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お兄ちゃんの幸せを守りたい
14.想像以上のロリコン博士?
しおりを挟む「はい、フレディ」
「ありがとう」
半分にしたドーナツをフレディに渡し仲良く食べる。
サクサクふあふあで蜂蜜たっぷりの昔ながらの優しい味。
想像以上の幸せいっぱいの味に満足しフレディを見る。
彼もまた顔が思いっきり歪んでいる辺り満足しているみたい。
とっておきのパン屋さんを見つけて得した気分。
「明日はみんなで来ようね?」
「それはいいね?」
そうなると当然誰かに教えなたくなって、早速明日みんなで行く事になった。
きっとお兄ちゃんも気に入ってくれるはず。
「……所でアイリスの家はあとどのぐらい?」
「この裏路地を曲がった所だよ」
賑やかだった商店街の景色が、いつの間にか人通りの少ない路地に変わっている。
なんとなく不安になり聞いてみると、更に薄暗い路地を指差し躊躇なく先へ進む。
朝だから明るいはずなのに薄暗い。普通であれば近寄りたくはない場所。
まぁアイリスらしいと言えば、アイリスらしいか。
「もう起きてるのかな?」
「さっき連絡したら、徹夜明けって言ってたよ。行くと言ったら、その時朝食を頼まれたんだ」
「なら安心だね? だったら私の事も話してたりする?」
「もちろん。ものすごく楽しみにしてるって」
「へぇ~……」
今さらその心配をするか? と突っ込まれそうな問いを、フレディは完璧までに段取りをしてくれていた。
ただアイリスの私に対する期待度が高過ぎるのが難点で、警戒を更に強化しなければならない。
出会い頭に飛び付かれバグされるのは仕方がないにしても、アイリスの場合そうじゃないんだろうな?
昨夜の心配事がプレイバックされる。
「だからそんなに心配しなくても大丈夫だよ。アイリスだって道徳ぐらいもってるだろうし、何かあればボクが助けるよ」
頼もしいはずの台詞なのに、なんだか頼りなく聞こえるのは気のせいだろうか?
そもそもアイリスにそう言う道徳がありましたっけぇ?
「期待しないで期待してるね」
「何それ? アイリス博士、フレディです」
曖昧な私の受け答えにフレディは軽く笑い、赤い屋根の家のチャイムを鳴らす。
パッと見普通と変わらない一軒家だったけれど、どこからともなくラジコンの飛行機に乗った愛らしいメイド服少女の小人が飛んでくる。
どこかで見たことあると思うのは、アイリスの小人族のメイドがいるから。
確かこの子はしっかり者のメイド長であるミサリー。
漫画とアニメ限定のキャラで、フレディとは性格が似ていて仲良しだったっけぇ?
「フレディ様、いらっしゃいませ。あなた様がアカツキ様ですね?」
「そうだよ」
「ではアカツキ様、これをどうぞ」
「え、何これ?」
礼儀正しく私達を出迎えられ、私にだけボタンが付いている小さい箱を渡される。
なんの機械だかまったく分からず、首をかしげ問う。
フレディも不思議そうにしている所を見ると、まったく予想が付かないものらしい。
「アカツキ様は博士の好みど真ん中なので、身の危険を感じましたら押して下さい。十万ボルトの電撃が博士を襲います」
『………』
顔色一つ変えず、恐ろしい台詞をさらりと言うミサリー。
私のために言ってくれてるとは言え、この子ご主人様でも容赦ないんだな。
ありがたいような、ありがたくないような。
「アカツキ様、この服に着替えて下さい」
「はい?」
フリフリぶりぶりの桜色のワンピースをミサリーは指差し指示される。
私好みの服ではあるけれど、違和感ありまくりだ。
フレディは朝食を作るためキッチンに行ってしまい、残された私は別室へと案内された。
てっきり客間がリビングに通されると思いきや、入ってみると驚きのドレッサールーム。
「一人では着替えられませんか?」
戸惑い危機感を感じる私を勘違いするミサリー。そう思われても仕方がない。
一人で着替えられない三歳児なんてざらにいる。
「それは大丈夫だけど、どうして着替えるの?」
「博士の趣味です」
恥じることなく疚しい回答を即答。
「でもそしたらますます私が危険になるだけなんじゃ?」
「言われてみれば確かに」
「言われなくても気づいてよ」
ごもっともすぎる私の突っ込みに今気づいたのかハッとした表情を見せるから、更に突っ込みおでこに軽く凸ピン。すると目が潤ませ私を見つめる。
無表情だと思っていたら、意外に表情豊からしい。
「すみません。ではそのままで結構です」
─え~、それアカツキに似合うのにもったいない。お兄ちゃんに見せたら絶対に可愛いって言ってくれるよ。
「え、そう? ならちょっとだけ着てみようかな?」
ご主人様命令は絶対ではないらしく、すぐに諦めてくれめでたしめでたしになる。
なのに頬をぷっくり膨らませた東雲が飛び出し、何を思ったのか惜しみ無く私の弱点を突く。
それを言われると正しい判断が出来なくなり、罠であるワンピースを手に取ってしまった。
東雲の言う通りこんな可愛い服を着てカチューシャをしたら、お兄ちゃんはますます私の虜となってスキンシップは最上級。
私もお兄ちゃんもハッピーだ。
「アカツキ様?」
「写真だけなら別にいいか。うん、アイリスにも写真を見せよう」
「いいのですか? 写真だけだとしても、博士に何されるか分かりませんよ」
完全に誘惑に負けてしまい都合のいい条件を出すと、言い出した本人はキューブレーキを掛ける。
それをあなたが言いますか?
「ミサリー、君それでも私のメイドなの?」
「もちろんです。だからこそ最悪事態は未然に防いでいるのです」
「相変わらずミサリーはきついな」
私達の会話を聞いていたのかアイリスは登場するなりミサリーと口論開始。
二人とも余裕がまだありそうな感じでまったく退く気なし。
張りつめた空気が痛い。
しかしアイリスは十年前も変わらず、外見はかっこいいな。
スラッとしていてスレンダー。顔のパーツはすべてがはっきりしているし、何よりも紫髪のポニーテールが良く似合う。
タレ耳と八重歯と長くて立派なしっぽがチャームポイント。
今もよほど興奮しているのかしっぽが激しく揺れしていて、そこは可愛らしくて見とれてしまう。
「当然です。所でどうして博士がここに来たのですか?」
「ちょっとアカツキちゃんに聞きたいことがあって出てきたんだよ?」
「え、私? って言うかひょっとして盗聴してた?」
「さすがアカツキちゃん。君はフレディくんと同じで前世の記憶を持ってるんだね?」
これも恥ずべきことなのにアイリスはまったく悪気を見せないどころか、私の秘密をあっさり見抜かれ問われる。
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