転生先は乙女ゲームの非実在妹でした 〜最推しキャラがお兄ちゃんなので、渋々私はブラコン末期になりました〜

桜井吏南

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お兄ちゃんの幸せを守りたい

44.これから先のこと

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「それは勘弁だな。用件はこれだ。ロードなら楽勝だろう?」
「え? 再来年度から始まる魔法学園初等部? こんな情報どこからくすねてきたの?」

 事情が事情なだけあってあっさり引き下がり、用件がちゃんとあったようで冊子を渡される。
 少女の私が見たかっただけじゃなかったらしい。

 タイトルは声に出した通りで中味をざっと読んでみると、世界中の才能ある子供を選抜し、通常教育の他に魔法・剣技・武道も科目も重点的に受けさせる。
 今は教師を選抜していて、来年からは生徒を募集するらしい。
 選抜テストは普通学校三年程度の筆記試験、体力試験、能力試験、面接。
 来年度十一歳以下なら受験資格があり、定員は十名程度予定の全寮制五年教育。
 卒業後はエスカレーターで魔法学園に入学する未来の官僚を教育する計画。
 
 確かゲーム内でもその制度はあって、タスクは元教師で守護者にも天才少年のテンペストくんがいたな? 
 主人公より二つ下だったから、私の二つ上になるのか。
 エリートツンデレで構うと楽しい最年少の攻略キャラ。

「アイリスに教師のオファーがあるらしく、ロードが入学するなら引き受けるそうだ。オレもここの教師になる」
「アイリスらしいね。でも受けたって合格するかは分かりませんよ?」
「ロードが落ちたら受かる奴らはいないと思うぜ?」

 いかにもアイリスらしい理由にクスッと笑いつつ確定となってる話に突っ込みを入れるも、あざ笑われて相手にされなかった。

「魔法は独学でそこそこ使えますけれど、勉強と言う勉強はしたことがないんですよね」
「言われてみればそうだな? だったらこれから頑張ればなんとかなるだろう」

 その辺はさすがに理解してくれるけど、気合い任せの応援にため息をつく。

 いくら前世の知識があったとしても、世界が違うので常識がすべて同じだとは限らない。
 しかも試験となると解き方が分からないと答えられないし、文字だって読み書きは基礎程度だから長文問題になると自信がない。
 それなりに勉強をしておかないと無理だと思う。

「なんとかなりません。どっかで教材を調達す…アイリスに頼むか」
「オレはロードの下僕なんだからタメ語で良いぜ?」
「そう? そう言えばアイザックはアイリスと仲良くなったの?」
「仲良くではないがどうらやら気が合うらしい。特にロードのことにはな」
「……」

 ゲームではない意外な組み合わせに好奇心が擽り期待の眼差しを向けるけれど、彼は至って真面目にドン引き理由を答えてきて言葉を失い落胆する。

 アイリスに私のことを語らせたら変態でしかないのに、それについてこれると言うことはやっぱりアイザックもロリコン変態野郎。
 そうだよね?
 いくら性格と力を見込まれたとしても、3歳児に無償で支えると言う時点でおかしいよね?


「ロード?」
「もう認めなさい。あんたも立派なロリコン。警察には気をつけて」
「くどい。オレはロードにしか興味ない」
「だからそう言うのが問題発言なの。それに私には好きな人がいるんだから、どうやってもあなたに勝ち目はないわ」

 何を言っても頑なに認めてくれないどころか本気で危ない答えに、全肯定と何をやっても可能性ゼロだと言うことをきつく告げる。

 確かに私が可愛い女の子だから好んでいるのはないってのは分かるけれど、幼女でも動じないってことは少なくてもその毛があるってこと。
 アイリスと親しくしてたら、いつ目覚めるか分からない。
 そうなったらもう手遅れ。

 ……すでに手遅れかもだけど。

「ロードの好きな人? 随分とマセ……まさか兄貴とか言うんじゃねぇだろうな」
「そうよ。私はお兄ちゃんが大好き。大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになるんだもん」

 眉間にシワを寄せ少し考え思い浮かんだのか呆気に取られた口調で言い当てられるけれど、そこは開き直り迷いなく宣言するとアイザックはなぜかホッとし安堵する。
 恐らく何も理解してくれてない。

「ロードもやっぱ歳相応な可愛らしい部分があったんだな。それは後三年もすれば消えてなくなる感情だ」
「なくならない」
「いいやなくなる。ロードに恋愛を教えるのは早くても十年は先だな。しょうがねぇ。その間は適当な女で我慢するか」

 予感的中どころなすっかり子供扱いをされそう言いながら髪をくしゃくしゃになぜられてしまう。
 後半の台詞はスルーに限る。

 普通は誰だってそう思うよね?
 小さい子供が親と結婚するって思うのは、ごくごく自然で微笑ましいこと。
 だけど私は違う。
 そんな薄っぺらい感情ではない。

「……私はタスクを愛してる。誰かなんと言ったってその気持ちは変わらない……」
「だからどうして君はアカツキちゃんを泣かすんだい? 別に恋愛は自由でしょ?」

 別にアイザックになんて理解しなくても別に問題ないのに悔しくて涙が溢れ手をギュッと握りしめると、どこからともなく怒り気味のアイリスが現れアイザックの耳たぶをつねり呆れた口調で叱ってくれる。

 その言葉に私は救われた。
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