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「サウザンドさん、こんにちは。君が一人なんて珍しいね?」
「ロッシュ先輩、こんにちは。ヌクは一時間ほどで戻ってきます。カイリとケイトは先約があるので今日は別行動です」
「そうなんだ。ヌクは珍しい使い魔だね?」
「え、そうなんですか?」
時間を潰そうと図書室に行く途中、ロッシュ先輩に出会う。
何気ない会話だったはずが、なんかヤバそうな空気になり身構えてしまう。
使い魔って、みんなヌクみたいなもんじゃないの?
そう言えばヌク以外の使い魔を見たことがないけれど、双子もクラスメイトも当たり前のように受け入れられたから特に何も思わなかった。
ヌクはイレギュラー? どの辺が?
「普通の使い魔は主に忠実で、感情は基本ないからね。それに普段は主の中にいる。だけどヌクは感情豊かで、主以外と交流がある。使い魔と言うより、信頼している相棒に見える」
「ええ、私とヌクは相棒ですわ。そう言うのは、ありえないのですか?」
「凄腕の術者ならありえるよ。だから珍しいんだ」
なんとか首の皮はまだ一枚繋がっているらしい。
どのくらい珍しいのかはまだ分からないだけに、これからは外ではヌクを連れ出さない方が良いのかも?
あ、だからエミリーは普段ヌクを表に出さなかったんだ。
「ヌクはペットとして誤魔化すのは可能ですか?」
「そうだね。しゃべらなければ、大丈夫だと思うよ。ヌクは犬に似ているから」
「それならこれからはそうします。教えていただきありがとうございます」
ありがたき助言に、頭を深々と下げ感謝する。
この世界でもペットと人間の言葉は異なる物。会話は本人同士のみ成立する。(多分……)
つまりヌクには犬語でしゃべってもら……もらえるだろうか?
「どういたしまして。それじゃぁまた月曜日の放課後にね」
「はい」
集まりは今の所毎週月・水となっている。これもまた何気ない挨拶で別れた。
……が、
どうやら方向が同じで、別れられなかった。頬を赤らめ笑い合う。
「どちらに行くのですか?」
「図書室です」
「僕もだよ。だったら一緒に行きますか?」
「ですね」
流れ的にそうなるのは必然的。
「エミリーちゃん、お待たせ」
「ヌク、おかえりなさい。その顔は思いっきり楽しめたみたいね」
「うん、すごく楽しめたよ」
飛びっきりの笑顔のヌクが一目散に帰ってきて抱き上げると、どす黒い殺気をただ酔わせた何かもこちらにやってきた。
こんなの感じたことがない。
「エミリー、そいつは誰だ?」
「え、レオ? 四年生のロッシュ先輩ですが、それが何か?」
「これはレオ様。初めまして」
それは逆鱗中のレオで、図書室なのにテーブルをバンと叩く。
瞬間司書さんに睨まれるけれど、相手が皇太子とその婚約者さっと視線をそらす。そして司書室へ引きこもってしまう。
他の生徒達も次々に図書室から退場。ロッシュ先輩だけがキョトンとして、愛想良く手を差し出す。
なかなかのチャレンジャーだ。
「エミリーと何をしてる?」
「何って勉強を見ていただけです。僕と彼女はとあるミッション仲間です。それでは僕はこれで退散します」
「教えていただきありがとうございます」
そして大人の余裕の態度を見せ私達の元から去っていく。
先輩って、こんな紳士キャラだったけぇ?
呆気に取られそうになるも、我に返りレオを睨む。
「一体どういうつもりですか?」
「は俺達は婚約してるんだ。それなのに他の男と浮気か?」
「は、なにをおっしゃいますの? レオだってシャーロットと浮気してますよね? しかも私とは、婚約破棄するつもりなんですよね?」
「婚約破棄はしない。俺は二人と結婚する。それなら問題ないだろう?」
何を血迷ったことをこいつは言っている?
ついこないだまで私のことを毛嫌いしていた癖に、今さら二人と結婚する? 両親に何か言われた?
