39 / 227
37 推しと貴族の会話
しおりを挟む今回の目玉ともなったジャメル家の発表後、やはりわらわらと貴族達が集まってくる。
部屋で待機していた奥方や他の兄弟も入って来たので、凄い人数だ。
こういった事態を考えての、リーナイト公爵家に後ろ盾になって貰ったので、父様の隣にはシャル様が居る。
「いやはや。リーナイト公爵家はさすがに鼻が効きますな」
そう言って軽いジャブを入れて来るのは、王都貴族の一人だ。
上手い商売を手にしやがってと言うやっかみもあるのだろうが。
こんな嫌味にどう返すかも見られるなんて、本当お貴族様って大変。
様子を伺っていると、父様がにこやかに返事をする。
「いいえ、こちらからお願いしたんですよ」
「ほう?ジャメル伯爵が?」
王都の無能貴族達には、リーナイト公爵家が田舎者を騙して利益を横取りしたという筋書きが面白いのだろうが、そうはいかない。
「はい。リーナイト公爵は私と同級で、彼が薬草に造詣が深い事を知っていましたから。それに、我が家より遥かに商売に長けている公爵家ですから、お願いしたのです。薬の形や売り方なども、リーナイト公爵家に指導を受け、これ以上ない協力も頂いていますよ」
父様のはっきりとした声が響く。
この場でここまではっきり宣言したら、後々変な噂を立てようものなら、事実と違うと言われるのはその貴族だ。
シェル様が薬草に造詣が深い事は有名だし、知らないなんて言ったらそれこそ笑われる。
それに、兄弟の婚約も見ての通りだから、こちらは感謝しかないという姿勢を崩さない。
この話は一旦終わりと言う空気が流れ、次は別の伯爵夫人が口を出す。
「…そうですか。しかし、いきなりご子息二人とも婚約など、急ぎ足過ぎではないですか?ホセ殿のお相手は先日婚約破棄をされたばかりでしょう?」
言うと思ったよオバサマ。
一部は田舎者と馬鹿にしているが、ホセ兄様の人気は高い。
エスコートもスマートに出来るし、何より見た目がカッコイイもん。
しっかり鍛えられた長身に、ワイルドな雰囲気もあるイケメン。
皆好きよね~俺も好き!
ホセ兄様とフロル様を向いての嫌な質問に、ハラワタが煮えくりまくるのだが、ホセ兄様は涼しい顔をしている。
「何か問題でも?」
「ええ、だってお相手は…ねぇ?」
嫌っそうな言い方だが、それでもホセ兄様はにこやかにしている。
「フロルに問題があった訳ではないですので。弟からもフロルの評判はよく聞いていますし、私も彼の素晴らしさは知っているので、今回縁を結べて幸運ですよ」
「ホセ様…」
ちゃっかり呼び捨てにしてる!
ホセ兄様はフロル様の腰を優しく抱き寄せており、本当にお似合いだ。
「あら、お二人は交流があったのかしら?」
他の優しそうな侯爵夫人が助け舟を出す。
そこで、フロル様が照れながら助けられた時の話をし、その話にホセ兄様が捕捉する。
そこへタイミング良くケンドフ伯爵が現れる。
さすが、シェル様の手回しは完璧だな。
「ええ、あの時は本当にお世話になりました。フロル様も、夏季休暇だと言うのに我が領地の教会や孤児院を治療していた時で、あの魔物の襲来は本当に予定外で困惑していたんですよ」
ケンドフ伯爵はスラッとした美中年で、若くで奥方を亡くしてから最近再婚された方だ。
後ろには、新しい夫の騎士も立っている。
観光地の当主なので、さすがにおしゃべりも上手であり、フロル様の素晴らしい行動や、ホセ兄様の活躍を好感度高く伝えてくれる。
「ま、それではその時はお互いお相手を知らずに?」
「あら~それで再開なさったのね!ロマンチック!」
令嬢達がキャッキャと盛り上がる。
女の子は好きだよね~。
でもそのおかげで、二人の婚約も好意的に見てもらえそうだ。
とりあえず、嫌な事言った奴らはリスト作っとこ。
大々的よりは、地味~に嫌がらせしてやろっと。
387
お気に入りに追加
1,141
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
勘違いの婚約破棄ってあるんだな・・・
相沢京
BL
男性しかいない異世界で、伯爵令息のロイドは婚約者がいながら真実の愛を見つける。そして間もなく婚約破棄を宣言するが・・・
「婚約破棄…ですか?というか、あなた誰ですか?」
「…は?」
ありがちな話ですが、興味があればよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる