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77 推しから秘密の告白
しおりを挟む「陛下。少し私が口を出しても?」
テオの発言に、陛下が頷く。
テオは、一度俺に向き直る。
「ギル。実は君に黙っていた事がある。男同士の約束だったから言えなかったのだ。許してくれるか」
お、陛下への発言より俺の機嫌を取りに来たね。
許しましょう。
「もちろんです。…どなたとの約束ですか?」
「ニルケス殿だ」
その言葉に、一気に視線が集まる。
テオは陛下に向き直り、話し始めた。
「ニルケス殿は、国を出てから帝国やラッカルで冒険者や勇兵として活躍しています。お互い知った者同士で活動する機会も多くありました」
テオの話では、ヨンジを傷付けてしまった事でニルケス殿下も大きくショックを受けており、前王から頂いた国宝の指輪をそのままヨンジに渡したと言う。
中々強い防護魔術の指輪で、そのおかげでヨンジは手を出されていなかったみたい。
魔術師がどんな魔術を掛けたのか分からないが、王家へ相談する事も無くさっさと国を出る様に仕向けていたみたいだから、用意周到だよね。
長年独り身を貫き、贖罪の様に戦に出ている様だが、ヨンジへの熱い気持ちはずっと持ち続けているそうだ。
たまに不安定になる事もある様だが、やはり王族の一員だからか、周りに魔術が気付かれないくらい自分を制していたみたい。
今回テオが俺プロポーズしに行くと聞き、何とレモルトまでニルケス殿下は来ているらしい。
「ヨンジ殿の様子を見て来て欲しいと言われていてな。すぐに早馬を送ったので、早ければ明日にでもこちらへ到着するだろう」
あ、だからケン達は居ないんだね。
その言葉に、ヨンジはまた涙を流していた。
「陛下。ニルケス殿下を受け入れて頂けますか?」
テオの言葉に、陛下は大きく頷いた。
「迷惑を掛けて申し訳ない。…コンヌル公爵。元はと言えば我が弟がしっかり筋を通して子息に接触していれば、こんな事にはならなかった。謝罪したい」
「陛下。我々も愚かでした。失礼ながらニルケス殿下が王位を継ぐ事は無いだろうからと、二人の逢瀬を許していたのです。他の目にキチンと配慮すべきでした」
妾妃の息子だしね。
爵位を与えられ降下が筋だろうと、皆思ってたんだろう。
そこなら条件も良いし、嫁ぎ先にはもってこいだし。
「ヨンジ。もし我が弟を許し、お主の気持ちが残っているなら。どうか弟と一緒になって欲しい」
「私の奇行をお許しいただけるのですか?」
オール殿下やリーカイ様に、迷惑を掛けてしまったと言う自覚があるんだろう。
でも不可抗力だし、子供にそんな重荷を背負わせたキムートが悪い!
オール殿下やリーカイ様も、うんうんと頷いている。
「もとろんだ。全てでは無いが、公表する事にはなるが」
「もちろんです…っ。ありがとうございます」
涙を流しながら、ヨンジは頭を下げた。
兄のニージに、優しく肩を抱かれている。
十五年近く離れていたんだもん。
やっと本当に向き合う事が出来るね。
俺、十五年もテオを待てたかな?
チラリとテオを見上げると、優しく抱き寄せてくれる。
俺バカ強くて良かったー!
「へ、陛下!!ご報告がございます!!」
そこへ、騎士が慌てた様に扉を叩く。
何事かと空気が張り詰めたが、顔を出した騎士の泣き笑いの様な顔に、緊張が解ける。
「どうしたのだ」
オール殿下の言葉に、騎士は息を整えながら、片膝を付いた。
「ご報告します!ターン殿下がっ。ターン殿下がご自分の足で歩行が出来る様になりました!」
「なんだと!!」
おお、思ったより早かったね!
ターン殿下は魔力も高いし、薬も口に出来ていたから、回復に向かったら一直線なのかも。
一気に祝福ムードになったので、コンヌル公爵家と王家の謝罪合戦は一旦終わりだ。
コンヌル公爵家は一旦揃って家に帰るが、護衛の為にも騎士が数名配置される。
こちらに向かっているであろうニルケス殿下にも、急ぎて護衛が送られる事になった。
テオが早馬を送った時点で、テオに着いて来ている護衛が一緒に行ってくれたみたいだし、彼ら強かったけど帝国の人間だしね。
早くターン殿下の元へ行きたいであろう陛下達に先に下がって頂いたら、俺達もそれぞれ帰路に着く。
来月にはフロル様がジャメル領へ行ってしまうし、ジェレミー兄様もリーナイト家へお引越しがあるから忙しくなる。
その前に、不安要素があったらバンバン潰しておかないとな。
でも、テオともう少しイチャイチャしたいなぁ。
そんな感じでテオを見ていると、父様に嗜まれた。
自分はデートしてるくせにぃ!!
俺が少~し拗ねた様にそっぽを向くと、シェル様が笑って父様に助言してくれ、ニルケス殿下の事が治ったらと、デートのお許しが出た。
ま、今はやる事やらないといけないからね。
テオを部屋へ送り届け、抱きしめ合ってから俺はジェレミー兄様と帰路に着く。
ニルケス殿下の魔術は俺が解いた方が良さそうだけど、何か言われないかなぁ。
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