上 下
9 / 79
お兄ちゃんの幸せを守りたい

8.仮想の夫婦

しおりを挟む
 カリーナお姉ちゃんの言ってる意味が分からない。

 三歳児の特権を使いおままごとの設定は、優しい両親としっかり者の姉にやんちゃな弟と言うありがちなものになった。
 それでもカリーナは楽しそうで私も楽しんでやっていると、お兄ちゃんとマイケルがやって来て加わることになった。

「娘さんを僕に下さい」
「娘は私達の物ではないのであげられません」
「カリーナ、お前最高だよ」
「お嬢様意味が違いますよ。ご両親に大切に育てられた娘と結婚させて下さい。自分がこれからは守りますと言う意味です」

 お兄ちゃんは私の婚約者役となり両親の挨拶の場面でありがちな台詞を言うと、カリーナは真顔でナイスボケをしフレディはすかさずそれを分かりやすくフォロー。
 マイケルなんてお腹を抱え大笑い。
 私も可愛らしくて笑いそうになるけれど悪いので堪えながらカリーナを見ると、案の定ほほをぷっくり膨らませマイケルを睨む。

「お兄様、酷いですわ」
「ごめんごめん。まさかそんな可愛らしい反応するとは思わなかったからね? フレディもそう思うだろう?」
「はい。ボクは心優しいお嬢様らしい反応だと思います」
「え、……」

 絶対にそれを言われたら女性はイチコロであろう口説き文句を息を吐くかのようにマイケルは言い。素で援護射撃するフレディのコンボとくれば、カリーナの怒りはあっと言う間に収まり顔を真っ赤に染まらせ恥ずかしそうに下を向いてしまう。
 表情がコロコロ変わるカリーナはどれも愛らしくて見とれていたら、ある異変に気づき微笑ましくなる。

 ひょっとしなくてもうカリーナはフレディに小さな恋心を抱いていて、それをマイケルはもう気付いているのかも知れない。

「と言う訳なので娘さんを僕に下さい。僕が娘さんを守り大切にします」
「え、はい。よろしくおねがいします」
「アカツキ僕達はハネムーンに行こうか? どこがいい?」
「ハネムーン?」

 いきなりおままごとを再開されたと思えば、話はぶっ飛び過ぎる展開へ。目が点になり首をかしげ、お兄ちゃんの言葉を復唱してしまう。
 なのにお兄ちゃんの目はマジだから、きっと二人で遊びたいに違いない。

 それにしたって両親の挨拶の次がハネムーンって、普通は結婚式が先じゃないでしょうか?
 どうせなら結婚式からやりたいです。

「タスク、お前な……。だったら夕食の材料を買って来てくないかい? 今夜のメニューはカレーにするから食材を買ってきてよ」
「え、もうそんな時間? うん、わかった」
「ならハネムーンはお買い物だね? ねぇマイケルお兄ちゃんお菓子とジュースも買ってきていい?」
「アカツキちゃんはちゃっかりしてるな。もちろんいいよたくさん買ってきて」

 マイケルは呆れつつもそれをうまく利用し単純なお兄ちゃんをうまく誘導。私もその提案に乗り、買い物へ行くことになった。





「アカツキは何カレーが食べたい?」
「チーズチキンカレー」 
「ならそれにしよう」

 島最大のスーパーマーケットに訪れた。私はお決まりのショッピングカートに乗せられ、お兄ちゃんの問いに好きなカレーをリクエストすればすんなりと決まる。

 この世界は基本地球と同じ名前だけれど、いろんな国の呼び名が混じりあっていた。
 ファンタジーワールドなので違った食材もある。

「買い物探検隊出発。隊長、まずは何を買えば良いでしようか?」
「野菜売り場だから、ニンジン、オニオン、じゃが芋、パプリカ。後モロコシ(トウモロコシ)」
「大正解。アカツキは天才だな」

 ママがいつもやってくれる遊びをお兄ちゃんもやってくれるから、私はいつもより張り切り回答。ただ大袈裟すぎる程誉められ恥ずかしい思いをする。
 しかし三歳児だから問題はなく、周囲からは微笑まれるだけ。

 我が家の教育方針は、楽しく遊んで学ぼう。赤ちゃん時から買い物に行けば、なんでも名前を教えてくれた。
 今現在も数えきれないほどの絵本を読んでくれている。
 愛情も惜しみなく注いでくれるから、お兄ちゃんのような秀才が育つんだと思う。

「お兄ちゃん、カレー粉は買うの?」 
「それはあるらしいよ。アカツキとカリーナちゃん用の甘口に僕達の激辛を作るんだって。僕は普通で良いのに」

 マイケルは貴族の息子なのに料理が得意。
 辛い物マニア設定は、この時既に確定していたことを知る。
 そしてため息混じりで嫌がるお兄ちゃんは、この時から悩まされていたようだ。
 今のお兄ちゃんは見た目通りの甘党で、ゲームのクールなタスクも辛い物が苦手だった。
 私の前世では意外にいける口ではあったけれど、子供の体には無理なようで甘口しか受け付けない。
 さすがのマイケルも幼児に激辛を与えるほど、鬼ではなかったことにホッとする。

「甘口と激辛を混ぜたらいいよ」
「あ、それもそうだね? マイケルにバレないようにしないとね」

 取り敢えず簡単な解決策を伝授したものの、マイケルを出し抜くにはあまりにも幼稚な考えだったりする。
 でもお兄ちゃんは名案を思い付いた表情を浮かべているため、この場合は言わぬが花だろう。
 それにもし何かあったとしても私がなんとかして回避する。

「ならお菓子?」
「うん。お肉は最後だからね?」
「やった。私はポテトチップとビスケット」
「どうせなら全種類買っていこう」
「お菓子パーティーだね 」

 良い子に買い物に付き合えたらお菓子は一つと言うママとは違いマイケルからもいっぱい良いと言われているから、転生して初めてのお菓子大人買い宣言に目を輝かせる私。
 お兄ちゃんもどことなく嬉しそうに見えるのは、やっぱりお菓子が大好きだからなんだろうね。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

塩対応の公子様と二度と会わないつもりでした

奏多
恋愛
子爵令嬢リシーラは、チェンジリングに遭ったせいで、両親から嫌われていた。 そのため、隣国の侵略があった時に置き去りにされたのだが、妖精の友人達のおかげで生き延びることができた。 その時、一人の騎士を助けたリシーラ。 妖精界へ行くつもりで求婚に曖昧な返事をしていた後、名前を教えずに別れたのだが、後日開催されたアルシオン公爵子息の婚約者選びのお茶会で再会してしまう。 問題の公子がその騎士だったのだ。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

処理中です...