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動きだす運命の歯車
76.可愛い双子
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『サクラ先輩、アカツキ先輩。一年間よろしくお願いします』
「こちらこそよろしく。何かあったら遠慮なく私達を頼ってね」
新入生の双子は、愛らしく鈴の音の声をハモらせお辞儀をする。
初めてまともな先輩呼びに私は嬉しくてこれ以上もない笑顔を浮かべ、無駄に張り切り先輩風を吹かせた。サクラは頷きはするも、黙って二人を見ているだけ。
そんな姿をアイリスは満足そうに遠くで見守っているのは言うまでもない。
双子の名前はイルゼとナタリー。一卵性双生児。
二人とも銀髪ボブヘアに、大きなお目目は緑と黄色のオッドアイ。一卵性で顔は瓜二つだけれど、左右逆だから簡単に見分けがつく。
何より私より小さくてとにかく可愛い。今日からきっとこの子達が初等部のアイドル。私は喜んで譲って引退する。
紹介された瞬間聞き覚えがある名前だったけれど、思い出せない。
「はい。今日から寮生活がとっても楽しみです」
「不安はないの?」
「イルゼと同室だから大丈夫。アカツキ先輩は不安だった?」
「私もお兄ちゃんと同室だったからね。それにサクラお姉ちゃんも一緒だから平気だったよ」
はじける笑顔で寮生活を楽しみにしている二人。四年前の私を見ているようだった。
私も二人のように寮生活……お兄ちゃんとの暮らしに夢を膨らましていたよね?
本当に今でも夢のような生活で、これが後一年で終わると思うと残念で泣けてくる。
「アカツキ先輩は四歳で入学したんだよね?」
「私達より二つも小さいのにすごいな」
「そうかな? じゃぁ二人の部屋に案内するね」
二人におだてられるだけおだてられて、すっかり気分を良くした私は二人を連れ部屋がある五階へと進む。
「ここが二人の部屋だよ。歓迎会の前にささっと片づけちゃおう」
『は~い』
二人の部屋はワンルームに段ボールを数個。
私とお兄ちゃんと同じようにダブルベットで、二つの机は横並び。テーブルと一つの大きめなソファ。
いかにも双子の部屋って感じだ。
ちなみにサクラとのカリーナちゃんの部屋は、半分が半個室になっていてプライベートは守られていた。ほとんどの生徒の部屋がそうなっている。
「……アカツキちゃん、ちょっといいですか?」
「え、うん。二人とも先に片付け始めちゃってね」
神妙な面持ちのサクラは私の耳元で囁かれ、何かあるんだと思って双子にそう言い残し部屋を出た。
「アカツキちゃん、あの双子にはけして気を許さないで下さい」
「え、ひょっとして匂い? 双子からどんな匂いがしたの?」
双子の部屋から少し離れた踊り場でサクラは誰もいないことを確認してから、再び私の耳元でひそひそと警告。サクラの特殊能力を知っている私はすぐに見当が付き、眉を細め聞き返す。
「はい。双子の臭いは私がブラックドラゴンに囚われた時に嗅いだ臭いと似ているんです。おそらく直系尊属かと思います」
「…………」
あまりにもの爆弾回答を投下され、言葉を失い頭の中がフリーズしそうになる。サクラの言葉に嘘はないだろう。
あの双子もゴットドラゴンの関係者。
アイリスの情報網に引っ掛かっていない、サクラの言い方、からして最悪双子の保護者はコゴットドラゴンの役員クラスの可能性大。
私達が潜入する前日にボスと幹部が数人訪れていたらしい。
サクラがいなかったらまんまと騙され、メロメロになっていた。多分アイリスも一緒に。
ゴットドラゴンは私にも目を付けている?
天才少女だからお兄ちゃんと同じで勧誘目的?
それともイロハだってバレた?
「お嬢様、しっかりして下さい。双子とはこれ以上関わらなければ、きっとなんとかなりますよ」
「私達は双子のお世話係だから、関わらない選択はないと思うよ」
「あっ……」
私もこんな双子に関わりを持ちたくないけれど、お世話係になったのは運の尽き。
初めて出来た可愛い後輩登場にねじが吹っ飛んでしまい、疑うことを完全に忘れていました。ゴットドラゴンは初等部を都合の良い幹部候補育成の場と勘違いしてるから、ジョーくんみたいな子が何人も入学しているって言うのに。
(教師によって更生中?)
