いでしょうし、小さなプレートのセットも需要がありそうです。ハンカチーフも特別に刺繍を入れる様にしたら喜ばれそうですね」
お、さすがジェレミー兄様。
確かに平民は、大皿から小分けに分けて食べる方が多いし、ケーキ皿にも使えるのは便利だと思う。
刺繍もそれぞれ特別に入れられたら、きっとウケるんじゃないかな。
「良く平民向けのお店で使われる、木のスープボウルに細工を施しても良いかもしれません。特別感があり使い慣れた物も、贈り物として買いやすいかと。それとレードル等の調理用具のセットも新婚家庭に贈りやすそうです」
俺がノリノリで提案していると、テオがとても楽しそうに俺を見ていた。
「素晴らしい提案だ。ギルは商才もあるんだな」
やだ、そんな手放して褒められたら照れちゃう。
俺が照れていると、シェル様も大き頷いてくれた。
「貴族向けだけで無く、平民向けの商品の考え方も良いね。貴族街のリーナイト商会はやはり貴族向けだから、平民街の店で試してみたらどうだ?」
「ええ、平民街の店の目玉になりそうですね。贈り物に特化した店は無いので、力を入れていきます」
リーナイト商会のお役に立てて良かった。
やっぱ貴族より平民が多いから、そちらに人気になった方が売り上げも期待できるもんね。
「ギル殿は凄いね。私もジャメル領で力になれる様に、頑張らないと」
フロル様の言葉に、ホセ兄様はデレデレしている。
戦闘にしか興味の無い男が、フロル様のおかげで領地統治にも力を入れ始めてるんだからね。
「いえいえ、フロル様のおかげでホセ兄様の領地開拓のやる気が出ているのですから、ありがたいですよ。ジャメル領は今後レッドドラゴンにも守られますし、辺境騎士団は周辺の警備に駆り出されるでしょうけど、領地は観光地として力を入れて行きたいですよね」
次はこっちだと話し始めると、父様も頷いてくれる。
なんだか楽しくなってきたぞ。
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