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「友太先輩、どうかしたんですか?」
「ん、気にするな」
「花音にまずは謝罪だろうが。このアホ!」

 ボコボコになってるのになぜか格好付ける友太先輩に、リーダーは激怒しどつく。
 何かなんだかさっぱり分からない中、友太先輩は花音の前で土下座。

「花音様、申し訳ありません。女魔王を倒した聖女が異世界から来た設定のデーター残したのは、オレなんです」
『はい?』

 頭を地面に擦り付かせる勢い謝罪。
 内容が内容なだけにはすぐに理解は出来ず、花音と声をハモらせ友太先輩を見下げながら首を傾げる。

「もし外伝を作った時に使えると思ってな。 だからつい」
「な、こいつバカだろう? んなら最初に言えば良いだろう?」

 土下座したのにお茶目に訳を話す友太先輩に、リーダーはもう一発なぐり呆れ果てていた。リーダーがあまりにも気の毒で、友太先輩の信頼が爆下がりだ。

 友太先輩は大馬鹿者だ。

「いかにも友太先輩らしいですね。でも今回はグッチョブです。突然のひとりぼっちは辛かったから」
「……花音」

 なのに花音だけは友太先輩の肩を持ち、後半は寂しげに笑いながらポツリと呟く。
 言われてもし花音が私だったらと考えるとゾッとする。

 親友の死だけじゃなく、職場のチーム全員が行方不明。トドメは彼氏が浮気男のゲス。
 家族と他に友人がいても、それでも絶望するかも知れない。

「花音がそれでいいなら、結果オーライにしとくか」
「花音、ありがとう。お前は本当に優しいな」
「あんまり調子にのらないで下さい。所でリーダの姿はコスですか?」

 友太先輩のやらかしが、花音のおかげで不問になった。そしてすごく気になっていたと思うリーダーの姿を、食い入るように何度も見回し問う。

 いきなりのコス発言はレイヤーならではなんだろうか?
 どことなく興味の眼差しに変わっていて、創作意力ましましって所?
 私には見るからにして本物に見え、この世界はファンタジーだなと思ったんだけれど

「んなはずないだろう? すべて天然。今のあたしは狐の獣人族だ」 

 と自慢げに言いながら、ご自慢のふさふさしっぽで花音の頬を触る。

「リーダー、モフモフしていいですか?」
「ああ。好きなだけしていいぞ。花音と朋子になら、セクハラ大歓迎だ」

 本物だと知った花音は興奮し、承諾を得た所でしっぽに顔をうずめる。匂いをおもいっきり嗅ぐ辺り変態に近いものがある。
 第三者が遭遇すれば、引く案件かも知れない。

「お手入れは完璧ですね。いつまでもモフモフできる」

 すっかりご満悦のようでなによりである。



「今後は私達が面倒を見るから、何も心配しなくてもいいぞ」
「もし向こうに戻りたかったら、早く役目を果たせるように全力でサポートする」
「それなんですが、フランダー教授が興味本位で呼び出しただけなんですよね」

 モフモフタイムが終われば頼もしい二人になるけれど、馬鹿馬鹿しい理由に言葉をなくした。信じられないという表情を向けられる。

 いや、私に向けられても困ります。

「サウザウドと聖女。こんな所にいたんだな。ユウタとクサナギ女史がなぜ?」

 そこへ運悪くフランダー教授の声が聞こえ、レオと共にこちらに駆け寄ってくる。リーダー達の存在には驚いているものの、二人はすぐさまフランダー教授を睨み付けた。

「お前って奴は、なんてことをしてくれたんだ?」
「──サウザウドから聞いたのか?」
「ああ、しかも彼女はオレの後輩なんだ。どうしてくれる?」
「うっ、それはすまない。叔父と連絡を取った上、彼女は身分を隠し魔法学園の特待生としてもらった。元の世界へと帰る方法はこれから捜すから、そんなに怒らないでくれ」

 自分のことは棚にあげフランダー教授を怒鳴り付けると、本当になんとかしてくれたようで反省の色が伺える。
 これ以上攻めたら、ダメな奴だ。

 フランダー教授が言う叔父とは学園長のことで、父親のように慕っている。そんな学園長は生徒思いの心優しい人。だからきっと花音のことも、温かく見守ってくれるはず。

「ちゃんと反省してるんだな。だったらもう何も言わない。エミリー、ヌク。花音と仲良くしてくれな」
「ええ、もちろんです。花音さん、よろしくお願いします」
「うん、任せてよ」

 友太先輩もそれ以上何も言わない方が良いと判断したのか、私とヌクに視線を変え花音のことをお願いされる。
 この世界では私と花音は今日が初対面だから、こう言ってくれるのはありがたい。
 これで私と花音が仲良くしてても、誰からも変に思われない。
 思わず胸を張り張りきってしまう私とヌク。

「私も出来るだけ協力しよう。私の名はレオ。エミリーの婚約者だ」
「ありがとうございます。私の名前は花音と言います」

 今まで黙っていたレオまでもが愛想良く花音に自己紹介をするんだけれど、これにはちょっと驚きながらも言葉を返す。

 婚約破棄されるまで嫌われているのに、なんで一緒にいるか疑問なんだろうね?

「学園まで送る」
「私は、まだ仕事が残ってるから三人をよろしく頼む。サウザウド、学園長室まで聖女と行ってくれないか?」
「はい、責任を持って行きますわ」

 仕事より聖女の方を優先するべきと突っ込むべきだけど、いたらいたで邪魔だからそこはスルー。

 やっぱりポンコツはポンコツか。

「すまない。私も早く終わらせて帰るが、叔父には大目玉だな」
「だろうな。逆を言えばそれだけですんでラッキーだと思え。聖女を私的で召喚したことが教団にバレたら大変だぞ」
「!!」

 フランダー教授にはさらなる追い討ちなんだろう。顔が真っ青になり、霊が抜けていく。
 大袈裟かと思うものの教団とは片寄った思考の集まりだから、重罪として扱われるかもしれない。
 ん?
 ってことは、聖女召喚の鍵である私も怒られるのでは?

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