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2章 私が生まれた世界“トゥーラン”
33.美食と観光
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「これメチャクチャ美味しいね。なんか幸せ」
「うん。あまくてほっぺが落ちそう」
ちまたで流行だと言う新食感デザートと言う旗に吸い寄せられ買ってしまった見た目クレープ。一口食べた瞬間、私と陽はその味に絶賛した。
クレープの中にはたっぷりの生クリーム。ほどよい甘さであり、生クリームの中にはタピオカ……咬むとぷちっと弾け濃厚なチョコがジュワッと口の中に広がっていく。生クリームと絡み合うとこれまた絶品。たぶんクルミのような木の実もふんだんに入っていておいしさ爆発。
いくらでも食べられそうだけれど、本能のままに食べてたら、間違えなくデブるだろう。
【ボクにもちょうだい!!】
「もちろん。美味しいでしょう?」
「うん!! すごく美味しい」
せがむチョピに食べさせてあげると、目をキラキラ輝かせむしゃむしゃ食べる。
なんでも美味しいと言って、たくさん食べるチョピ。
そんなに美味しいんなら少しあげるんじゃなくって、一個ずつにすれば良かったかも? そしたら二種類の味を買って、半分こに出来る。
太陽みたいに。
「太、食べる?」
「おう。陽も肉サンド食べろよ」
思っている側から太陽はお互いの食べていた物を、一口を同時にかぶりつく。
二人ともたちまち同じ笑顔を見せるから、相変わらず仲が良いなとだけ思い微笑ましく眺めていただけなのに、太と目が合うとニヤリと笑い何か勘違いしたのか、
「お前も食うか?」
食べかけの香ばしい匂いがする肉サンドを私に差し出し、深く考えていない屈託のない笑顔で勧めてくる。その笑顔はあどけなく格好いいと言うより可愛い少年で、思わず見とれてしまう。
「い──いらない」
何も考えず頷き肉サンドを受け取りそうになるけれど、それがどう言う意味だが理解すると急に恥ずかしくなって断固拒否する。
肉サンドを食べたら、太と間接キス
ありえない。
「遠慮するなって。すげー美味しいぞ。酸味と辛みが絶妙に混ざり合った濃厚なソースの味付けが癖になる。なぁ陽?」
「そりゃぁ美味しいけれど、私と星ちゃんは違うんだから、よく考えて発言してよ」
「は、よく考える? ……陽はオレの大切な妹で、星歌はオレの大切な──友達。それがどうした?」
断った理由を分かってもらえず今度は食レポ付きで勧められ、駄目だと思った陽は救いの手を出してくれるも、なぜか分かってもらえずキョトンと首を傾げるだけ。
ここまで来るともうお手上げで、私と陽は顔を見合わせ諦めのため息を付く。
言わないと分からない鈍感──
確かに太は鈍感だ。
気にした私が馬鹿みたい。
「太さ、ちょっと耳貸しな?」
「え、はい?」
そんな私を微笑ましく見ていた龍くんが太を呼び耳打ちをすると、太の顔は見る見る赤く染まりその場に固まってしまった。
どうやら自覚をしたらしい。
そんな反応されると余計に恥ずかしい。
「そろそろ結界の塔に行こうか?」
「うん、そうだね? そうしよう」
陽が気を効かせてくれ、そう言うことになりました。
「これが結界の塔か。どのぐらいの高さがあるんだろうね」
「日本なら二十階建てビルぐらいだろう」
「ならタワーマンション並みか」
近くで見るととより一層結界の塔の高さと圧倒され、てっぺん見上げながら独り言のように呟くと、パパが分かりやす教えてくれとにかくすごいことを実感した。
この塔のおかげでブラッケンの平和が護られている。
魔の者が魔族だとは限らないとは思うけれど、きっとみんなは魔族だと思っているんだよね? そう思うと複雑だな。
「ここに結界の塔の説明が書いてあるよ。え~と、結界の塔は三六一年創立。現在は結界師α、 β、 γ、 δ、 εの五人衆が交代で結界を維持しています。龍ノ介さんのお知り合いですか?」
「いいや知らない。結界の塔の結界師は約五十年に一度四人から六人を選んでいるらしい。オレ達の頃は引退間近のじいさんとばあさん連中だった。ちなみに今年は一九八五年」
「そうなんですね。へぇ~つまりこの塔は千五百年以上前の建物。そう考えると、神々しいです」
歴史的建築物に興味がある陽はまず記念碑に書いてある説明を読み、加えて龍くんの追加説明を聞くなり、すっかり自分の世界に入ってしまう。
「だったらオレが軽くレクチャーしてやろうか?」
「はい、是非。お願いします」
龍くんの言葉に、陽は目を輝かせてお願いする。これは龍くんだからではなく、純粋からなる探究心。
こうなるととことん建築物を知りたいだろうから、しばらくそっとして置いた方が良い。
私は歴史的建造物に興味ないからふーんって感じで、それよりも結界師達の名前の方に興味津々だ。
α、 β、 γ、 δ、 ε
それはまさしくギリシャ文字のアルファベット順。地球での名前ならネタで付けているしか考えらないけれど、ここは異世界なんだから普通の名前と変わらないんだよね?
