24 / 227
22 推し達の戯れ
しおりを挟む俺は、一足先にドラゴンに説明に行くと言い、父様達を残して裏山に入る。
こうすれば、父様とシェル様、ホセ兄様とフロル様の組み合わせになるだろうと踏んだのだ。
こっそりと道中に魔術を掛けて、その様子を隠し見つつ、俺はドラゴンの寝床に着いた。
『おお、ギル。今日も誰か来たのか』
「やあファビ。今日は昨日のお客様の家族がいらっしゃるんだ」
『ふむ。昨日のヤツの家族なら問題は無いだろう。キャルは眠い様だが、カーリンならそこら辺で遊んでいる』
「分かった。軽く挨拶だけだろうし、あとは薬草園の案内だから」
『もう少しで自由に行動できそうだな。周りの人間を驚かすつもりは無いし、無駄に攻撃されるのも避けたいからな。そちらの理由も理解している。我らはもう少しゆっくりここで休憩して居よう』
「ありがとう」
ドラゴン達には、俺達の事情も全て話してある。
王家への発表の後には、領地内の人の居ない所なら、自由に移動して良いと約束してある。
今は十分広い裏山などに目眩しの魔術を掛け、好きに住んでもらっているが、今後は他の魔物に威嚇できるよう、人目のある所も移動できるように取り計らう予定だ。
道中に仕掛けた魔術に集中すると、思った通り父様とシェル様の二人組の後に、少し距離を作ってホセ兄様とフロル様が談笑しながら歩いている。
『あの時は本当にありがとうございました。ホセ様がいらっしゃらなかったら、被害が大きかったと思います』
『いや、フロル様のご活躍も耳にしています。夏季休暇だと言うのに、教会やらを周り回復魔術で怪我をした方々を助けていたとか。それで逃げ遅れたのだと聞きました』
そうだったのか!さすが我が推し!
『あの時は、初めて会う魔物でしたので、恥ずかしながら足が竦んでしまって…。今は、少しでも自分や周りを助けられる様に攻撃魔術も嗜んでいるんです。ギル殿はお手本なんですよ』
そんな!俺なんかをお手本にしてくださってるなんて!!
俺なんかチートだから、気を抜いたら引かれそうなのに。
日々頑張って、真面目を演じつつクラスメイト達に攻撃魔術などを披露しておいて良かった~。
次に、父様達の会話を盗み聞く。
『どうだ、うちのフロルは。ホセ殿とは歳が離れてはいるが』
『いやはや、こんな辺境伯爵家で良いのか?ギルからは沢山話を聞いているし、申し分ない。本人達が乗り気なら、すぐにでも縁談を進めたいが』
『問題はなさそうだな』
当主同士では話が進んでいるようだ。
やったー!推しがお義兄様になる!!!
え!?我が家の絵面ヤバくない!?
あーもー日々眼福だよ~。
そう思っていると、小さい赤いドラゴンが、父様に突進してまとわり付いていた。
『フハハッ!コラコラ、カーリン。お客様だぞ』
『キュ~!!』
『!!!本当に、真っ赤なドラゴンだな』
シェル様は、カーリンの登場に感動したようで、父様の首にまとわりついて嬉しそうにしているカーリンを見つめている。
『触っても大丈夫だぞ』
『本当か?…凄い。レッドドラゴンに触っているんだな。フロル、触ってごらん』
感動しながら、シェル様がフロル様を促すと、フロル様も恐る恐るカーリンを触っている。
ドラゴンは、ゴツゴツしており蛇やトカゲの様だが、さわり心地はさらりとして暖かい。
『キュッ!キュ~』
カーリンは優しく撫でられてご満悦のようだ。
生まれてからずっと人間に接しているので、カーリンは人間に慣れている。
それでも、悪い人間には懐かない様にと父様とドラゴン達がしっかり躾けている。
『可愛い…』
『それは良かった』
楽しそうに微笑みあう兄様とフロル様に、少し寂しい思いもあるが、この二人が夫夫になる未来を考えたら、胸が熱くなる。
あれ?ではセルジオ様とジェレミー兄様はどうなるのか。
同じ家同士で婚約は問題ないだろうけど。
でも父様達も気になるし。
よーし!いっそ全てくっ付いてしまえ!!
俺は新たな楽しみに心を躍らせつつ、こちらに来る父様達に手を振った。
339
お気に入りに追加
1,141
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
勘違いの婚約破棄ってあるんだな・・・
相沢京
BL
男性しかいない異世界で、伯爵令息のロイドは婚約者がいながら真実の愛を見つける。そして間もなく婚約破棄を宣言するが・・・
「婚約破棄…ですか?というか、あなた誰ですか?」
「…は?」
ありがちな話ですが、興味があればよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる