転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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38 推しと悪人

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「婚約はめでたいですが、そんなに焦らなくても良かったのでは?公爵家のご子息も優秀でしょうが、優秀過ぎても可愛げというものが…。やはり当主を支える方でなければ」

「そうですわ。甘え上手な令嬢も多いですわよ」

まだ言うか。

思ったよりホセ兄様の人気は高い様で、格下に娘を娶らせてやると考えていた様な貴族から、チクチク嫌味が出て来る。

お前らの娘?息子?

微塵も推せない奴らに、兄様は似合わないね!

俺がスンとした顔になると、お祖父様が苦笑する。

「ギルよ、一応社交の場だ。落ち着きなさい」

離れてはいるが会話は聞こえる範囲なので、お祖父様も俺の機嫌が急降下している理由が分かる様だ。

「…優秀だと可愛げがないとでも?こんなに美しく可愛らしのに」

「ほ、ホセ様…」

ホセ兄様のどストレートな惚気に、フロル様は赤くなり、嫌味を言ったご婦人方は目を丸くしている。

他の方々は、あらあらと初々しいカップルを和かに見ている。

「それに、甘え上手で可愛いだけでは我が領地では何の役にも立ちません。と言いますか、その様なご令嬢ご令息で良いと言うお家は貴族としてもどうなんでしょうね。フロルの様に優秀で優しく、平民にも慈愛に満ちた妻を娶れるなんて、私は贅沢者です。それに、私の弟は今年の主席ですよ?私の弟が可愛くないとでも?」

おうおう。

俺様の美貌が目に入らねーか!?

兄様が俺の名前を出してくれたので、俺はとびきりの笑顔で応える。

ちゃんと目も笑っておこう。

「ヒッ…」

おい誰だよ今悲鳴上げたの!

失礼しちゃう!!

「…ギルは笑っても迫力があるのぉ」

お祖父様の諦めた様な声に、さらに笑顔を見せておく。

兄様がフロル様ラブ!な姿勢を見せ付けていると、今度はジェレミー兄様達に絡む奴らが現れる。

「いやぁ。こんなに美しい方がいらっしゃるとは。セルジオ様も隅に置けませんなぁ」

でっぷりとした、大きなお腹とツルツルの頭が何やらキャラクターの様な男が、見覚えのある令嬢を連れて来る。

優秀クラスのパニ伯爵家の令嬢だな。

そして、飛んで火に入る夏の虫だな!!

「我が娘との婚約を何度も何度も断りになられるのですから、さぞ優秀な方なんでしょうねぇ?しかし、学園に通われていないのでは?ジャメル領に方が、果たして王都で公爵を支えるとは。ちと荷が重いのでは?」

あ?○ろすぞ?

俺が笑顔に殺気を乗せていると、スッスッと視線が外される。

やだ皆様そんなに怖がらないで。

「…これはこれはパニ伯爵。ジェレミーは大変優秀ですよ。病気でだけですし、勤勉で王都の事だけではなく隣国や他の国の事も大変詳しいです。病気を克服した今は、魔力も安定し、治癒の魔術は私より優秀ですよ」

嫌味なパニ伯爵のジャブに、セルジオ様は笑顔でジェレミー兄様の腰を抱き寄せて返す。

いかんいかん。

すぐ感情を顔に出したらダメだな!

「ふん。ジャメル領で何が学べるのか分かりませんが。優秀でしたら、我が娘も優秀ですぞ?」

「お久しぶりですセルジオ様」

パニ伯爵は鼻で笑うと、話の流れを無視して娘を紹介する。

甘ったれた声で話すのは、パニ伯爵家令嬢のエパだ。

金髪をフワッフワに巻いて、大ぶりな赤と緑が混ざった宝石の付いたカチューシャをしている。

胸元の開いた真っ赤なプリンセスラインのドレスだが、流行りのシンプルなスタイルではなくフリルを多く使い、裾や袖までフリッフリしている。

俺はこいつを知っている。

リリーが、職員に連れて行かれる時に、視線を向けていた令嬢だ。

「私、セルジオ様に認めて貰えるよう努めてまいりましたのに…」

「そうですぞ。どうです?我が優秀な娘を、もう一度考えて頂けませんか?レッドドラゴンリーフの礼なら、婚約破棄した弟君の婚約だけで十分では?」

あ、キレた。

ジェレミー兄様、ジャメル家、リーナイト家、そしてフロル様も馬鹿にしやがったな。

レッドドラゴンリーフの販売の礼に、兄弟が婚約したとでも?

潰すわコイツら。

俺は、お祖父様ににっこりと笑顔を向ける。

お祖父様もキレた様で、にっこりと迫力のある笑顔を向けてくれた。

それでは遠慮なく。

俺は、セルジオ様達に近づき、パニ伯爵を見据える。

なんだと馬鹿にした目を向けられる。

周りには、俺に挨拶に来たであろう、クラスメイトの姿も見える。

よーし。

「…ハッ!」

俺は、馬鹿にされた以上に馬鹿にした目で見返し、心底馬鹿にした様に鼻で笑ってやった。





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