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お兄ちゃんの幸せを守りたい
30.慎重に行こう
しおりを挟む「分かりました。イロハちゃんよろしく」
「え、あはい。よろしくお願いします」
滅茶苦茶意気込むお兄ちゃんには悪いけれど、私としてはバレる心配の方が強く不安でしかない。
かと言ってマイケルとペアを組んだら、それこそ十中八九バレると思うから願い下げ。
今まで以上に気をつけないと思いながら、お兄ちゃんに話を合わせる。
『アカツキ様、サクラさんの現在位置を送りますね』
「ありがとう」
ミサリーの声が聞こえると、サングラスのレンズにここの図面を写しだされた。
現在地がハート。サクラが監禁されている本棟の最上階が花で示している。
なんでサクラだけ別に隔離されているか不思議なんだけれど、ただ人質を置いときたいだけだから誰でも良かったとか?
それとも実はサクラには特殊能力があるから何がなんでも手に入れたい……私が知る八年後は裏切って殺されたんだからそれはないか。
じゃぁやっぱり特に意味はない?
「それではタスクさん私に着いてきて下さい」
「うん。じゃぁマイケルまた後で」
「気を付けろよ」
「イロハちゃん、何かあったらすぐに私を呼ぶんだよ」
推理は行き詰まり今は救出することだけを専念し行動開始。
アイリスの過剰な心配をスルーで、私達は階段を駆け足で登る。
ミサリーのおかげで敵の位置もバッチリ分かるから、戦闘は最小限で済みそう。
「イロハちゃんは、人質の女の子がどこにいるのか知ってるの?」
「はい。ついでに敵の位置も分かるので安全に行きたいと思います」
「すごいね? 三人以外にも仲間がいるの?」
「リーダーの助手がもう一人。指示を出してくれます」
お兄ちゃんから質問攻めに答える。
ひょっとしたら疑われているのかも知れない。
てっきりお兄ちゃんの警戒心がなくなったから、……そもそも何を疑っているんだろうか?
敵の仲間?
なぜ?
「マイケルさんの妹は本当に捕まっているんでしょうか?」
「え、捕まってるよ。カリーナちゃんには不思あっ?」
疑ってるはずなのに馬鹿正直に答えるけれど、不味いと気づいたのか慌てて口を塞ぐ。
いかにお兄ちゃんらしく、本当は疑っていないことを知る。
『夢幻なる願い3』だと、カリーナは占いが得意と言う設定だった。それを不思議な力だと言えばそうなんだろう。
「だからここの人は狙っているんですね? でもそう言うことは黙っていた方が賢明です」
「やっぱりそうだよね? でもイロハちゃんは信用できる人だと思う」
「え?」
「マイケルは疑えって言うけれど、僕は信じたい。だってイロハちゃんは妹と似ているから」
「…………」
冷静に忠告したのに今度は真逆のことを言う。しかもその理由が返答しづらく言葉をなくす。
やっぱりマイケルは私達のことを疑っているから、妹が誘拐されたと嘘をついた。
年齢もごまかしたのも今後のためだとは思いつつ、ならなんで名前を偽名にしなかったんだろうか?
それよりもお兄ちゃんの頭の中が、ちょっと心配になってくる。
妹の私ってまだ三歳ですけれど、十代前半の女の子に似ているとか言いますか?
まだ妹がイロハちゃんになら、分からなくもないけれど。
「妹はすごく可愛くて、元気いっぱいで賢いんだよ」
「そうなんですか」
私のことになるとすごく幸せな笑顔を浮かべ語り始める。私は恥ずかしくなるも、お兄ちゃんの笑顔に見とれてしまう。
まぁお兄ちゃんだから仕方がないか。
『アカツキ様、サクラさんはこの棟の最上階にいます。安全なルートはダクトになりますが、いかがなさいますか?』
「一度はやってみたい侵入方法ではあるけれど、現実問題待ち伏せされたら一貫の終わりなんだよね?」
『アカツキ様はずいぶん慎重なのですね? 確かにここにも厳重警戒するよう連絡がありました。博士のダミー映像と音声で対応しております』
出来るだけ小声でミサリーとこれから作戦会議をする。落ち着いている声の割りには、結構大変な状況だった。これ以上は頼らないでお兄ちゃんと二人で決めた方がいいと思いつつ、しゃべり続けて正体がバレるのが怖くて、実は今の所最低限の話しかしてなかったり。
と言ってもたまに妹の私の話を暴走し、私は相づちを交わすだけでもすんでいる。
今夜はお兄ちゃんに、う~んと甘えちゃおう。
「分かった。ここからはタスクさんとなんとかしてみる」
『そうですか? 何かあったらすぐに連絡します。それと博士達の方は順調に進んでいるので安心して下さい』
「うん」
最後にアイリス達の状況を知らされ通信は途切れた。
言葉からして私達の事は常に映像を出して見ているはず。
もちろんアイリス達の動きも映像が流れているのだから、ミサリーが順調で安心してと言えばそれは今現在進行形。
心配する必要はないだろう。
「タスクさん。これからこの階段を掛け上がり戦闘するか、ダクトから安全に行きますか? 但し出口で待ち伏せされてる可能性もあります」
「間違えなく階段からの方が安全だよ」
究極だろうと思う問いに迷いなく答えられ、作戦会議は呆気なく終了。
私もダクトは辞めた方がいいと思ってたからいいけれど、ここまで即答で決められると理由が気になってくる。
しかしこれからはそんな余裕がなくなり、今以上に気を引き締めて向かわないといけない。
「タスクさん、これからは私語禁止で気を引き締めて下さい。敵の人数や場所は分かりますが、戦闘は避けられません」
「分かってるよ。早く終わらせて無事に帰らないと妹が泣くからね」
「確かにそれは言えますね。私も家族が心配します」
お兄ちゃんのことだから本気にそれだけしか思ってないだろう台詞。私は少し笑いそうになりながらもそう言葉を返す。
私が死んだり大ケガなんかしたら、お兄ちゃんだけでなく両親も大騒ぎする。もちろんアイリスも。
「タスクさん、しゃがんで私の横に着て下さい」
「え、うん?」
最後の和やかムードは突然の敵反応のより中断。ステッキを大きくさせ身構え神経を集中させる。
お兄ちゃんは訳もわからないながらも、私の言うとおりにしゃがみ隣に移動してくれた。
上の階から突然三つの赤い光が点滅。ここの階段を降りてきて回避は出来そうにもない。とてつもない嫌な殺気が近づいて来て、体が危険を警告する。
これが噂の幹部クラスの殺気って奴?
「イロハちゃん、ひょっとして?」
「かもしれません。戦闘の準備をして下さい 」
お兄ちゃんにも感じたのか口調も顔つきも変わり、さっきの私達を警戒するタスクとなる。
余計緊張が走り、ここは卑怯な手段先手必勝を取ることに。
足音が徐々に近づきもう少しで姿を見せる瞬間、
「火炎球」
バーン
威力を最大限に上げ呪文をぶっぱなす。
さっきのとは比べ物にならないぐらいの威力で爆発するもんだから、言うまでもなく階段は火の海となり行く手を阻まれ先にいけなくなる?
やり過ぎた。
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