転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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5 推しのお家へ

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「ギル殿。迎えの馬車が来ているんだ」

「はい。ご一緒させて頂きます」

放課後にフロル様に声を掛けられ、俺はウッキウキした気持ちを隠しながらフロル様と一緒の馬車に乗り込んだ。

いやはや、公爵家の馬車は凄いな。

椅子はフッカフカだし、大きい。

揺れないよう魔術も掛けられているし、こんな馬車ならジェレミー兄様の体にもさわらないな。

今度帰ったら早速作ってみよう。

浮かれてワクワクソワソワしながら座っていると、フロル様に心配される。

「こんなに立派な馬車に乗るのは初めてなので、緊張します」

正直に話すとフロル様は優しく微笑んでくれた。

「ふふふ。いつもクールなギル殿もそんな一面があるんだね」

こんな感じで推しと夢のような会話をしながら、公爵家の門をくぐる。

「そういえば、放課後に我が家に来ることは、ご家族にはこちらから連絡をさせて頂いたよ」

「わざわざ、ありがとうございます!」

「ふふ。父の恩師でもあったリネー伯爵だからね。失礼な真似はできないよ」

ご存じだったんだと感動する。

俺は元々フロル様とは最優秀クラスでご一緒な訳なのだが、推しはひっそりじっくり見ていたいタイプだし、基本的に一人行動が好きな人間である。

最優秀クラスは皆の輪に積極的に入らなくても責められたりはしないし、個人を尊重してくれるのでとても良いクラスだと思う。

そんな訳で、俺は裏で情報を仕入れまくってクラスの皆の情報は持っているのだが、俺はミステリアスな魔術の天才として通っている。

母方の祖父は国内でも優秀な魔術師であり、学園の教師でもあったヘロルト・リネー伯爵。

優秀な魔術と功績で伯爵の爵位を授かっており、領地はジャメル伯爵家のお隣。

そんな訳で、コリーヌ母とゼノン父は幼馴染からの結婚であったのだ。

コリーヌ母は祖父に似て大変優秀であり、そして容姿は祖母に似て美しく分け隔てなく優しく、大層モテたそうだ。

男女共に人気があったので、ゼノン父は随分嫉妬されたようだ。

しかしコリーヌ母がゾッコンであり、他の爵位の高い貴族からの婚約の申し入れがあった際は、断ることが出来ないのなら修道院に入りますと宣言したのだ。

祖父は両親の結婚後は領地をジャメル家へ譲り、学園の教師として暮らしやすい王都に屋敷を構えていた。

先の戦で一人娘を亡くしてからは、随分気落ちしていたのだが、俺が学園へ通う為に居候するようになってからは元気になっている。

現在は教師を引退しているのだが、可愛い孫には惜しみなく指導してくれるし、高齢ではあるが足腰の丈夫なダンディな紳士である。

そして俺が同じ黒髪黒目なので、随分可愛がってもらっている。

そんな事を考えていると、王都というのにとても広い庭が目に入る。

大変綺麗に剪定された草木と、美しい花々に感動する。

やはり田舎の伯爵家とは違い、洗練されている庭に感動しつつ、屋敷前に到着した馬車からフロル様に続いて降りて行く。

入り口には数人のメイドやら執事やらが並び、フロル様のお迎えをしていた。

「お帰りなさいませフロル様。ギル様も、ようこそいらっしゃいました。お荷物はこちらでお預かり致します」

さすが公爵家である。

俺の訪問は事前に知らされていたようで、皆が一斉に頭を下げる。

仕事の出来るザ・執事の出立のイケメン中年男性が、流れるようにフロル様から荷物を受け取り、後ろについていたメイドに手渡す。

「さ、旦那様とお兄様がお待ちです。こちらへどうぞ」

「ありがとうクラード。さ、ギル殿こちらへ」

「はい。お邪魔します」

そして他のメイドがにこやかに俺から荷物を受け取ると、クラードと呼ばれた執事は誘導するように歩き出す。

茶髪で美しく刈り上げられた襟足に、美しく撫でつけられた前髪。

きっちりと執事服に包まれているが、中々の肉体をしているのは見てわかる。

このクラードという執事は、多分というかきっと腕も立つんだろう。

先程荷物を受け取ってくれたメイドも、メイドらしからぬをしていた。

あれは剣術をしている手だ。

公爵家やらに務める執事やメイドは、下位貴族や良い商家の子供が多い。

育ちが良いので失礼の無いよう動けるし、嫁入り前の修行にもなるからだ。

しかし先程会っただけでも、数人は腕の良さそうな騎士上がりを感じさせる者が居た。

それだけ公爵家に使えるということは危険もあるだろうし、腕も必要なのだろうと考えつつ執事とフロル様に付いて長い廊下を歩く。

応接室であろう扉を執事がノックする。

「旦那様。セルジオ様。フロル様とギル様をお連れ致しました」

「ああ、入ってくれ」

中から、柔らかいが力強い声が聞こえる。

そして扉が開かれた。


_____






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