だから笑ったりしたら……。
「な、おっさん。ひょっとして“あいうえお”とか言う名前の人がいたりするのか?」
「え、あいうえお? そんな名前聞いたことないが」
「だったらABC」
「ワハハ……」
懸命に笑いを堪えようとしたのに太の素朴な問いのせいで堪えられなくなり、お腹を抱えて大声で笑ってしまった。
α、 β、 γ、 δ、 ε
あいうえおさん
ABCさん
何そのセンス?
面白い。
良く分からないけれど、私の笑いのツボに入り笑いが止まらない。
「星歌、どうした? 何がそんなにおかしいんだ?」
愛する娘が壊れてしまったとでも思ったのか、目を見開きオロオロしながら困った様子で私に問う。太とそれから周囲は呆気に取られ私に視線が集まり、恥ずかしいと思いながらも笑いをなかなか止められずにいると、周囲はまずます異様な空気が流れだす。
その後、正気に戻った私は恥ずかしくってパパと太の手を取り、ダッシュでその場から逃げたのは言うまでもない。
「うん。あまくてほっぺが落ちそう」
ちまたで流行だと言う新食感デザートと言う旗に吸い寄せられ買ってしまった見た目クレープ。一口食べた瞬間、私と陽はその味に絶賛した。
クレープの中にはたっぷりの生クリーム。ほどよい甘さであり、生クリームの中にはタピオカ……咬むとぷちっと弾け濃厚なチョコがジュワッと口の中に広がっていく。生クリームと絡み合うとこれまた絶品。たぶんクルミのような木の実もふんだんに入っていておいしさ爆発。
いくらでも食べられそうだけれど、本能のままに食べてたら、間違えなくデブるだろう。
【ボクにもちょうだい!!】
「もちろん。美味しいでしょう?」
「うん!! すごく美味しい」
せがむチョピに食べさせてあげると、目をキラキラ輝かせむしゃむしゃ食べる。
なんでも美味しいと言って、たくさん食べるチョピ。
そんなに美味しいんなら少しあげるんじゃなくって、一個ずつにすれば良かったかも? そしたら二種類の味を買って、半分こに出来る。
太陽みたいに。
「太、食べる?」
「おう。陽も肉サンド食べろよ」
思っている側から太陽はお互いの食べていた物を、一口を同時にかぶりつく。
二人ともたちまち同じ笑顔を見せるから、相変わらず仲が良いなとだけ思い微笑ましく眺めていただけなのに、太と目が合うとニヤリと笑い何か勘違いしたのか、
「お前も食うか?」
食べかけの香ばしい匂いがする肉サンドを私に差し出し、深く考えていない屈託のない笑顔で勧めてくる。その笑顔はあどけなく格好いいと言うより可愛い少年で、思わず見とれてしまう。
「い──いらない」
何も考えず頷き肉サンドを受け取りそうになるけれど、それがどう言う意味だが理解すると急に恥ずかしくなって断固拒否する。
肉サンドを食べたら、太と間接キス
ありえない。
「遠慮するなって。すげー美味しいぞ。酸味と辛みが絶妙に混ざり合った濃厚なソースの味付けが癖になる。なぁ陽?」
「そりゃぁ美味しいけれど、私と星ちゃんは違うんだから、よく考えて発言してよ」
「は、よく考える? ……陽はオレの大切な妹で、星歌はオレの大切な──友達。それがどうした?」
断った理由を分かってもらえず今度は食レポ付きで勧められ、駄目だと思った陽は救いの手を出してくれるも、なぜか分かってもらえずキョトンと首を傾げるだけ。
ここまで来るともうお手上げで、私と陽は顔を見合わせ諦めのため息を付く。
言わないと分からない鈍感──
