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3章 一難去ってまた一難 魔王の孫娘は不幸?

46.男性群は料理中

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【セイカ、おはよう。おうちに帰ってきたんだね】
「チョピ、起きてたんだね。うん、帰ってきたよ。私達はこれからレジストと言う国に行くことになったんだ」

 思っていた以上にヨハンさんからお母さんの話を聞けてルンルン気分で自室へと戻ると、待っていましたと言わんばかりのチョピが元気いっぱいに飛び込んでくる。私はそんなチョピをギュッと抱きしめ、これからどうするのかを簡単に話す。

【うん、わかった。所で美味しそうな匂いがしているけど、ご飯?】
「うん、そうだよ。お昼はラザニアだって」
【ラザニア? 何それ? 美味しいの?】

 チョピにしてみればこれからなんてあまり興味がなく、お腹が空いているらしく未知なるラザニアに心を奪われる。

「チーズたっぷりですごく美味しいんだ」
【チーズ、ボク大好き。早く行こう】

 説明になっていない説明でもチョピには満足のようで、目を完全に輝かせリビングへ行くことを急かされる。 

 言葉通りチョピはチーズが大好きになり、特にとろけるチーズに目がない。
 パパのことだからお礼も兼ねてチョピの分はチーズましましにしているんだろうな?
 なんか想像したらお腹空いて来ちゃった。

「そうだね。早く行って昼食にしよう」
【やった】

 本当は昼食前にやりたいことがあったけれど、腹が減っては戦が出来ないというようにやりたいことは後回しにしてリビングに急ぐ。




「え、太が料理している?」
「そうなのよ。いきなり今時の男は家事が出来ないとモテないとか言い出してね。なんでもこなせる龍ノ介さんとおじさんが格好良く見えたんじゃないの?」

 何か私も手伝おうとキッチンに視線を向けると、カウンターで太が賢明にジャガイモを潰していた。 こんな光景調理実習以外に見たことがないから驚きを隠せないでいると、読書中の陽が呆れながらこうなった経緯を教えられる。

 太らしいけれど、なんで今さら?
  ただ弟子入りしているから、そう言うとこも真似たいと思っただけ?

「だったらここは男性陣に任せておいた方がいいね」
【ならボクも手伝う。セイカ、セイカのパパにボクも手伝うって言ってくれる?】
「チョピが手伝い? パパ、チョピが手伝いたいって」

 流石にキッチンに四人もいたら邪魔でしかないと思い、そう言うことにして席に着こうとしたらなぜかチョピがやる気になっている。男性群という言葉に感銘を受けたようだ。

チョピが出来る手伝いがあるのかは分からないけれど、せっかくのやる気を無駄にはしたくない。
 パパなら何かいい手伝いを見つけてくれるはず。

「パパ、チョピが手伝いしたいって」
「分かった。チョピ、こっちにおいで」
「チュピ!!」

 やっぱりパパには何か秘策があるようで嫌がらずチョピを呼び、チョピは嬉しそうに耳をピクピクさせキッチンへ行く。なんだか幼い私を見ているようだった。

 私も幼い時手伝いがしたくって、手伝ってくれと言われたら嬉しくてぴょんぴょんしていったよね?
 初めの方は手伝いと言うより邪魔でしかなかったけれど、パパと龍くんがちゃんと教え続けてくれたから出来るようになった。

「星ちゃんがうらやましいな? おじさんは子供心を理解してくれるし、家事全般が得意で料理の腕はピカイチ。おまけに強くてカッコいい。理想の父親像だよ」
「自慢の父親だもん。でも陽のおじさんだってダンティーで優しいと思うけどな?」

 そんなやり取りを見ていたからなのか陽はパパをベタ褒めし羨ましがられるけれど、おじさんには良いイメージしかないからそう言葉を返す。

 太陽の父親は考古学者。おっとりしていて物知り。いつもニコニコしていて温かい人だと思う。
 ここだけの話父親と言うよりおじいちゃんに思えるのは、おじさんがおじいちゃんの大学の後輩だから。

「うん。うちのお父さんもすごく優しいよ。外見だって悪くない。だけどマイペース過ぎるし、鈍感で言わなきゃ分からない。 料理なんて無縁。ごはんですりゃ炊いたことがない昔の人なんだから」

 羨ましいと言うより、高望みのボヤキだった。
 ただ少し切なそうな表情になりため息をつく。

 陽も父親が大好きだから淋しいんだろうな?
 さっき私パパと会えなくなったら絶対に嫌だって言ったけれど、陽は大好きな家族と会えない状況が続いている。
 なのに泣きごとを言わずに、ここに残る選択をしてくれた。

「陽、ごめんね」
「え、何が?」
「家族と離れ離れにしちゃって」
「大丈夫。そりゃぁちょっとは淋しいけど、絶対に戻るつもりだから悲しくないよ。それにこっちには太と星ちゃんもいる。……龍ノ介さんだっているんだよ」

 まったく気にしないと言う感じでますます陽に惚れそうになるも、最後の台詞で出来れば忘れたい重要な話を思い出す。
 頬を赤く染め可愛らしい姿で、本当なら全力で応援したい。
 でも遊ばれて捨てられて傷つく親友の姿は見たくない。
 でもそれで陽に嫌われたら……嫌われても陽のためだから仕方がないよね。

「……陽。龍くんは辞めた方が良いよ」
「……そうだね。一度は諦めたくないと思ったけれど、やっぱり私のようなお子様には高嶺の花なんだよね?」
「え、龍くんは恋愛面ではゲスだよ。高嶺の花なんかじゃない」

 清水の舞台から飛び降りる気持ちで話を切り出せば、何かあったのかふさぎこみ私の意見を聞いてくれる。
 でも龍くんをまだ色眼鏡で見えていて、そこは反射的に激しい突っ込みを入れた。

 高嶺の花は陽だ。
 龍くんになんて勿体ない。

「星ちゃん、容赦ないね。龍ノ介さんって星ちゃんの初恋の人じゃないの?」
「え、あ、確かにそうかも? 最悪だ!!」

 今さらそれに気づきショックを受ける。

 そうだった。
 私の初恋は龍くんだった。

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