転生先は乙女ゲームの非実在妹でした 〜最推しキャラがお兄ちゃんなので、渋々私はブラコン末期になりました〜

桜井吏南

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お兄ちゃんの幸せを守りたい

13.フレディとお出かけ

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「アカツキちゃん、ごめんなさい。急遽お友達と先生のお見舞いに行くことになりました。この埋め合わせは後日絶対にしますから」
「うん、分かった」

 お兄ちゃん達は今日もお昼過ぎまで課題をするため、遊び相手になってくれるカリーナ待っていると、何やらおもい詰めた様子でやって来たかと思えば必死になってそう謝罪される。
 しかし私にして見れば都合が良くカリーナには友人を大切にして欲しいから、元気良く頷きみんなで玄関までお見送りした。

 これで私はお昼まで自由の身。
 フレディと外出すれば、何も言われない。
 ……多分。

「フレディ、早速アイリスの家につれてって」
「え、もう? さすがにまだ早いよ」

 善は急げと言うことばがあるように張り切ってそうせがむけれど、フレディは少々困りながらキューブレーキをかけてくる。
 置時計を見るとまだ八時にもなっていなくて、ごもっと過ぎる答えだった。
 私の感覚だと十時前だったんだけれど、そう言えば起きたのが五時頃だったような?

「なら先に銃についてレクチャーしてくれる? サバゲーなら何回かした事があるんだよね」
「それなら基礎は大丈夫だね? ここでは実弾と魔力弾と言うものがあって、君なら魔力弾が良いんだと思う。だから魔力弾用マガジン」

 代わりにもう一つの約束を切り出し、自分の知識がどの程度かと伝える。すると説明は大分省略され、ポケットからマガジンを取り出し渡される。
 弾を確認しようとしても開ける場所がない。

「これどうやるの?」
「このボタンを押して魔力を充電すればいい。それでこのメーターで残数が分かる」
「分かった。やってみる」

 分かりやすい説明を受け、言われた通りボタンを押し魔力充電。


 バン

 爆発音と共にマガジンは木っ端微塵。
 軽く手に破片が刺さり少量の出血。

「大丈夫?」
「うん、こんなの唾をつけとけば、平気」
「アカツキ、どうしたんだ?」
「ゲッ、お兄ちゃん?ななんでもない」

 本当にたかが知れているから、心配してくれるフレディに苦笑しながらそう言って傷をなめる。
 なぜか離れにいるはずのお兄ちゃんが駆けつけるから、慌てて手を後に隠す。

 例えかすり傷でもお兄ちゃんはフレディに激怒して、私はお兄ちゃんの傍にいなければならない。
 激怒するお兄ちゃんを少しなら見てみたい気はするけれど、今日はいろいろ予定があるから絶対に隠す必要がある。

「本当に? それなら良いんだけど。フレディ、妹をよろしく頼むね?」
「はい。お任せ下さい。ではボク達はお昼まで外で遊んで参ります」
「そう? ありがとう。アカツキ、フレディの言うことを良く聞くんだよ。いってらっしゃい」
「は~い。いってきます」

 少しは疑っているようだけど私の言葉を信じてくれ、今度は私達がお兄ちゃんに見送られ外出する。
 私もお兄ちゃんの小さな違和感を持ったけれど、隠し事をしている手前何も聞けずスルーするしかなかった。




「君はどうやら魔力供給が苦手らしいね?」
「そうなのかな?」

 フレディの問いに自覚のない私は首をかしげ答える。
 思い当たる節はまったくない。

「ひょっとして気づいていない? さっきのマガジン爆破が、魔力投入の加減ミスだって事」
「え、そうだったの?」
「うん。まぁボクが最初にちゃんと教えなかったのがいけなかったんだけれど、余程のことでは爆破しないはずだからね」

 しかしちゃんとした理由があって教えられ納得いくことが出来、そしてもう一度そう言うことがなかったかと考えなおす。

 私が魔法を使う時はバレないように真夜中ひっそり近所の裏山で練習をしていた。
 その時は至って普通に魔法を使って……そもそも普通ってなんだろか?
 そう言えば日常魔法はママのをよく見ていて参考にしているけれど、攻撃魔法は動画でしかないからモノホンって言うのを知らない。
 だからなのか私の攻撃魔法はちょっとだけ威力が強く、集中しないとコントロールが難しかった。
 でもそれは初心者だから当たり前だと思っていたけれど、実はそうでもない?
 考えてみると思い当たる節がちゃんとある。

「魔法って奥が深いんだね」
「そうだね。まずはアイリスにアカツキの適正検査をしてもらおうか?」
「うん。それより私達どこに向かっているの? おいしそうな匂いがあちらこちらからしてきたけれど」

 今後の課題点がいろいろ見つかりそれは少しずつ学んで行こうと思いながら、徐々に増えて行く人とおいしそうな匂いに目と鼻を向ける。
 行き交う人達はみんな幸せそうに何かを食べていて、朝食を食べてきたのにお腹の虫が小さく鳴る。
 それは消化中なだけかも知れないけれど、もうお腹が空いたのかも?

「ここは早朝から開店している商店街だよ。この島は観光地でもあるから、朝食も外食の人が多いんだ。そしてここがアイリスお気に入りのパン屋」

 そう言ってフレディは焼きたてパンの香ばしい匂いがする店の中に入ると、言葉通り様々なパンが並べられていてお客さんも結構いた。
 間違えなく私のお腹は空いていて、パン達が宝石のようにキラキラと輝きだす。

「食べたいのある?」
「クロワッサン」
「ここのクロワッサンは、外はサクサクで中はスポンジみたく柔らかい。噛むとバターがにじみ出てなんとも言えない絶妙なハーモニーを醸し出している。ボクも大好きなんだ。そしてアイリスはこの木の実たっぷりフランスパン。さまざまな木の実がここぞと言うばかりに入っているんだよ」
「それもおいしそう」

 食欲がさらに増す素晴らしい食レポにヨダレが出て来て今度はお腹の虫が大きくなってしまう。
 お客さんと店員さんはクスクス微笑ましそうに笑われ恥ずかしくて、会計中のフレディの背後にサッと隠れる。

 恥ずかしいよ。

「お嬢ちゃんのお名前は?」
「え、アカツキ」
「アカツキちゃんか。アカツキちゃんは可愛いから、このドーナツはおまけだよ」
「ありがとう」

 店員さんに話し掛けられとっさに答えると、普通なら危ない台詞だけど今の流れなら普通の台詞に私は笑顔でお礼をした。

 ドーナツは、プレーンで揚げ立て。


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