確かに太は鈍感だ。
気にした私が馬鹿みたい。
「太さ、ちょっと耳貸しな?」
「え、はい?」
そんな私を微笑ましく見ていた龍くんが太を呼び耳打ちをすると、太の顔は見る見る赤く染まりその場に固まってしまった。
どうやら自覚をしたらしい。
そんな反応されると余計に恥ずかしい。
「そろそろ結界の塔に行こうか?」
「うん、そうだね? そうしよう」
陽が気を効かせてくれ、そう言うことになりました。
「これが結界の塔か。どのぐらいの高さがあるんだろうね」
「日本なら二十階建てビルぐらいだろう」
「ならタワーマンション並みか」
近くで見るととより一層結界の塔の高さと圧倒され、てっぺん見上げながら独り言のように呟くと、パパが分かりやす教えてくれとにかくすごいことを実感した。
この塔のおかげでブラッケンの平和が護られている。
魔の者が魔族だとは限らないとは思うけれど、きっとみんなは魔族だと思っているんだよね? そう思うと複雑だな。
「ここに結界の塔の説明が書いてあるよ。え~と、結界の塔は三六一年創立。現在は結界師α、 β、 γ、 δ、 εの五人衆が交代で結界を維持しています。龍ノ介さんのお知り合いですか?」
「いいや知らない。結界の塔の結界師は約五十年に一度四人から六人を選んでいるらしい。オレ達の頃は引退間近のじいさんとばあさん連中だった。ちなみに今年は一九八五年」
「そうなんですね。へぇ~つまりこの塔は千五百年以上前の建物。そう考えると、神々しいです」
歴史的建築物に興味がある陽はまず記念碑に書いてある説明を読み、加えて龍くんの追加説明を聞くなり、すっかり自分の世界に入ってしまう。
「だったらオレが軽くレクチャーしてやろうか?」
「はい、是非。お願いします」
龍くんの言葉に、陽は目を輝かせてお願いする。これは龍くんだからではなく、純粋からなる探究心。
こうなるととことん建築物を知りたいだろうから、しばらくそっとして置いた方が良い。
私は歴史的建造物に興味ないからふーんって感じで、それよりも結界師達の名前の方に興味津々だ。
α、 β、 γ、 δ、 ε
それはまさしくギリシャ文字のアルファベット順。地球での名前ならネタで付けているしか考えらないけれど、ここは異世界なんだから普通の名前と変わらないんだよね?
だから笑ったりしたら……。
「な、おっさん。ひょっとして“あいうえお”とか言う名前の人がいたりするのか?」
「え、あいうえお? そんな名前聞いたことないが」
「だったらABC」
「ワハハ……」
懸命に笑いを堪えようとしたのに太の素朴な問いのせいで堪えられなくなり、お腹を抱えて大声で笑ってしまった。
α、 β、 γ、 δ、 ε
あいうえおさん
ABCさん
何そのセンス?
面白い。
良く分からないけれど、私の笑いのツボに入り笑いが止まらない。
「星歌、どうした? 何がそんなにおかしいんだ?」
愛する娘が壊れてしまったとでも思ったのか、目を見開きオロオロしながら困った様子で私に問う。太とそれから周囲は呆気に取られ私に視線が集まり、恥ずかしいと思いながらも笑いをなかなか止められずにいると、周囲はまずます異様な空気が流れだす。
その後、正気に戻った私は恥ずかしくってパパと太の手を取り、ダッシュでその場から逃げたのは言うまでもない。
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