一生の不覚。
サクラもそれに気づき呆然と立ちつくす。
「二人とも浮かない表情をしてどうしたの?」
「あ。グットタイミング。ちょっと耳を貸して」
「うん、何?」
フレディ登場で話せば何かいい案を出してくれると思って、今以上に慎重になり双子について今までの経緯を耳打ちする。
「その双子って舞台オリキャラじゃないかな?」
思いもよらない出所にハッとする。
舞台NG派の私にとっては、舞台自体を忘れていた。
あ、だから名前に聞き覚えがあったんだ。
「……サクラ悪いけど、双子の所に戻ってくれる? 私のことは先生に呼ばれたって誤魔化しといて」
「はい、分かりました」
前世の話なのでサクラにはここで退場をしてもらう。以前なら駄々をこねられていたけれど、最近は素直に聞き入れてくれるようになった。
「最近のサクラ変わったね」
「フレディもそう思う? ようやく自我と言うものを持ち始めて見たいで嬉しいんだ。こう言うのが親の気持ちなんだね」
「だと思う。それじゃぁ続きは僕の部屋で話そう」
「そうだね」
サクラの背中を見守りながら微笑ましくそう話し合いながら、私達は双子の詳しい話をするべく三階にあるフレディの部屋に向かう。
「こちらこそよろしく。何かあったら遠慮なく私達を頼ってね」
新入生の双子は、愛らしく鈴の音の声をハモらせお辞儀をする。
初めてまともな先輩呼びに私は嬉しくてこれ以上もない笑顔を浮かべ、無駄に張り切り先輩風を吹かせた。サクラは頷きはするも、黙って二人を見ているだけ。
そんな姿をアイリスは満足そうに遠くで見守っているのは言うまでもない。
双子の名前はイルゼとナタリー。一卵性双生児。
二人とも銀髪ボブヘアに、大きなお目目は緑と黄色のオッドアイ。一卵性で顔は瓜二つだけれど、左右逆だから簡単に見分けがつく。
何より私より小さくてとにかく可愛い。今日からきっとこの子達が初等部のアイドル。私は喜んで譲って引退する。
紹介された瞬間聞き覚えがある名前だったけれど、思い出せない。
「はい。今日から寮生活がとっても楽しみです」
「不安はないの?」
「イルゼと同室だから大丈夫。アカツキ先輩は不安だった?」
「私もお兄ちゃんと同室だったからね。それにサクラお姉ちゃんも一緒だから平気だったよ」
はじける笑顔で寮生活を楽しみにしている二人。四年前の私を見ているようだった。
私も二人のように寮生活……お兄ちゃんとの暮らしに夢を膨らましていたよね?
本当に今でも夢のような生活で、これが後一年で終わると思うと残念で泣けてくる。
「アカツキ先輩は四歳で入学したんだよね?」
「私達より二つも小さいのにすごいな」
「そうかな? じゃぁ二人の部屋に案内するね」
二人におだてられるだけおだてられて、すっかり気分を良くした私は二人を連れ部屋がある五階へと進む。
「ここが二人の部屋だよ。歓迎会の前にささっと片づけちゃおう」
『は~い』
二人の部屋はワンルームに段ボールを数個。
私とお兄ちゃんと同じようにダブルベットで、二つの机は横並び。テーブルと一つの大きめなソファ。
いかにも双子の部屋って感じだ。
ちなみにサクラとのカリーナちゃんの部屋は、半分が半個室になっていてプライベートは守られていた。ほとんどの生徒の部屋がそうなっている。
「……アカツキちゃん、ちょっといいですか?」
「え、うん。二人とも先に片付け始めちゃってね」
神妙な面持ちのサクラは私の耳元で囁かれ、何かあるんだと思って双子にそう言い残し部屋を出た。
「アカツキちゃん、あの双子にはけして気を許さないで下さい」
「え、ひょっとして匂い? 双子からどんな匂いがしたの?」
双子の部屋から少し離れた踊り場でサクラは誰もいないことを確認してから、再び私の耳元でひそひそと警告。サクラの特殊能力を知っている私はすぐに見当が付き、眉を細め聞き返す。
「はい。双子の臭いは私がブラックドラゴンに囚われた時に嗅いだ臭いと似ているんです。おそらく直系尊属かと思います」
「…………」
あまりにもの爆弾回答を投下され、言葉を失い頭の中がフリーズしそうになる。サクラの言葉に嘘はないだろう。
あの双子もゴットドラゴンの関係者。
アイリスの情報網に引っ掛かっていない、サクラの言い方、からして最悪双子の保護者はコゴットドラゴンの役員クラスの可能性大。
私達が潜入する前日にボスと幹部が数人訪れていたらしい。
サクラがいなかったらまんまと騙され、メロメロになっていた。多分アイリスも一緒に。
ゴットドラゴンは私にも目を付けている?
天才少女だからお兄ちゃんと同じで勧誘目的?
それともイロハだってバレた?
「お嬢様、しっかりして下さい。双子とはこれ以上関わらなければ、きっとなんとかなりますよ」
「私達は双子のお世話係だから、関わらない選択はないと思うよ」
「あっ……」
私もこんな双子に関わりを持ちたくないけれど、お世話係になったのは運の尽き。
初めて出来た可愛い後輩登場にねじが吹っ飛んでしまい、疑うことを完全に忘れていました。ゴットドラゴンは初等部を都合の良い幹部候補育成の場と勘違いしてるから、ジョーくんみたいな子が何人も入学しているって言うのに。
(教師によって更生中?)
一生の不覚。
サクラもそれに気づき呆然と立ちつくす。
「二人とも浮かない表情をしてどうしたの?」
「あ。グットタイミング。ちょっと耳を貸して」
「うん、何?」
フレディ登場で話せば何かいい案を出してくれると思って、今以上に慎重になり双子について今までの経緯を耳打ちする。
「その双子って舞台オリキャラじゃないかな?」
思いもよらない出所にハッとする。
舞台NG派の私にとっては、舞台自体を忘れていた。
あ、だから名前に聞き覚えがあったんだ。
「……サクラ悪いけど、双子の所に戻ってくれる? 私のことは先生に呼ばれたって誤魔化しといて」
「はい、分かりました」
前世の話なのでサクラにはここで退場をしてもらう。以前なら駄々をこねられていたけれど、最近は素直に聞き入れてくれるようになった。
「最近のサクラ変わったね」
「フレディもそう思う? ようやく自我と言うものを持ち始めて見たいで嬉しいんだ。こう言うのが親の気持ちなんだね」
「だと思う。それじゃぁ続きは僕の部屋で話そう」
「そうだね」
サクラの背中を見守りながら微笑ましくそう話し合いながら、私達は双子の詳しい話をするべく三階にあるフレディの部屋に向かう。
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