84 / 226
82 推しとデート
しおりを挟む今日はテオとデートの日。
テオの馬車は、黒塗りに金の細工が嫌味なく施されたスタイリッシュかつ豪華で、中々カッコ良く、護衛の二人が御者もしてくれる。
そんな馬車が迎えに来たらテンション上がるよね。
ラフな格好と言うけど、テオは黒地に銀の刺繍の入ったウエストコートを着ていてカッコ良すぎる。
俺も黒地に銀の刺繍のウエストコートを着たから、さながらお揃いだね。
「本日は孫をよろしくお願い致します」
「こちらこそ。日を跨ぐ事はなくお返ししますので」
夜まで連れ回す気か!
と言いたいけど、この場合は夜の食事も共にしますよって事だよ。
貴族とかがデートする時の言い回しだね。
それに、今日は夕食はリーナイト公爵家とジャメル家一同と一緒に行く事になっている。
お祖父様は魔術師の友人に招待されているらしい。
「それでは行ってまいります」
「うむ。気をつけて」
ジェレミー兄様は早くからセルジオ様の迎えで、リーナイト商会へ向かったから、取り敢えずそこに顔出しに行く。
今日は、リーナイト商会から宝石店に行き、お茶をして洋服を見繕って貰ったら、夜は例の海鮮のレストランに行く予定だ。
結構ハードスケジュールだけど、せっかくテオが居るし、周りにアピールもしとかないとだから。
テオに恭しくエスコートされつつ、馬車に乗り込む俺は多くの視線に晒されるが、気にしない。
ふっかふかの椅子に横並びに座る。
左に座るテオは、腰に右手を回し、左手は太ももに置いて来た。
「ギル。とても良いバングルをありがとう。今日は指輪を贈りたいのだが、貰ってくれるか?」
「もちろん。ありがとう。お揃いだよね?」
「もちろんだ」
テオとのお揃いが増えるのは嬉しいと喜ぶと、頬にキスをされる。
今日もいっぱいイチャイチャ出来そうです。
「テオ、ここにジェレミー兄様が居るんだ」
「おお、立派な商会だな。薬品以外も取り扱っていると聞いている。帝国の塗り薬もあるそうだから補充しておこう」
リーナイト公爵家の商会は、王城近くの一等地に建っており、大理石で造られた、さながら神殿の様な豪華な建物だ。
薬品や日用品も多く取り扱っていて、流行り物が好きな女性達にも大人気だったりする。
テオと揃って馬車を降りると、セルジオ様とジェレミー兄様と職員一同が、揃って入り口に立っている。
そっか、テオは皇帝弟殿下だもんね。
「テオドール殿下。ようこそいらっしゃいました」
「本日はよろしく頼む。塗り薬も数点見たいのだが」
「帝国の塗り薬もございますし、最近ギルやジェレミーが開発に関わったモノもございます」
「それは楽しみだ」
周りに好奇の目で見られながら、中にはゾロゾロ入る。
カイトと目が合うと、確かに元気が無さそうだった。
セルジオ様達がテオの接待をしている間に、カイトと会話をして来ると許可をもらう。
「カイト殿。最近君が元気が無いと兄が心配していた。何かあったのかい?」
「…ギル殿。その、実は父が他の縁談を持って来ているんだ」
「ええ?」
やだオルネス伯爵ったら、結構怒ってたんだね。
「それって、別のお家の方とか」
「ううん。ベルガー様の弟のサンタロス様なんだけど…」
あ、同じセントラ伯爵家のって事か。
俺の記憶から引きずりだすと、兄とは違い真面目な青年だった気がする。
王家の騎士団に属していて、腕も中々良かった様な。
あれ?でも弟に婚約者は居ないのかな?
「弟君に婚約者は?」
「うん…。白い結婚のお相手が居たみたいなんだけど、相手が別の方と結婚したいとなったそうで…。父様がベルガー様の抗議に行った時に、それなら弟はと勧められたみたいなんだ」
白い結婚が白紙になったのか。
それで、弟がカイトにとなるって事は、弟はカイトを憎からず思っているのかもしれない。
でも、カイトの様子を見ると、カイトは乗り気では無い様だ。
「カイト殿。ベルガー殿は現在はジャメルでしっかり鍛錬しているし、カイト殿も彼の帰りを待っているのでしょう?その気持ちをきちんとご家族と話されては?自分が嫁ぎたい相手がしっかり決まっていると」
「父や兄はまだベルガー様を許して無い様なんだ。最近は毎日サンタロス様を薦められて…。確かに誠実で真面目な方ではあるのだけど、僕はずっとベルガー様を見てきたから…」
そうか、毎日は辛いよね。
確かに例の令嬢と関わっているのは痛いが、それでも軽度だったし他の奴らの方が酷かったのに。
可愛い息子には誠実で真面目な男の所に行って欲しいのは分かるけど、こんなに元気が無くなるまで息子を追い詰めるのも良く無いよね?
「カイト殿。明日発表が終わったら、すぐにジャメルへ向かってベルガー様と話して来たらどうかな?」
「ええ!?」
俺の急な提案に、カイトは驚く。
明日発表後、一旦父様とホセ兄様は領地へ戻る。
その時に、カイトも連れて行って貰えば良い。
二、三日したら、ホセ兄様はレッドドラゴンリーフを持って帰ってくるので、その時にこちらに向かえば良い。
「私が父達に話を通しておきます。しっかり話し合って、彼を一旦連れ帰ってご家族を説得してみたらどうだろう。辺境騎士団での評判も悪く無いから、きっとご家族も分かってくれるよ。君が元気が無いと、商会の皆も心配みたいだからね」
「ギル殿…。そうだね、これからは夫夫になるんだから、一人で考え込んではいけないね。それに周りに心配を掛けてしまって。僕、しっかり家族と話して、ベルガー様に会って来るよ。ありがとう」
ようやく笑顔になったカイトは、そのまま接客に呼ばれて行く。
そこへ、ジェレミー兄様がやって来た。
「何日かカイト殿が不在になるけど。良かったかな?」
「優秀な魔術師の方々が多いし、カイト殿には今後はジャメル領を行き来してもらうから、その準備って事で丁度良かったよ。ありがとうギル」
ジェレミー兄様にお礼を言われ、ニマニマしながら、俺はテオの元に戻る。
周りをしっかり見ているジェレミー兄様を見習わないとな。
320
お気に入りに追加
1,141
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
僕の兄は◯◯です。
山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。
兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。
「僕の弟を知らないか?」
「はい?」
これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。
文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。
ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。
ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです!
ーーーーーーーー✂︎
この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。
今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる