転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

文字の大きさ
上 下
3 / 227

1 推しの婚約者

しおりを挟む

「ヨハン…。そちらの令嬢との噂が大きくなっている。いい加減節度を守ってくれ」

学園の中庭で、フロル様は婚約者であるダイヤ公爵家のヨハンに苦言を呈していた。

ヨハンはこの国の三大公爵の一つ、ダイヤ公爵家の嫡男である。

無造作な茶髪と緑の瞳を持つ、チャラチャラした見た目のまぁまぁのイケメンではある。

しかしまぁ良い所の坊ちゃんが少し不良ぶってみました系の、いわゆるヒョロ貴族でもある。

俺はこのヨハンが気に入らなかった。

俺を馬鹿にしてきたこともだが、婚約者であるフロル様に対する態度の悪さは目に余るものがある。

今も、婚約者であるフロル様がいらっしゃるというのに、明らかに見た目の劣るケバケバしい令嬢をそばに置いている。

「いい加減にしろフロル!!貴様とはなんだ!俺が誰を愛でようが俺の自由だ!」

「怖いですわぁヨハン様ぁ」

ヨハンにしだれ掛かるようにくっつく令嬢は、帝国から留学してきたのリリー・フラネスだ。

帝国のフラネス子爵家の令嬢で、ふわふわ茶髪でクリクリな茶色い瞳が男子生徒に大人気!気取りが痛い令嬢である。

去年こちらに留学に来たのだが、男好きのようで色んな男子生徒と浮世を流している。

見た目は中の上にもならず、スタイルも特別良い訳でもない。

しかし男好きしそうな仕草や話し方、甘え方を熟知しているようで、ついつい鼻の下を伸ばす馬鹿な貴族が多いようだ。

「大丈夫さリリー。俺が守る」

「ヨハン様ぁ」

婚約者がいる、しかも貴族の令息が他の女子生徒にうつつを抜かすなど、どういった弊害があるのかも理解できないヨハンに頭痛がする。

数ある中庭の中でも小さい中庭だが、人目は十分にある。

先程から呆れたような視線を投げている感覚がまともな生徒や、面白いものを見るような顔をしている生徒達の視線に、被害者であるフロル様が晒されているなど腹立たしい。

フロル様の友人達も心配そうにハラハラしており、ここは一肌脱ぎましょうかと前に出る。

まぁ、一肌脱ぐどころかヨハン達の息の根を止めるつもりなんですけどね。

「おやおや。卒業前というのに、いつまで学生気分でいるつもりなんでしょうねぇ」

ワザとらしく馬鹿にしたように話しながら、フロル様を庇うように前に立ち、ヨハンを睨みつける。

「ギル殿…」

少しホッとしたようなフロル様の声に感動しつつ、それを顔には出さずに大丈夫ですよと頷いて見せる。

「なんだ。ではないか。何のつもりだ」

俺を見て小馬鹿な態度を取るが、ヒョロ貴族には魔力も武力も負ける気はしないので、フンと鼻を鳴らしてやる。

「あなたは良く私を田舎者と言いますが、すぐはそちらの女性の故郷の帝国だって理解できてます?」

小馬鹿どころか心底馬鹿にしたように言うと、ヨハンは苛立った顔になる。

三大公爵家の嫡男ともあろう男が、感情を顔に出しすぎじゃない?と心底呆れつつ、ヨハンの隣でシナをつくっているリリーに視線を向ける。

「確か令嬢は帝国からというテイでいらしているのですよね?」

「何が言いたいのかしらぁ。ヨハン様ぁ」

「貴様、さっきから何のつもりだ!」

遂に声を荒げ始めたヨハンに、両肩をすくめて見せる。

相変わらず気の短い男だ。

きっと色んな所も短いんだろうなこの腐れち○こ野郎は。

そんな事を考えていることはお首にも出さず、俺は目の前の腐れ外道どもを地獄に送るための演説を始める。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

処理中です...