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81 推しと少しの寂しさ
しおりを挟むお祖父様の屋敷に着くと、風呂に入り夕食までのんびりとする。
明後日は発表だから、その時にジェレミー兄様とセルジオ様の結婚も大々的に発表される。
その時に、軽く俺とテオの事も発表するって言われたけど、目立たない様にしてくれる。
テオは表には出ないと言ってたから、ジャメル家とリーナイト家と、王家が国民の顔見せに使用されるバルコニーに出る手筈だ。
ジェレミー兄様とフロル様には、それぞれお相手から服が贈られているからか、明日急ぎで俺に服をプレゼントしたいとテオに言われた。
「あまり目立たない物にしてもらいます」
お祖父様と夕食を共にしながら、明日の事を話すと、少し寂しそうな顔をしていた。
「ギルにはまだ春は来ぬと思っていたが、あっと言う間に特大が来たな。ギルの力の大きさを考えたら、外の世界へ飛び出して行くのかと思っていた。予想以上に大物であったが」
「あまり外に興味が無いんです。興味が出たら遊びには行くでしょうけど。好きな人が沢山いるここを離れると言う考えは無いですし、力もその為意外に使う気も無いですね」
俺の推し活は俺の命だからね!
キッパリ言い切る俺に、お祖父様は苦笑する。
「しかし、皇帝の弟殿下にこちらに来させるとはギルらしい。サーガルドにはギルの魔力の高さを心配されたが、ここまで成長して好き勝手していない時点で問題は無いだろうと納得していた。実際国の為に奔走している事を、王家も理解しているからな」
あら、サーガルド伯爵にはさすがにバレてたか。
俺って結構好き勝手してると思ってたけど。
触らぬ神に祟り無し的なポジションで居られるなら、楽で良いかも。
「…お祖父様はどなたか良い方はいらっしゃらないんですか?」
俺のいきなりの質問に、お祖父様が目を丸くしている。
お祖母様が亡くなってから長いし、最後誰かと一緒になっても問題は無いよね?
「うむ。妻以上に愛する事が出来る相手には、遂に出会えなかったからな。周りには友人も多く恵まれているから寂しくも無い。王都にはジェレミーも住むしな。ひ孫が楽しみなくらいだ」
ほうほう。
確かにお友達は多そうだよね。
お祖父様はそう言いつつも、少し考えていた。
「…そうじゃな。特に恋愛感情は無いが、最近は友人と終の住処で暮らす貴族も増えて来ておる。誘われたら誰かと住む事もあるやもしれん」
お、シニアのシェアハウスってヤツね。
それも良いねと食後にお茶を飲んでいたら、ジェレミー兄様が帰宅した。
発表後はすぐセルジオ様とリーナイト家に住むから、今はバタバタしている。
発表後、すぐに父様は侯爵になる。
そして落ち着いたらシェル様はセルジオ様に爵位を譲り、父様と一緒になると聞いた。
特に式は挙げず、ジャメル領と王都を行き来して、両方を切り盛りしてくれるのだ。
ホセ兄様は騎士団をまとめつつ領地の勉強を進めて、フロル様はシェル様とジャメルの勉強をしていく感じ。
二人が立派に後継になったら、隠居するって言ってた。
中々パワフルだよね。
俺はレモルトとジャメルと王都を行き来する予定。
魔術で簡単に移動できるから、それを惜しみ無く使うつもり。
家族一緒には中々なれなくなるのは寂しいけど、俺は何処そこ顔を出しに行って寂しさを紛らわす予定。
「…お祖父様の所にも、しょっちゅう遊びに来ますからね」
「ふふ。沢山の土産話を楽しみにしているぞ」
そんな会話をしていたら、ひと段落したジェレミー兄様も会話に参加してくる。
「公爵家ではどんな様子だ?」
「公爵家では学ぶ事が多くあって大変ですが、とても充実しています。皆さんも良くしてくださいますし、商会を手伝ってくださる魔術師の方々もやる気に満ちています。私の魔力も安定して来たので、一緒に頑張ります」
実は、想像以上にジェレミー兄様の魔力は高いのだ。
俺の教えた魔術の弾き飛ばし方や、秘密を口外出来なくなる魔術なども使いこなせてるから、中々強いと思う。
これから先は兄様を狙う輩も居そうだけど、この分なら簡単に叩き潰せそうだから安心した。
「カイト殿はどうですか?」
「うん。とても筋が良いし愛嬌もあるから、商会の皆様にもお客様にも好かれているよ。魔力も高いから自分自身を守れるし、今後はジャメルとの行き来も担当してもらうよ」
良かった良かった。
みんな順調に行ってそうだね。
「そうそうカイト殿の婚約者は、今ジャメル領に居るでしょう?ホセ兄様も筋が良いと言っていたし、ちゃんと反省しているみたいだから、それとなく会っておいでって伝えたんだけど。カイト殿はあまり乗り気じゃ無いみたいで…」
おやおや。
他に好きな人でも出来ちゃったんだろうか。
「今度ジャメルに行く時は俺も着いていくので、それとなく話を聞いてみます」
「うん。他の方の話では、ずっとお相手一筋と聞いていたから心配で」
ジェレミー兄様優しいなぁ!
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