「でしたら私もレオ以外の人とも結婚しても問題ないですよね」
あまりにも身勝手に言い分に頭が来て顔面パンチしたかったけれど、そこはグッとこらえて私も重婚することを宣言した。
相手が重婚しているのだから、私も重婚しても問題ない。
冷静になればああ言えばこう言う子供の喧嘩かも知れないけど。
「うっ……」
悔しそうに言葉を詰まらせ、何も言い返してこない。
勝った。
「レオくん素直にならないと駄目だよ。レオくんは昔の元気いっぱいで優しかったエミリーちゃんが大好きなんでしょ?」
「え?」
「こら、ヌク余計なことを言わないでくれ」
ありえないだろうヌクからの告白に、レオの顔は真っ赤に染まる。真実だと物語っていた。
つまりレオはありのままのエミリーが好き? そしてシャーロットも?
嬉しい気持ちになるけれど、どうしても腑に落ちなくて納得がいかない。
やっぱりシャーロットのことがネック?
「それシャーロットにも言いましたか? レオは知ってますよね? 私がシャーロットを今までいじめまくってたことを。そんな相手と同じ立場になるのはいやでしょ?」
自分で言ってて凹む。
でも実際問題これだし。すでに二人の関係は修復不可能。
「それを言われると確かにだ。だったら説得して見せる。本当のエミリーは活発で心優しい女性だから、今話し合えば仲良くなれると」
「…………」
えーとレオって単細胞のおバカさんだったけぇ?
自信を持って言いきるレオの頭が心配になり、頭を押さえて大きなため息を付く。
とてつもなくいやな予感がする。
シャーロットの嫌がらせを、再び受けないといけないんだろうか?
「所であのロッシュ先輩が言っていることはなんなんだ?」
「人と恋愛と言う禁忌を犯し最果ての地に幽閉されてると言うクード神を探しに行くんです」
「エミリーは、考古学に興味があったんだな。実は俺もなんだ」
「え?」
隠す必要もなく淡々と答えると、レオは目を輝かせ飛び付く。
レオは続編の攻略対象になってなかったから、考古学に興味があるとかないとか特に触れてなかった。愛蔵版で追加になったとしたら、その時考えるつもりだったからな。
初めて知って新鮮だ。
「ひょっとしてフランダー教授主催なのか?」
「そうよ。まさかレオも参加するって言い出すの?」
「ああ。エミリー、是非俺も混ぜてくれ」
「えあうん。なら月曜の放課後に……」
断る理由が見つからず、イヤイヤながらで頷いてしまう。
これでレオも着いてくる。
そしたら多分シャーロットも自動的に……。
この世界やっぱりバグり始めているよね?
「ロッシュ先輩、こんにちは。ヌクは一時間ほどで戻ってきます。カイリとケイトは先約があるので今日は別行動です」
「そうなんだ。ヌクは珍しい使い魔だね?」
「え、そうなんですか?」
時間を潰そうと図書室に行く途中、ロッシュ先輩に出会う。
何気ない会話だったはずが、なんかヤバそうな空気になり身構えてしまう。
使い魔って、みんなヌクみたいなもんじゃないの?
そう言えばヌク以外の使い魔を見たことがないけれど、双子もクラスメイトも当たり前のように受け入れられたから特に何も思わなかった。
ヌクはイレギュラー? どの辺が?
「普通の使い魔は主に忠実で、感情は基本ないからね。それに普段は主の中にいる。だけどヌクは感情豊かで、主以外と交流がある。使い魔と言うより、信頼している相棒に見える」
「ええ、私とヌクは相棒ですわ。そう言うのは、ありえないのですか?」
「凄腕の術者ならありえるよ。だから珍しいんだ」
なんとか首の皮はまだ一枚繋がっているらしい。
どのくらい珍しいのかはまだ分からないだけに、これからは外ではヌクを連れ出さない方が良いのかも?
あ、だからエミリーは普段ヌクを表に出さなかったんだ。
「ヌクはペットとして誤魔化すのは可能ですか?」
「そうだね。しゃべらなければ、大丈夫だと思うよ。ヌクは犬に似ているから」
「それならこれからはそうします。教えていただきありがとうございます」
ありがたき助言に、頭を深々と下げ感謝する。
この世界でもペットと人間の言葉は異なる物。会話は本人同士のみ成立する。(多分……)
つまりヌクには犬語でしゃべってもら……もらえるだろうか?
