上 下
26 / 56

26

しおりを挟む
「ケイト、カイリ。お誕生日おめでとう。はい。これ私からのプレゼント」
『ありがとうございます。一生大切にします』

 双子の誕生日。
 エミリーが常に用意していたプレゼントを持って、隣の双子の部屋に行き盛大にお祝い。
 すると双子は声をハモらせ、感激のあまり泣き出す。
 ヌク曰プレゼントは毎年用意するも渡せられず、この数年は実家のクローゼットに保管されてるらしい。

 実家に帰った時一気に渡したら、双子はどうなっちゃうんだろう?

「ボクもエミリーちゃんと一緒に選んだんだよ」
「そうなんですか? ますます大切にしないといけないね。部屋に飾っておく?」
「ヌクもありがとう。そうだね。使うのは難しそう」
「えーと、使っていただけると嬉しいのですが」

 家宝になりそうな勢いだったため、苦笑しながら辞めるよう促す。

 エミリーが選んだプレゼントは腕時計だから、飾っておかないでちゃんと普段使いして欲しい。
 そしたらエミリーが閉じこもっているクリスタルの溶けるスピードが、更に速まると思うんだ。

「使う? なんですか? ──腕時計」
「お嬢様、気づいてくれてたんですね? 先月私達がこの腕時計を眺めて話題にしてたことに」
「あうんそうよ」

包みをほどき腕時計を見るとやや興奮気味で、ご丁寧にきっかけとなる出来事を教えてくれる。

 だから腕時計なのか。腕時計にしたのはなんでかなと思ってたけれど、そう言う理由なら妙に納得。リサーチをちゃんとしてたんだね?

「そう言うことなら、使わないといけませんね」
「大切に大切に使います」

 って言い双子は嬉しそうに、同時に腕時計を身に付けてくれる。
 心の奥が暖かくなった。
 そしてまた去年の誕生日前日の記憶が蘇る。

 今年こそは素直になってお祝いをしようと意気込んでいたのに、前日お兄様がやって来てきつく釘刺してくるから、反射的に“渡すなんてありえない”っていつも通り豪語しまった。
 私にとってカイリとケイトはかけがえのない友人だと言いたいのに、なんで素直になれないんだろう。こんなことばかりしてたら、二人にもそのうち嫌われてしまう。
 来年こそは絶対に渡そう。

 そんなことを強く思ったんだよね?
 ──渡せて良かった。
 最近の私は朋子でもあるから、すごく素直でいられる。
 
「そう言ってもらえると嬉しいわ。カイリ、デート楽しんできてね? ケイト、私達はどうします」
「お嬢様すみません、私もこ婚約者とデートです」
「は?」

 ケイトの口から予想してなかった答えが返ってくる。

 婚約者って何?
 恋愛には無縁だと思っていたのに、そんなのいたの?
 ただまったく嬉しくない反応。

「両親が決めた人です。私一応スタンフィール家の跡継ぎなので」
「ケイト、本当に良かったの?」
「それはきちんと話し合ったでしょ? カイリには恋人がいて、私にはいない。それでいて相手は私好みなんだから、良かったの」
「そうだね。ケイトありがとう」

 すごい深刻で重い内容でスルーしたかったけれど、聞いてしまったから仕方がない。それが友人なのだから。

 でも私も家のためレオと婚約しているんだから、気の利いたアドバイスはできないかも?
 嫌だったら嫌われる行動をすれば婚約破棄されるなんて助言しても、もれなく勘当と言う地獄が付いてくるからね。
 相手を見つけてから、嫌われれば問題ない?

「ケイトは会ったことあるの?」
「はい。数回。実はお嬢様の護衛として付かれる人です」
「そうなの? いい人だといいわね?」
「これが彼の経歴です」

 私の護衛役なら良く知っている。
 渡された経歴書に目を通してみると、思った通りの人物だった。

 ビル・ブルガリア
 父様の騎士の三男坊。長男は兄様の騎士で、次男は放浪の旅に出ている。先祖代々のサウザウンド王家に仕える騎士家系。
 それでいてビルは、昔ながらの脳筋馬鹿で憎めない青年。年齢は十九歳。

 私のシナリオにはケイトと婚約している設定はない。ちなみにカイリとオーランドの恋人設定もなかった。
 乙女系なのに侍女達と攻略対象キャラが恋人関係だったら、ゲームとして成立しない。それとも略奪する新感覚の乙女系? 
 そんなの需要あるんだろうか? タワレバだけど。

「経歴を見る限り問題ないと思うわ。一度付き合って様子を見なさい。もしどうしようもない奴だったら、私が破談にさせます」
「そう言ってもらえると助かります。でも本当に彼は私のタイプなので、よほどのことがない限り大丈夫だと思います」

 そう言っている割には乗り気じゃなく、どこか浮かない表情を浮かべる。

 ?
 もしかしてすでに好きな人がいるとか?
 そう言えばそんな素振り見せてたっけぇ?
 あの時はいるんだろうなって終わったけれど、一体誰なんだろう?

「ケイトがそれでいいのなら、私は全力で応援するわ」

 カイリもいることもありここでは深くは追求せず、しばらく温かく見守って行くことにした。

 ビルは大雑把で鈍感なんだけれど、心優しい良い奴であることは私が保証する。ケイトのことを彼なりに大切にしてくれるはず。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

【完結】貴方たちはお呼びではありませんわ。攻略いたしません!

宇水涼麻
ファンタジー
アンナリセルはあわてんぼうで死にそうになった。その時、前世を思い出した。 前世でプレーしたゲームに酷似した世界であると感じたアンナリセルは自分自身と推しキャラを守るため、攻略対象者と距離を置くことを願う。 そんな彼女の願いは叶うのか? 毎日朝方更新予定です。

処理中です...