「どういたしまして。それじゃぁまた月曜日の放課後にね」
「はい」
集まりは今の所毎週月・水となっている。これもまた何気ない挨拶で別れた。
……が、
どうやら方向が同じで、別れられなかった。頬を赤らめ笑い合う。
「どちらに行くのですか?」
「図書室です」
「僕もだよ。だったら一緒に行きますか?」
「ですね」
流れ的にそうなるのは必然的。
「エミリーちゃん、お待たせ」
「ヌク、おかえりなさい。その顔は思いっきり楽しめたみたいね」
「うん、すごく楽しめたよ」
飛びっきりの笑顔のヌクが一目散に帰ってきて抱き上げると、どす黒い殺気をただ酔わせた何かもこちらにやってきた。
こんなの感じたことがない。
「エミリー、そいつは誰だ?」
「え、レオ? 四年生のロッシュ先輩ですが、それが何か?」
「これはレオ様。初めまして」
それは逆鱗中のレオで、図書室なのにテーブルをバンと叩く。
瞬間司書さんに睨まれるけれど、相手が皇太子とその婚約者さっと視線をそらす。そして司書室へ引きこもってしまう。
他の生徒達も次々に図書室から退場。ロッシュ先輩だけがキョトンとして、愛想良く手を差し出す。
なかなかのチャレンジャーだ。
「エミリーと何をしてる?」
「何って勉強を見ていただけです。僕と彼女はとあるミッション仲間です。それでは僕はこれで退散します」
「教えていただきありがとうございます」
そして大人の余裕の態度を見せ私達の元から去っていく。
先輩って、こんな紳士キャラだったけぇ?
呆気に取られそうになるも、我に返りレオを睨む。
「一体どういうつもりですか?」
「は俺達は婚約してるんだ。それなのに他の男と浮気か?」
「は、なにをおっしゃいますの? レオだってシャーロットと浮気してますよね? しかも私とは、婚約破棄するつもりなんですよね?」
「婚約破棄はしない。俺は二人と結婚する。それなら問題ないだろう?」
何を血迷ったことをこいつは言っている?
ついこないだまで私のことを毛嫌いしていた癖に、今さら二人と結婚する? 両親に何か言われた?
「でしたら私もレオ以外の人とも結婚しても問題ないですよね」
あまりにも身勝手に言い分に頭が来て顔面パンチしたかったけれど、そこはグッとこらえて私も重婚することを宣言した。
相手が重婚しているのだから、私も重婚しても問題ない。
冷静になればああ言えばこう言う子供の喧嘩かも知れないけど。
「うっ……」
悔しそうに言葉を詰まらせ、何も言い返してこない。
勝った。
「レオくん素直にならないと駄目だよ。レオくんは昔の元気いっぱいで優しかったエミリーちゃんが大好きなんでしょ?」
「え?」
「こら、ヌク余計なことを言わないでくれ」
ありえないだろうヌクからの告白に、レオの顔は真っ赤に染まる。真実だと物語っていた。
つまりレオはありのままのエミリーが好き? そしてシャーロットも?
嬉しい気持ちになるけれど、どうしても腑に落ちなくて納得がいかない。
やっぱりシャーロットのことがネック?
「それシャーロットにも言いましたか? レオは知ってますよね? 私がシャーロットを今までいじめまくってたことを。そんな相手と同じ立場になるのはいやでしょ?」
自分で言ってて凹む。
でも実際問題これだし。すでに二人の関係は修復不可能。
「それを言われると確かにだ。だったら説得して見せる。本当のエミリーは活発で心優しい女性だから、今話し合えば仲良くなれると」
「…………」
えーとレオって単細胞のおバカさんだったけぇ?
自信を持って言いきるレオの頭が心配になり、頭を押さえて大きなため息を付く。
とてつもなくいやな予感がする。
シャーロットの嫌がらせを、再び受けないといけないんだろうか?
「所であのロッシュ先輩が言っていることはなんなんだ?」
「人と恋愛と言う禁忌を犯し最果ての地に幽閉されてると言うクード神を探しに行くんです」
「エミリーは、考古学に興味があったんだな。実は俺もなんだ」
「え?」
隠す必要もなく淡々と答えると、レオは目を輝かせ飛び付く。
レオは続編の攻略対象になってなかったから、考古学に興味があるとかないとか特に触れてなかった。愛蔵版で追加になったとしたら、その時考えるつもりだったからな。
初めて知って新鮮だ。
「ひょっとしてフランダー教授主催なのか?」
「そうよ。まさかレオも参加するって言い出すの?」
「ああ。エミリー、是非俺も混ぜてくれ」
「えあうん。なら月曜の放課後に……」
断る理由が見つからず、イヤイヤながらで頷いてしまう。
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